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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第一章 異世界で魔物生活
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12.コボルドの集団

 スライム村を南下すると、東に向かったときに広がる湿地帯ではなく、比較的乾燥して過ごしやすい草原地帯が広がった。

 所々岩や木が存在するが、それ以外は視界に遮るものがなく、実に見晴らしが良い。



「ここってコボルドがよく狩りに使う場所なのよね……」

「えっ!? そんなの聞いてないよ!」

「でもレンってコボルドだし、群れからはぐれた訳だから、群れと遭遇しても大して問題じゃないでしょ? レンはそういった群れと会っていつかコボルドの街に戻るんでしょう?」


 そういえば、フィナには僕の素性について適当に誤魔化して伝えていたんだった……


 確かにバルグと出会った頃には生き残る為の選択肢としてコボルドの一員として生活するということも考えた。

 しかし、それは自分が一人で生き残れないと思ったからであり、バルグの力を得た今ならば一人でも大抵の敵には負けないし、コボルドの一員として生活しなくても生きていける。


 今は一人でゆっくりと過ごすという理想とは程遠い状況ではあるが、それなりに自由に行動できて満足している。

 今よりももっと自由を拘束される、種族の一員として縛られながら生きていくことは考えたくなかった。

 故に、コボルドと出会って同族の中で過ごさなければいけなくなる状況は避けたい。


 最初から説明すると時間がかかってしまうので、とにかく今はコボルドに見つかりたくないことをフィナに伝えた。



「そうなの。やっぱり訳アリってことね。分かったわ。この場所って隠れる場所がほとんどないから、基本的に私の隠密魔法をみんなにかけながら進むわよ」

「ありがとう、フィナ! 助かるよ!」

「その代わり、後でその訳を教えてね?」

「うん、分かったよ。」



 フィナは僕達の旅に貢献してくれているし、嘘を教えたままでいるのも申し訳ないので近いうちに本当のことを話しておこう。




 フィナに隠密魔法をかけてもらった僕達は草原を南下する。

 しばらくすると遠目に何やら集団っぽい影が見えた。



「あれが例のコボルドの集団よ。みんな、静かにしてね」



 そうフィナが言うと、僕達四人は念のため小さな岩陰に隠れて様子をうかがった。



「第三小隊は右に回って弓を放て! 第一小隊はその後に前に出て突撃! 第二小隊は後ろで待機し、逃げた獲物を追いかけて捕えよ!」



 するとその集団は三手に分かれて行動を始める。

 逃げる生物は一集団から放たれる矢によって動きを封じられ、その後に突撃してきた一集団によって八つ裂きにされ、辛うじて逃げることに成功したと思われたものに対しても追手が差し向けられ、絶命した。



 その圧倒的な組織的行動に目を奪われながらも、その姿をよく見ようとすると、そこには多くのコボルドがいた。

 その中でも一際存在感を放つのは中央にいる漆黒の毛で覆われたコボルドだ。

 何やら赤く禍々しいオーラを放っている。


 他に気になるのはその隣にいる純白な毛で覆われたコボルドだ。

 見ていると吸い込まれるような錯覚を感じる魅力の持ち主である。


 そして、コボルドにやられた生物は何か確認しようとしたら……



「嘘、だろ……?」



 思わずそう言葉が漏れた。


 だって無理もない、その生物はなんといったって、



「よくも……よくもぉ!!」



 ここにいるゴンと同じ種族、ゴブリンだったのだから。

 今にも立ち向かおうとするゴンをリザースがとっさに抑える。



「ん? あっちに何かいるのか? コフィー、見てこい」

「了解しました、マスター」



 その声が聞こえた後、こちらに向かってくる足音が聞こえる。

 僕は絶望を感じつつも、なんとか気づかれないようにじっとする。


 コフィーは岩の後ろまで来て周りを見渡す。

 そして僕とコフィーの目が合う。

 いや、向こうにはこちらの姿が見えていないはずなのでそんなはずはないのだが……

 まるでコフィーがこちらの姿が見えているかのように、ずっと僕の目を見つめていた。


 しばらく経つと、コフィーは目線を外し、コボルドの所に戻って行った。



「特に異変はありませんでした、マスター」

「そうかご苦労、では皆、街に戻るぞ」



 そう言葉を交わした後、コボルド達の足音は遠ざかっていった。



「こ、怖かったぁ……」



 僕は思わずそう言葉をもらした。

 コフィーと呼ばれる純白のコボルドは美しかったが、だからといってずっと見つめられるというより睨まれている状態が続くとやはりストレスを感じてしまう。

 そもそも人と話す機会が少なかった僕には目線を合わせることにすら恐怖を感じるのだ。



「白いコボルドとレンが睨み合っていたけど、別にレンの姿は相手には見えていないんだし、目線を外しても問題なかったんじゃ?」



 確かにフィナの言う通りだよな。

 僕は余計な苦労をしてしまったようだった。

 でもあの鋭い目つきには殺気も感じられて、目をそらした瞬間に殺されるんじゃないかと思わされる力があった。



「お、おれの仲間が……」

「確かにあの光景はショックだったな。コボルドって前からゴブリンを食べていたの?」



 その僕の言葉を聞くと、ゴンは少し後ずさりした。



「大丈夫、僕はゴンを食べたりしないよ」



 僕がそう言うと、ゴンはほっとした様子だった。



「そうね。コボルドがゴブリンを食べるなんて話はあまり聞かないわね。でもゴブリンを食べられないという訳ではないから、食糧が不足しているんだったら、あり得ない話ではないかも?」



 ちなみに、あのコボルド達にゴブリンを食べないように交渉してきてよとフィナに言われるが、絶対に嫌だし、関わりたくもないと断っておいた。

 あんな迫力のある人達に集団で襲われたら僕だってただでは済まないと思うしさ。



『バルグだったらあのコボルドの集団に勝てると思う?』

『微妙だ。あの狩りを見ただけじゃ相手の実力ははかれないからな。少なくとも、今まで戦った敵とは段違いに強いことは確かだ』

『そうだよね。なんとかこのまま無事に戦わずに済むといいんだけど……』



 やはり関わらないで済むなら関わらないに越したことはない。

 そして現在、あのコボルドと関わらないといけない理由はない。

 ならば関わらなければいいだけの話じゃないか。

 気を付ければ特に問題はないのだ。


 恐怖で足が震える自分にそう言い聞かせながら先に進む。

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