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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第一章 異世界で魔物生活
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14.コボルドの街コーボネルド

 漆黒のコボルドの名はゴーダンというらしい。

 ゴーダンに連れられた僕達はゴーブ村に近くまで来て、リザース、フィナ、ゴンはそこで解放された。



「師匠……どうかご無事で……」

「レン、今までありがとう……」

「村を救ってくれてありがとう……」



 そう言ってくれた三人を残し、コボルドの集団はコボルドの街へと向かった。

 コボルドの街はスライム村から西に行ったところにあるようで、コボルドの集団はスライム村の南にある草原地帯を通って西へと進んだ。

 草原地帯を越えると荒野地帯へと移り、進む先には大きな街影のようなものが見えた。



「もしかして、あれがコボルドの街……?」

「ああ、そうだ。あれが我らコボルドの街、コーボネルドだ」



 僕の問いにゴーダンがそう答える。


 近くで見るとコーボネルドの巨大さがよく分かる。

 見上げてもコーボネルドの最も高い所は見えないほどだ。

 周りを城壁に囲まれていて、街の中心に向かうほど標高が高くなる山のような構造をしている。



 僕にはコーボネルドの中腹にある建物の中の一室が割り当てられた。

 この部屋を拠点にしながら生活をしていくらしい。

 部屋の中は比較的質素で、ベッドと食糧保存ができる冷たい穴のようなものがある位だ。



「集団生活か……学校以来だな……」



 これからの集団生活のことを考えると少し気が重くなるが、別に後悔はしていない。

 これでリザース、フィナ、ゴンを助けることができたのだから。

 それに元の世界とは違って、今の僕にはバルグがいるし、寂しくはない。

 まあ、そのせいで一人になる時間が全くないという問題もあるが。



『そうだな、この俺が話し相手になってやるんだから、レンが寂しくなることはないさ!』

『そっか、それは心強いけど、一人になりたいときもあるんだよ?』

『この状態では俺はレンから離れようにも離れられないからな、それはもう諦めろよ』

『でも赤い宝玉はもう四つ集まっている。最後の一つが手に入れば……』

『ああ、多分俺は実体化してレンとは分離するだろうな……』



 バルグから寂しそうな気持ちが伝わってくる。

 一緒にいて楽しく思ってくれるのはいいけど、でも一人の時間も欲しいしなぁ。

 まあこれからの話だし、まだ考えなくてもいいかな。

 


『それよりも、せっかくこんな大きな街に来たんだし、図書館には色んな本があるんじゃないか? もしかしたら、赤い宝玉について書かれている本があるかもしれないぞ?』

『そうだね、そうしようか!』



 こうして僕はコーボネルドの図書館を目指した。





 コーボネルドの街はとても広大で、どこに何があるのか全然分からなかった。

 だけど色んな人に聞くことで何とか図書館にたどり着けた。



『ふう。元いた世界でもこんなに人に道を尋ねることなんてなかったよ……』



 もう十回以上は聞いただろうか。

 でもそれ位聞かないとたどり着けないほど道は複雑で街は広大だったのだ。



『コーボネルドには初めて来たが、確かに広いな。多分俺の故郷のヴェルナーダの三分の一はあるだろうな』

『えっ、バルグの故郷ってここよりももっと広いっていうの!?』

『ああ、そうだな。俺は城の中にいたからそこから見たなんとなくの感じではあるがな』



 ここでも十分広いのにさらに三倍の広さの所に住んでいたと言われても想像できないなぁ。



 僕は図書館の中へと入った。

 図書館の中は元の世界と似たような形で、入り口に本の盗難を防止する機械、その近くには受付があるようだった。

 この世界、というか魔物が集まる場所に機械なんてあることに少し驚いた。


 図書館について聞くために受付の人に話しかける。



「すいません、ここの図書館を初めて利用するんですけど」

「初めてご利用される方ですね。では図書館カードをお作りいたします。お名前と住所を教えていただけますか?」

「名前はレンと言います。住所は……?」



 来たばかりの住所なんて分かるはずもなく、でも住所が分からないなんて変だよな……と途方に暮れていると、



「住所をお忘れですか? 住民手帳に載っていますよ」



 住民手帳……?

