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姉弟VS.

「お姉?」


 その声に混濁した意識が浮上する。目の前にドアップのみやびの顔があった。怒ったようなホッとしたようなその顔が俺のよく知る雅と重なった。


「み…やび……。」


 思わず口から出た声は掠れていてうまく発音できなかった。

 例え男になっていようとこいつの本質は同じなんだ。変わらないその表情に俺は酷く安心し、縋るように雅の胸に顔を押し付ける。俺を抱きしめる腕の力が増した気がした。

 もういやだこんな世界とこ早くいつもの日常に戻してくれ。かけるとバカやって、主将キャプテンにしばかれて、一馬かずまさんにいびられる。そんな日常が妙に懐かしかった。戻れなかったらどうしよう…。知らないうちに身体がガタガタと震える。


「もう大丈夫だからな。」


 ポンポンと優しく背中を叩かれる。また零れそうになる涙を必死に抑えた。


「ミヤ。カズを俺に返してくれないか?」


 そこに響く冷たい声に、ついさっきまで自分が置かれていた状況を思い出し身体が強張る。返してって何?俺、物じゃないんですけど。返すも返さないも無いんですけど?


「嫌だ。絶対に渡さない。このロリコンストーカーが!」


 俺をはさんで不穏な空気が流れる。一馬さんに口ごたえできるなんて、雅サン、サスガデス。


「人聞きが悪いな。一総かずさと俺は愛し合ってる。愛があれば年の差なんて関係ないだろ?」


 ん?なんか変な事言ってね?アイシアッテル?ダレトダレガ?


「とてもそうは見えないね。勘違いじゃないの?」


 雅、守ってくれようとしてるのは分かってる。俺のために戦ってくれてるのも分かってる。でももうやめて!挑発しないで!


「…お前は本当に可愛くないね。カズの弟だなんて信じられない。未来の弟だと思って今まで見逃してきたけど…」


 いい加減殺してもいいかな。


 ひぃぃぃぃ!殺すとか言ってる!総司おれでもまだ言われたことねぇよ。恐る恐る身を起こし一馬さんの方を振り返る。

 まず目に入ったのはかけるの後ろ姿。あっ、こいついたんだ。まるで庇うように俺と雅の少し前に立っている。後ろからだから表情は見えない。

 そこから徐々に視線を一馬さんの方に移していくと、耳と尻尾を垂れて悲しそうに俺たちの様子を見てるコタローがいた。小さくキューキューと鳴いているのが哀れを誘う。うん。お前そんな仕草できたんだな。能天気にじゃれ付いて来るとこしか見たこと無いから新鮮だわ。

 そして見えた見覚えのある靴。少しづつ視線を上げて行きたどり着いたその先には一馬さんの顔。


 うわっ!やっべえよ!めっちゃ怒ってるよ!目からビーム出てるよ!人を殺してる目だよ!

 知らない内に固まる身体。俺が身体を起こしたことでゆるんでいた雅の腕に再び力がこめられる。


「お姉が脅えるんで、その目やめてもらえます?」


 え゛?何なの?雅、お前勇者?ここは”いのちだいじに”でいこ?ガンガンいっちゃだめぇ!いけない。この子早死にするタイプだ。ここは俺が何とかしなきゃ。

 そっと一馬さんの様子を窺う。ひっ!漏れそうになる悲鳴を何とか飲み込む。

 勇気を出すんだ総司そうし!今は女の子の(こんな)身体でもお前はオトコノコだろ!雅にこんな風に守ってもらうばかりでいいのか!いや、いけない!お前はやれば出来る子だ!

 俺はそっと雅の体を押すとその場で立ち上がった。足元がおぼつかなくて少しふらつくが雅がすかさず支えてくれる。


「お姉。」


 何か言おうとする雅を片手をあげることで押しとどめ、俺は一馬さんに向き直った。


「カズ。いい子だ。こっちへおいで。」


 一馬さんは雅に向けていた地を這うような声とは全く違う穏やかな声音で話しかけてきた。こっちに手を差し出しにこやかに微笑んでいる。俺はゆっくりと首を左右に振ると口を開いた。


「一馬さん。雅は俺の大事な家族です。虐めるのはやめてください。」


「虐めてないさ。お前がこっちへ来たら何もしないよ。これからは朝から晩までずっと一緒にいよう?どこかに部屋を借りて一緒に住めばいいよ。そしたら誰にも邪魔されることはないし、変な男に絡まれることも無い。」


 俺を支える雅の手に力が入る。


「行きません。」


 だってそれって監禁フラグだよね?無理無理無理!ぜっっっっったい行かない!


「どうして?昔から俺のことが好きだって言ってくれてるじゃない?。」


 好きじゃねぇし。


「まだ未成年ですし。」

 

 監禁は嫌だ。監禁恐い。監禁ダメ!絶対!


「昔、俺のプロポーズにうんって言ってくれたろ?いつかは一緒になるんだから、それが少しくらい早くなったっていいじゃないか。」


 何言っちゃってんの一総おれ!?


「よく言うよ。いったいいつの話だっつの。何にも分かってない子どもに無理やり言わせただけだろ。」


 聞こえてきた翔の言葉に安堵する。そうだよな。そんな約束してないよな。


「うるさいよクソガキ。」


 翔の方を一瞥し底冷えするような声で吐き捨てるように声を発すると俺の方に視線を戻す。雅や翔を見るときの冷えた視線とはまったく別の熱をはらんだ眼差しを向けられる。そんな目でこっち見んな!そんな目で見られても鳥肌が立つだけだから!


「…仕方ないな。今日の所は諦めてあげる。」


  しばらく俺を熱視線で見つめるも特に反応の無い俺に、一馬さんは大きくため息をつく。それからやれやれと肩をすくめてそうのたまった。


「でもカズが高校卒業したらすぐにでも結婚しよ?安心して。カズを養うくらいの甲斐性はあるからね。」


 え?絶対いや。


「まだ結婚とか考えられないのでお断りし……。」

「卒業までまだ一年以上あるからじっくり考えてね。すぐに俺無しではいられなくなるから大丈夫。」


 お断りを口にしようとしたところで言葉を遮られ笑顔でそんなことを言われる。あれ?俺の目おかしいのかな?一馬さんの背後に黒くうごめく何かが見えるよ?


「雅。今回は許してあげる。お前を殺したりしたら一総を守る人間がいなくなるしね。一総が俺の物になるまで変な虫がつかないようにしっかり守ってくれよ?」


「言われなくてもそうするよ。あんたにだって触らせないけどね。」


「ふん。まぁいいよ。お前の許可は必要ない。可愛い俺の一総。今日の続きはまた今度ね。俺のこと以外考えられないようにしてあげる。愛してるよ。」


 一馬さんは雅を鼻で嗤った後、蕩けるような笑顔を俺に向ける。そうしてゲロ甘なセリフを残すとコタローを引き連れて帰っていった。いや、今日の続きとかしねぇよ?


 脅威が去ったことにホッとして腰が抜ける。俺はへなへなとその場に座り込んだ。っあ~緊張した。背中とか掌とか冷や汗でべっとりだぜ。


「大丈夫かお姉。」


 雅と翔がしゃがみこんでオレの顔を覗き込む。何度も首を縦に振る俺に二人もホッとしたようだ。穏やかに微笑むと頭やら背中やらを撫でられた。


 ありがとう!ありがとう皆さん!俺はやったぜ!一馬さんを退けることができたのだ! 

 総司は無事(?)魔王を退けることができました。

 雅と総司の思考には結構なずれがあります。

 これの雅視点を書くかは不明。。。書けたら書きます。

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