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VS.弟

もし兄と妹の性別が逆だったらのIF。

ヒロインな兄と妹の性別が逆になったパラレルワールドに兄の精神だけが迷い込んじゃったって話です。


 朝起きて俺は自分におきた状況がつかめず、鏡の前でへんたりこんで固まっていた。

 鏡の中に映るのは妹のみやびそっくりの黒髪美少女。背中まで伸びたサラサラストレートの黒髪に少々つり気味な涼しげな目元。まさしく雅だ。

 ただし顔立ちに限る。首から下は完全に別人だった。出るとこ出て引っ込むとこは引っ込んだメリハリボディ。いや、雅が貧乳と言っているわけではないんだよ?この体が肉感的過ぎるだけで。

 へたりこむ前に見た感じだと身長も150センチ半ばの小柄な雅と違って、160センチ後半はありそうだ。女の子にしてはかなり背が高い。

 そ~っとキャミソールの襟刳りを開く。ふっふぉぉぉぉぉ!でかっ!E…いやFは有るか?思わず生唾を飲み込む。ちょ、ちょっとくらい、いいよな?おれは恐る恐る胸に手を伸ばす。柔らかい…。一心不乱に胸を揉む。やべぇ。めっちゃ気持ちいい。童貞には刺激が強すぎるぜ。

 これ、俺だよな?鏡に写ってる子同じ動きしてるし。なんだ?夢でも見てるのか?やけにリアルな夢だな。ちゃんと感触まであるなんて。あっなんか変な気分になってきた。


「おねえ、朝っぱらから何やってんの?」


 うおぉぉ!ビックリした!思わず手を後ろに隠す。いや、なんとなく気まずいしさ。声の主は部屋の扉を人一人分くらい開けてその隙間からこっちを見ていた。こっち見んな。

 男にしては少し長めの黒髪を無造作に下ろし、少しつり気味の涼しげな目を胡乱げに眇めている。顔は俺。正確には中学生の頃の俺。


「…お前誰だ?」


「何言ってんだよ?いくら天然だからってわざわざ起こしに来てあげた弟に向かってそれは無いんじゃね?」


「弟?俺には妹しかいねぇよ?」


「寝ぼけてんの?お姉の兄弟は俺だけだろ?俺の上にはお姉しかいないし、俺の下に兄弟はいないじゃん。大丈夫?」


 どういうことだ?


「お前、雅なのか?」


「もう!ふざけてんの?なんか口調も変だし。アホな事言ってないで早く着替えて準備しなよ。いくらマネージャーだからって遅刻しちゃまずいんじゃないの?」


 呆然とする俺に向かってそれだけ言うと自称弟は部屋を出て行った。何コレ?俺と雅の性別が逆転してる?

 俺はほっぺたを思いっきりつねった。いってぇ!


 何なの?コレ夢じゃないの?








 それから俺は部屋中を引っ掻き回して着替えを探し、手探りで女物の下着を身につけ、クローゼットに有った女子の制服を着て階下に降りた。うぅ、足がスースーする。

 ダイニングに行くとテーブルの上にはいつもの朝食。


「雅?」


 雅がいるであろうキッチンに声を掛けるとさっきの男の声で返事が返ってきた。


「何?どうしたの?お姉。さっきからなんか変だよ?とりあえず片付かないから早く食べて。今日は俺が食事当番なんだから。」


 キッチンからひょっこりと顔を出してそう応える男を見て、こいつはやっぱり雅なんだと改めて理解した。

 何だコレ?何だコレ?何だコレ?どうなってんの?俺これからどうなんの?

 混乱のままカバンだけつかんでその場を駆け出す。後ろから雅が俺を呼び止める声が聞こえてくるが俺は逃げるように家を飛び出した。



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