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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第一章 異世界で魔物生活
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11.蛇とモグラ

 蛇は住処に着くと僕を降ろしてくれた。



「着きましたよ。ここが私達の住処、ヘージャ洞窟です」



 中はモグラ達の住処よりもさらに暗くしたような感じでジメジメとしている。

 まあ、蛇の住処っていえばそんなイメージもあるし、別に驚くことはないだろう。



「私はヘヌンと申します。大蛇族の長をやっております。今回はお願いがあってこちらにお招きいたしました」

「お願い? どういう内容なんですか?」

「モグラにさらわれた大蛇族の子、ヘエムを助けてほしいのです!」



 え、あれだけ蛇を悪者扱いしていたモグラが実は悪者だったの……?

 話をよく理解できずに呆然とする僕。



「あなたがかつて暴走していた私達の長、ヘルダを倒されたのは知っています。そのことを咎めるつもりもありませんし、むしろ私達も感謝しております。ヘルダを倒せるほどの力の持ち主であるあなたならばこの問題を解決してくれると期待しているのです」



 どうやら僕が倒した赤い蛇の名はヘルダというらしい。

 でも自分達の長が倒されてむしろ感謝しているってどういうことなんだろう?



「どうして長が倒されたのに感謝なんですか?」

「ヘルダは元々暴力的で見境なく戦闘を仕掛ける人でして、そのヘルダに振り回された私達は戦闘続きで疲弊していました。そんなヘルダが赤く変化してからはさらに凶暴になってしまって誰も手が付けられない状態になっていました。暴れまわるヘルダによって数多くの同族が殺されましたから、ヘルダが死んだことを喜ぶ人が多いのも当然でしょう」



