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プレゼント

教室に戻ると、マイクの姿は無かった。

「ちょっと!大丈夫?帰った方が良いよ…」

私を見つけた恭子が走ってくる。

「うん、もう大丈夫。」

私は笑ってみせる。

「もー…心配したんだからね!!でも…かっこ良かったー!ロウ様…はぅん!」

恭子が悶える。私を抱えて飛び出すロウがかっこ良かったんだって。

「あのさ…マイク…は?教室に居ないけど…」

私はマイクの所在を確認する。

「…誰それ…頭大丈夫?やっぱり早退したら?」

「いや…転校生のマイクだよ!!今朝紹介されたじゃん!!」

「…転校生はロウ様だけだよ…一、やっぱり帰りな!!」

マイクが…記憶から消えてる?嘘だとは思えないし…何で?

殺気といい、あのマイクって変!人間じゃない…気がする。

「ねぇ、ロウ…」

「はい?何でしょう。」

「…マイクが居ない…記憶から消えてる。」

「えっ?」

「マイクよ!転校生のマイク!!」

「…なんの事です?」

ロウも知らないと言い張る…どうして?


家に帰っても疑問で頭の中が一杯…

どうして知らない振りをするの?

「帰ったか…」

お昼寝していたルーが私を迎えてくれる。

「うん、ただいま。」

「……元気が無いな…」

ルーは元気の無い私を抱きしめてくれた。

「何かあったか?」

「あのね…なっ何でもない。」

ルーに相談しようか…一応強そうだし。

「…んっ?クンクンクン…。」

ルーは私の匂いを嗅ぎ始める。

「…ロウの匂い。」

…あっやっぱり動物の鼻は誤魔化せない…

「あっあのね!ロウが助けてくれた時に抱っこしてくれたから…かな?」

重要な個所を省く。

「クン…クンクン…」

ルーの表情が変わる。

「…違う…そんなんじゃない。これは…」

言いかけた時、ロウが部屋に入ってくる。タイミング最悪…

ロウは何も知らないで挨拶をする。

「ただいま戻りました。」

「…ロウ。ちょっと来い。」

ロウを呼びつける。

「…はじめ、部屋に戻れ。」

ルーが凄く低い声で私に命令を出す。

「あっあのね…わっ私からも…」

「!!はじめぇ!!」

全身が硬直する…怖い。

今まで見た中で、一番怖い…

「あっごめ…ごめんな…」

涙で言葉にならない…

「!!!!!」

ルーと目が合う…全身の自由が奪われる。

ルーは私に縛りを掛ける…もう…だめだ。

ロウとの事、ばれちゃった…絶対嫌われた。

ロウ…殺されちゃったらどうしよう…拒否出来なかった私のせいだ…

私はルーの言葉に体を奪われ、部屋を出ていく。


暫くして寝室にルーとロウがやって来た。

私は急いで立ち上がる。

「あっあの…ルー…。」

私はどう話を切り出したらいいか分からない。

「…大丈夫。」

そう一言言うと、ルーは優しく私を抱きしめる。

私はルーの肩越しにロウの顔を見る。

ロウは、大丈夫と目で教えてくれる。…良かった…でも、

「ルー…ごめんね?」

取り合えず謝る。謝って済む問題じゃないけど。

「…分かってるから。」

「…えっ?」

「ルーには全部分かってる。」

「…ルー。」

本当にごめんね…。

「そんな事より…。」

…そんな事?

「はじめ…体は?大丈夫か?」

「かっ体は本当に潔白です!!」

「??倒れたんだろう?」

あっそっちか。

「うん、ロウが助けてくれたの。もう大丈夫。」

「うん、やはりロウに頼んで正解だった。」

「…なっ何を頼んだの?」

「今日会った男の事だ。赤い髪の。」

「マイク?」

「あぁ…あいつは獣人だ。」

頼んだって事は…やっぱり知ってたんじゃんロウ!