 確か部屋を割り当てられるときにゴーダンから渡されたものがそれだったような。

 僕はそれを取り出して中を見てみると……



「あ、書いてあります! 住所は……」



 こうしてなんとか図書館を利用できるようになった。

 図書館カードの作成を終えた僕は図書館を歩き回る。



『書籍を検索するパソコンがないと不便だよなぁ』

『ケンサク? パソコン? 何の事だ?』

『いや、こっちの話。気にしないで』



 こうしてなくなってみると、文明の利器って本当に素晴らしいものだったんだなと実感した。

 このコーボネルドではパソコンで本の場所を検索できないので、欲しい本があったら歩き回って直接探すしかなさそうなのだ。


 僕が探しているのは赤い宝玉についての資料だ。

 今まで赤い宝玉というのは中に封印されたバルグの恩恵が受けられるものとしか捉えていなかったが、本当にそういうものなのか疑問を持ったのである。


 魔術道具のジャンルはここか。

 この中にないかな?

 あった!

 これがそうかも!


 僕が取り出したのは、”赤い秘宝―――封じられた魔の力”というタイトルの本であった。

 結構古くて、紙は黄ばんでおり、乱暴に扱うとすぐに読めなくなってしまいそうなものだった。


 閲覧室に入り、腰かけてその本を読み始める。



 本によれば


 ・赤い宝玉は「紅蓮封印珠」という

 ・紅蓮封印珠は強力な魔物を中に封じこめた後に砕くことで魔物を封印するためのものである

 ・赤い宝玉を取り込むとその魔物の力を得られる場合がある


 ということだった。



 確かに本に書かれている紅蓮封印珠の効果は今まで僕が実感してきた赤い宝玉の効果と同じだな。

 本に書かれている紅蓮封印珠は僕が取り込んでいる赤い宝玉と同一のものと言って良さそうだ。


 でも気になることが主に二つある。


 一つ目は”しまはたい”という落書きについて。

 「島は鯛」とか意味わからないがこれはどうでもいいだろう。


 二つ目は”赤い宝玉が再び全て集まったとき”と書かれているページが破かれていてその先が読めないことだ。



『赤い宝玉が全て集まったときに何が起こるというんだ?』

『確かに先が気になるな、他に同じ本がないか探してみよう』



 それから同じ本がないか探したのだが、見つからない。



『受付の人に聞いてみようか、何か知っているかもしれない』

『ああ、そうしてみるといい』



 僕は本を持ったまま受付へと向かった。



「すいません、この図書館にこの本の予備はありませんか? 欠けちゃって読めない所があるんですけど?」

「ちょっと調べてみますね」



 受付の人がそう言うと、奥の部屋へと入って行ってしまった。

 しばらく待っていると、戻ってきた。



「お待たせいたしました。申し訳ないのですが、その本はその一冊しかないそうです。なので本の欠けている部分は諦めて頂く他にないと思います……」

「そうですか、分かりました……」



 そう言って僕は諦めて帰ろうとすると、



「レンさん、軍人さんですよね? 軍人さんでしたら、偉くなったら図書館の閲覧禁止室に入れるようになるんですけど、もしかしたらそこに欠けている部分があるかもしれませんよ。頑張って出世してくださいね!」



 いや、そこまで頑張ろうとは思わないんだけどね。

 学校で過ごしていたように何となく、何事も起こさずに過ごせればいいと思っているし。


 結局”赤い秘宝―――封じられた魔の力”の本を借りて、図書館を後にすることにした。

 そして自室へと戻る。



『今日はもう休もうかな、なんか明日から色々とあるみたいだし』

『ああ、そうするといい』



 バルグは思う所があるのか、いつもの元気のある声じゃなかったことが気になったが、とりあえず今日の所は休むことにした。




《あと三日……》


 不吉な声が頭の中に響き渡る。

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