 そんな事情があったのか。

 確かに凶暴な相手ではあったけど、同族に言われるなんて相当だよなぁ。

 恨まれていると思っていたので内心ほっとしていた。



「ヘエムはいつ頃モグラ達にさらわれてしまったんですか?」

「ヘルダが倒れた日と同じ日です。どうやらヘエムはその日に迷子になってしまったみたいで……地土族がドサクサに紛れてヘエムを連れ去ったんだと思います」



 普通だったら、子供の蛇を連れ去るなんて信じられない。

 だがあの狡猾なモグラ達のことだ、あり得ない話ではないだろう。



「なるほど。ならすぐにヘエムを探してきますよ。でもヘエムが連れ去られたのって五日も前だから無事かどうかも分からないんですよね?」

「確かにそうかもしれません。ですがその時はその時です。とにかく私には無事であることを祈ることしかできませんから……」

「そうですよね、余計な事を言ってごめんなさい。では行ってきますね」

「お願いします……」


 僕は蛇達に見送られながら、モグラ達の住処へ向かった。





「ストリームソード!」

「水の精霊ウンディーネ!」



 その声と同時に発生した水流に吹き飛ばされているモグラ達の姿が見える。

 みていてなんか清々しい。

 自分が危ない人になったみたいだけど、やっぱりそう思ってしまう。

 僕、相当モグラ達に対してうっぷんがたまっていたんだな……


 するとモグラ達が吹き飛んだ辺りの所に見覚えのある二人が現れる。



「あっ、師匠! 探しましたよー!」

「レン! 無事でよかった! 心配したんだよー!」



 リザースとフィナだ。

 二人とも無事なようで何よりだね。



「心配させちゃった? ごめん、ここからどうやって脱出すればいいのかよく分からなくて」

「そうだよね、こんな変な所からさっさと脱出しましょう!」



 確かにこのまま脱出してもいい気がするのだが、なんとなく蛇達を助けたい気分なので、これまでの流れをリザースとフィナに説明する。



「モグラの奴ら、本当にひどいですね! 痛い目をあわせないといけないのでは?」

「ひどいわね! 早くヘエムを助けないと!」

「とりあえずヘエムの場所を目指したいんだけど、フィナ分かる?」

「……ええ、多分あそこにいる子ね。ついてきて!」


 フィナを頼もしく思うとともに、どうして分かるのかすごい不思議だ。

 妖精の力を不思議に思いつつ、僕達はモグラの食糧庫を目指すのだった。




 途中で立ち塞がるモグラ達をリザースとフィナが蹴散らしつつ、特に問題なくモグラの食糧庫にたどり着いた。


 モグラの食糧庫には巨大な蛇の死骸がまだ残されていた。

 多分モグラなりの腐食を防止する方法を施して長持ちさせているのだろう。



「おーい、ヘエムー! いるのかー?」



 リザースが叫ぶと、ゴソゴソという音が聞こえる。

 その近くに来ると小さな痩せこけた黒蛇が現れた。



「ぼくのこと……呼んだですか?」

「うん、ヘヌンさんに頼まれて助けにきたんだよ」

「ヘヌン様が!? あぁ、僕は助かるんだ。もう駄目だと思ったですよ……」



 その痩せこけた様子から察するときっと五日間一切飲み食いしていなかったのだろう。

 それでも生きているなんて魔物の生命力はすごいな、と思った。



「じゃあ、早い所ヘヌンさんの所へ向かおうか」



 僕はそう言って引き返そうとしたのだが。



「あなた達、何をしているんですか!?」

「何を考えているんですか? あなた、蛇に負けたと思ったら蛇に寝返ったんですか? なんと情けない……」



 もぐたともぐとが食糧庫の入り口に立っていた。



「君達こそ、蛇の子供をさらっておいて自分達は何も悪くない、蛇が悪いなんて言い方をどうして平然としてのけられるのか聞きたいね」

「そんな蛇の子供一匹位でギャアギャア騒ぐなんて本当だらしないですねえ」



 もぐとは相変わらず生意気な口調でそう言う。

 さすがに我慢の限界なのでもぐたともぐとを(特にもぐとを)こんがりと焼いてから氷漬けにしておいた。



「へぇ、レンってそんな事平然としてやってのけるのね……」

「師匠は悪者をそう簡単に許しはしないのです!」

「この人が味方で良かったです……」


 とみんな思い思いにそうつぶやくのであった。




 モグラを散々蹴散らし、ようやくヘヌンの所にたどり着いた。



「ヘヌン様、ただいま戻りました!」

「ヘエム、よく無事で! 皆、早くヘエムに食事の準備を!」

「「かしこまりました!」」



 そうやりとりをすると、ヘヌンの部下はどこかへ移動していった。



「レンさん、よくヘエムを取り戻してくれました。ありがとうございました! お礼についてなんですけど……」

「あぁ、そのことなんだけどさ、モグラ達がスライム村を荒らすとか脅してきたんだ。それでお願いなんだけど、モグラ達がそういう変な行動するのを牽制してくれないかな? あとできればでいいけど、不用意にモグラ達を襲わないでくれたら助かるよ」

「分かりました。あと、ヘエムさえ取り戻せればモグラを襲う必要もないので二つ目の心配はいらないですよ。もっとも、また私達に危害を加えるのならば容赦はしませんが……」