「ロウ!知ってたんだね!酷い!」

「…申し訳ありません。王にお伺いせずにお話する訳には…」

「…もう…あっ、ごめん。で、マイクは私に何かしたんでしょ?」

「王の話を中断するとは…」

ルーはちょっと不機嫌…話の腰折っちゃったから。

「ごっごめん!続けて?」

「ふんっまぁ良い。…マイクはお前の命を狙っておる。」

「…私、何かしたっけ…」

「違う。これからするのだ。はじめは唯一、王の子供を産める女だからな。」

「…まだ妊娠すらしてないのに…もしかして政権争いってヤツ?」

「あぁ。マイクはライオンの長だ。最近のライオン共は礼儀を知らない。」

…なんか、ライオンって強そうですけど。

「今まで王には弱点など存在しませんでした。強い魔力を持ち、誰一人逆らわなかったんです。

 でも、魔力の無いはじめ様という存在に目を付け、馬鹿な謀反を…」

ロウは眉間に皺を寄せ説明してくれる。

「だからルーはロウに、はじめのガードを命じた。ロウならはじめを守れる。

 ロウは信頼出来る。ロウは強い。」

「…信頼してるんだね。」

「当たり前だ!ロウは王の兄だ。王の次に強い。誰にも負けない。」

前に聞いた話と違う様な…

「…分かった。で、マイクは何処に行ったの?友達の記憶からも消えてるし…」

「ロウを甘く見たんだろう。学校では手出しできないと分かって作戦を変えたはずだ。」

「…じゃぁ、また殺そうとするんだね…」

ルーに会ってから、死の危険ばかりだな。

「大丈夫だ。屋敷ではルーが守る。学校ではロウが守る。」

「…学校、行かなくても大丈夫だよ?」

勉強したくないし…

「それなら家庭教師を付けるが?」

…なんか一日中勉強やらされそう…

「…学校行きます。」

私は、これからも守ってね!という意味も含めロウに軽く頭を下げる。


それから暫くは平穏な日々が続いた。

毎日普通に学校に行き、帰ったらルーとラブラブ。


月日は流れ…寒い日が続く一月。

私は卒業を目前に控えていた。



ライオンの長、マイクはあれから何もしてこない。

私は襲われた事などすっかり忘れ、幸せな日を送っていた。


「ルー!!行ってきます!」

学校へ行く前にお約束のキッス。

高級車に乗り、ロウの見守る中、退屈な授業を受ける。

最初は高級車で乗り付け、ロウというイケメンに守られる私を、

(何アイツゥー!!)

位に見ていた友達も、今はすっかり恒例行事の様に受け入れていた。

私はロウと一緒に高級車に乗り込み、家に帰ろうとしていた。


実は…今日はルーの誕生日!

ルーは今日で4歳になる。(人間に換算すれば20代後半位?)

私はプレゼントを買いに行く同行をロウに求め、ロウも了承してくれた。

何時もと違う帰宅コースを走る車。


「うーん、何が似合うかしら…」

私はルーに送るプレゼントを一生懸命考える。

「これなんていかがでしょう?」

ロウも一緒に考えてくれた。

結局私が選んだのは、真っ白な絹の肌掛け。

お昼寝中のルーに掛けてあげよう。…くふっ絶対絵になる!!

私は会計を済ませようとレジに並ぶ。

包装してもらっている最中、ロウの携帯が鳴る。

「プルルル…プルルル…」

ロウの携帯って、私と一緒の時は滅多に鳴らない。珍しいな。

ロウもビックリして携帯に出る。

「はいっはぁ…あっあの…音が…もう一度…」

近くで子供が遊んでいる所為か、音が聞こえにくい様子。

私はロウに静かな所で話す様に促す。

「しっしかし、はじめ様の側を離れる訳には…」

「大丈夫!!最近何も起こらないし!!」

私はロウの背中を押す。ロウは申し訳なさそうに席を外した。


実は私、肌掛け以外にプレゼントがあります。

多分、ルーが一番欲しがっている物。ってか者?

早く渡したいな!二つのプレゼント…

私は包装が終わった箱を受け取り、ロウを待つ。


ロウを待っている時、後ろから急に殺気を感じる。

「王妃様…」

後ろから声が聞こえる。

「お会いしたかった…」

なっ何??

私が振り向こうとした瞬間、私の口を覆うハンカチ。

私の視界が急に揺らぐ…


ピチャン…ピチャン…水の音…

聞きなれない音に私は目を覚ました。

周りを見渡す…薄暗い倉庫の様だ。ここどこ?

私は知らない場所に寝かされていた。

手足はロープで縛られ、身動きができない…私、誘拐された?

どうしよう…誰が私をこんな場所に?


「王妃…」

聞き覚えのある声…

私は声のする方へ視線を向ける。

「王妃、久しぶりです。」

「マッマイク…」

声の主はマイクだった。

「王妃、お会いしたかった。」

クククッと不敵な笑いを浮かべる。

「なっなんでこんな事するの!!」

私はマイクに向かって声を荒げる。

「なんで?ふっあははは!!」

「なっなんで笑うのよ…」

「理由は一つしかない。ルーシャだ。」

「…やっぱり狙いはルーなんだ…。」

「あぁ。たかが猫の分際で王様気取りとは…腹立たしい!!」

ブワッっと殺気がみ漲る…とても息苦しい空間。

「我々はずっと力を持ちながら虐げられてきた…

 我々の方が王に相応しい…それなのに猫如きに支配なんぞ受けるのは真っ平だ!。」

声を荒げるマイク…

「今までは流石の我々も迂闊には手出しできなかったがな。でも貴様のお陰で王に隙が生じた。

 今この機会を逃す訳にはいかない。」

「…馬鹿じゃない?」

「…なんと言った。」

「馬鹿だって言ったのよ!こんな姑息な手でしか王に太刀打ち出来ないなんて…

 どうせまともに勝負する勇気もないんでしょ?弱虫の卑怯者!」

腹が立ってきた。マイクの自分勝手な良い訳。

毎日働くルー。王位を譲ったロウ。二人を馬鹿にしないで!!

