黒点
そのとき
その小さな、
小さな砂のような
それに
気付いた人はいなかった
あのとき
その僅かな、
僅かな塵のような
それに
目を止めた人はいなかった
このとき
その微かな、
微かな違和感のような
そんな感覚を
信じた人はいなかった
だから
急速に広がったあの闇色に
あっという間に
世界は呑まれた
転がり始めた石を
零れ始めた土を
流れ始めた水を
誰も止めることができないように
どのとき
その小さな点は
たった一点のその闇は
誰かのペン先から
溢れ出したのか
知っている人は誰もいない
その細いペンを揺らしたのが
あなただと知るものは
誰もいない