 これで蛇が襲撃することによってモグラが食糧不足になることもなくなるし、村を襲うこともないだろう。

 蛇がこの約束を守ってくれている上でモグラが襲われることになってもそれは自業自得だし、そこまで面倒は見きれない。


 なんとかスライム村が蛇とモグラによって襲われることは回避できそうだった。

 我ながら頑張ったと思う。


 ヘヌン達と別れ、蛇の住処側から地中からの脱出をすることにした。

 モグラ達の方からわざわざ出ようとすると面倒なことになりそうだからね。


 こうしてフィナの案内によって外に出ることができたのだった。




 地上に出ると空が少し明るくなり始めていた。



「あ、あれって日の出じゃないかな? こんなにしっかりと見たのは初めてだなぁ」

「綺麗ですよね、日の出。私、ついつい見とれてしまいます」

「私も早起きした時はよく見つめちゃうな」



 日の出が綺麗なのはこの世界も同じみたいだね。

 まあ名称は太陽ではないんだろうけど。



「レン、もう少しで目的地に着くよ! 早く行こうよ!」

「あー、うんすぐ行くよ!」



 日の出を横目に見ながら、僕達は先へと急いだ。




 少し歩くと、もう見覚えのある光景が見えてきた。

 赤い蛇と戦った場所だ。



「わー! リザース様が帰ってきたぞ!」

「師匠もいらっしゃるぞ!」

「なんか妖精も一緒にいるぞ!」



 僕達を見つけると、大勢のランドリザードが近くまでやってきた。


 そうだ、忘れてた。

 リザースの部隊はスライム村の近くに待機させていたんだった。



「嬉しいのは分かるが、もう少し抑えろ! 師匠が困ってらっしゃるぞ!」



 リザースがそう怒鳴った瞬間にランドリザード達は急に静かになった。

 さすがはリーダー。

 威厳があるな。



「あの、すいません、報告があるのですが……」

「なんだ、言ってみろ」

「はい、実はですね、スライム村をゴブリンが襲って来たんですよ」

「それは大変だ。それで被害は?」

「被害はありません。こちらには私達がたくさんいますから、ゴブリンなんて相手にもなりませんよ!」



 リザースがそんなランドリザードの報告を受ける。

 何となく聞いている感じ、スライム村に損害はなさそうでよかった。



「そうか、それはさすがだな」

「それでその戦闘の際に三人のゴブリンを捕虜として捕えているんですが、その者達はどうしましょう?」



 どうやら攻めてきたゴブリンの一部を生け捕りにしているらしい。

 ゴブリンってどういう感じなのかちょっと見てみたい気もする。



「ゴブリンってどういうやつなのか気になるから話してみたいかな」

「左様ですか。では、お前達、ゴブリンを師匠のもとに引き渡せ!」



 そうリザースが部下に命令し、ランドリザード達が動き出す。

 しばらくすると、僕の前に三人のゴブリンが連れてこられた。



「あっ、噂のコボルド族だ!」

「この人なら……」

「なんとか会えたな」



 ゴブリン達は口々にそう言う。

 そんなに怯えた様子はないようだ。



「君達はどうしてスライム村を襲ったりなんかしたの?」

「実はですね……」


 一人のゴブリンが事情を話し出した。



 どうやらゴブリンによれば、

 ・ゴブリンの村はウルフに襲撃を受けている

 ・交渉しようとしても相手にされず、一方的にやられてしまう

 ・食糧が不足し、生活に困っている

 ・食糧不足の解消をするために村を襲った

 ということだった。



「あと、”孤高の炎熱神”とも言われる方がスライム村にいらっしゃるとお聞きしたんですが、あなたがそうなのでは?」



 恥ずかしいので僕は否定しようとしたのだが……



「「「そうだ! 我らが師匠こそ”孤高の炎熱神”の名を持つお方である!!」」」



 そうリザースの部下達が言ってしまったのだ。

 いたたたた……と思いながらもツッコまないで、話しをすすめよう。



「つまり僕にウルフを追い払ってほしいっていうこと?」

「そうなんです! お願いできないでしょうか!?」



 なんで村を襲った相手を助けないといけないのかと正直思ったので、頼みは断った。

 僕はあれこれ嘆願してくるゴブリン達をスルーしてそのままスライム村の方へ向かうことにした。





「師匠、ちょっといいですか?」

「リザース、どうしたの突然?」

「ゴブリンからもう少し話を聞いたところ気になることを言っていたんですよ。ゴブリンを襲ったウルフのリーダーが赤く燃え上がるような見た目をしていて、他の者よりも一段と素早いそうなんです。もしかするとゴーレムのように赤い宝玉をウルフが取り込んでいるのではないかと気になったのでお伝えしておきます」



 スライム村でくつろいでいると、リザースがそう言葉をかけてきたのだ。



「赤い宝玉の情報か……それは気になるな」

「そうですよね。ですからあながちゴブリン達を助けるのも悪くないかと。赤い宝玉のついでに助けてしまえばいいので」

「確かにそうだね。もしそれが本当なら、いつかは戦う必要があるし、早いうちに行動してもいいかもね」



 こうして僕は捕虜であるゴブリンを案内役として一人連れていき旅立つことにした。

 ちなみに連れていくゴブリンの名前はゴンというらしい。

 そして今にも旅立とうとしていた時、フィナがやってきた。



「レン! ゴブリンの村に出かけるの? 私も連れて行ってよ! また夜になったら道案内する人が必要でしょ?」

「また手伝ってくれるの?」

「ええ。何だか面白そうな事が起きそうだもの。ついていかないのは損でしょ?」



 こうして結局、僕とリザースとフィナとゴンの四人でゴブリンの村、ウルフ討伐へと旅立つのであった。

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