「貴様…もう一度言ってみろ…」

「何度でも言ってやる!この…馬鹿卑怯者ライオン!!」

「今…馬鹿と言ったな?」

「あぁ!言ったわよ!何か間違ってた?卑怯者さん。」

倉庫中が殺気に包まれる…はぁはぁ…苦しくなってきた…

ちょっと言い過ぎた?でも、私は間違ってない!

「二人を馬鹿にするのは絶対に許さない!!」

私は息を切らせて声を張り上げる。

実は結構気を保つのに限界がきてたんだけど…。

「ほうっどういう風に許さないのか…教えて貰おう。」

腕を組みながら話すマイク。本当に自信タップリの口調。

「あんたなんかより、二人の方が強いもん!!」

「!!!漸く来たか…では、確かめてみるか?」

「確かめるって…」

マイクは倉庫のドアを顎で指す。

その時、バタン!!!っと大きな音と共にロウが飛び込んできた。

「ロウ!!!」

私は助けが来た事を素直に喜んだ。でも…

ロウって最初魔力が少ないって言って言ってなかった?

ルーがボディーガードに指名する位だから嘘だとは思ってたけど…

正直、どっちが強いか分からなかった。

「…はじめ様、申し訳ありません…」

「貴様…話す相手が違くないか?」

「ふんっライオン如きに遣られはせん。」

ロウの言葉に毛を逆立てるマイク…一触即発な状態…

「王には指一本触れさせない!!」

ロウの目付きが一瞬で変わる…こんなロウ見た事無い。

ロウの体から黒いオーラの様な物が見えた。それはマイクの方に飛んでいく。

「くぅっ。」

全身黒い何かで包まれるマイク…一瞬顔を歪ませる。

「くぅ…あぁぁぁ…はぁぁぁ!!!」

マイクは力を込めて全身の黒い物を弾き飛ばす。

「さすが…先代の王は強いな…」

…先代の王?それってどういう意味?

「まだまだ…これからだ。」

ロウはそう言って同じような黒い何かをマイクに飛ばす。今度はかなり大きい…

「ぐぁぁぁ…っ。」

叫び声を上げながら倒れるマイク…もしかして、勝った?

ロウは急いで私の元に駆け寄る。

「ロウ…有難う。」

「私こそ…警戒を怠った私の責任です。」

ロウは私を縛っていたロープを外しに掛った。

硬く結ばれたロープは簡単に解ける筈も無く、ロウはロープに自分の手のひらを当て、

呪文を唱え…焼き切った。

私は自由になった両手を擦りながらロウに聞いた。

「ねぇ、さっきアイツが言ってた先代の王ってどういう意味?」

「それは…私の魔力が少ないって…」

ロウの話の腰を折って私は喋りだす。

「もう嘘はいい…マイクは確かに先代の王って言ってた。確かに聞いた。」

「…分かりましたお話いたします。ですが一旦外に出ましょう。」

ロウは私の肩を抱いて外へ連れ出そうとした。

「いっ痛っ。」

縛られていた足首が痛みヨロヨロ歩く私…ロウは大事に支えてくれた。

「無理なさらないで下さい。ゆっくり参りましょう。」

ロウが優しく声を掛け、私はそれに甘える。


「ねぇロウ。ルーはこの事知ってるの?」

「はい、この場所を探し当てたのは王です。はじめ様の携帯のGPSを使って。」

…そんな機能付いてたのね。なんかなぁ…

「でも、よく一緒に来なかったね。絶対飛んで来そうなのに…」

「…私が無理やりお止めしたのです。王はかなり取り乱しておられたので…」

「ロウって実は凄い人なんでしょ?王を止められるなんて…」

私はニヤニヤしながら言う。正体バレたぞー!みたいな?

「…腹部を殴ってしまいました…どんなお叱りを受けるか…」

「ちょっロウ、大丈夫なの?あとで怒られるんじゃ…」

「はい、覚悟の上です。でも王はかなり取り乱しておられて…まともに戦える状態では。」

「そっか。じゃあ、私からもフォロー入れておくね!!」

「…すみません。後先を考えず…助かります。」

ロウは優しく私にほほ笑む。やっぱり素敵な笑顔。

ゆっくり歩いて、もう倉庫の出口付近まで来ていた。


お喋りなんかしないで…

痛いのなんか我慢して…早く倉庫から出れば良かった。

あんな事が起こる前に…




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