表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/61

61.伝わらない気持ち


 その日の昼食はエミール様やジャン様と一緒に摂ろうと思っていたのだが、なぜか王太子殿下とランドール様が教室にいらした。女子は大騒ぎだ。


「マティルド嬢、昼食を一緒にどうだろうか?」

 手を握られ、じっと見つめられる。な、なんか圧が強いよ。


 一角ウサギがどう調理されたのか気になるけど、もちろん王太子殿下の誘いを断るわけにはいかない。喜んでご一緒させていただきますとも。


 わたしが本日のおすすめを選ぶと、ジェラルド様は少し考え込んだ。

「殿下、どうかいたしましたか?」

「いや、なんでもない。では私はこちらのコースを。ソラル鹿で」

 ランドール様はわたしと同じく、本日のおすすめだった。


 席につくと、ジェラルド様がためらいがちに口を開いた。

「……ランドールもマティルド嬢も、いつも本日のおすすめを選んでいるが、何か理由があるのだろうか」

 深刻そうな顔で何を言うのかと思えば、そんなことか。


「「安いからです」」


 わたしとランドール様の声が重なった。


 えっ、と驚くジェラルド様に、わたしは肩をすくめた。

 貴族令嬢が家の金銭事情をあけすけに話すのはいかがなものかと思うが、ジェラルド様はわたしの未来の上司なのだ。部下の金銭事情を把握してもらい、改善を訴えたい!


「率直に申し上げますと、ルブラン伯爵家は貧乏です」

「俺は卒業後、ケルテスの名を名乗ることを禁じられています。学院でかかった費用はいずれ、ケルテス家に返すつもりなので贅沢はできません」


 ランドール様の返事に、わたしは驚いて「え!?」と声を上げてしまった。ジェラルド様も同じようで、目を丸くしている。

「ランドール、そのような話は初耳だが」

「俺の個人的な事情ですので」

「いや、そうしたことも含め、私には教えてほしい。……とにかく、そういうことなら今後、食堂の費用は私が持とう」


「「大丈夫です」」


 またもやランドール様と言葉がかぶった。ジェラルド様が顔をしかめる。


「あの、食堂にかかる費用を捻出できる当てができたので、それは大丈夫です!」

 それよりも将来のお給料に期待したい! 魔法騎士になればどこに所属しようが好待遇を望めるだろうが、そこにさらに上乗せしてくれないかな。王太子殿下の命令で働いた場合は、通常の給与に加えて特別手当をもらえるとか、通勤用に王家所有の良馬をもらえるとか……、ちょっと図々しいだろうか。


「自分の負債は自分で働いて返します」

 ランドール様は禁欲的だなあ。ていうか、ランドール様はケルテス家の嫡男なんだから、本当は返済する必要なんてこれっぽっちもないのにねえ。


「ランドール、そういう訳にはいかない」

 ジェラルド様は、はーっとため息をついた。

「……まったく、なんてことだ。私は己の側近や……、婚約者についてさえ、何も知らないのか」

 まだ婚約者じゃありませんし。


「殿下、その件なのですが」

 わたしは前もって報告しておこう、と思って言った。

「ケルテス辺境伯家が、わたしとシモン様を再度婚約させようと裏工作をしているようです」

「……ああ、ケルテス辺境伯がリヴィエール侯爵家に婚約解消を申し入れたのは聞いている。だが、心配する必要はない」

 ジェラルド様は表情を和らげ、わたしに微笑みかけた。

 うわあ、すごい。微笑んだだけで周囲の空気がキラキラしてる。美形は存在そのものが光なのか。


「ランドールからも話を聞いた。マティルド嬢、君はわたしの正式な婚約者にはなれない、と考えているそうだね」

「はい」

 ジェラルド様の目が細められ、何かを探るようにじっとわたしを見つめる。


 大丈夫です! 婚約者じゃなくても、わたしは王太子陣営から抜けたりしません!


 うんうん、とジェラルド様に頷きかけると、ふっとジェラルド様の目が優しくなった。

「……どこまでわかってもらえるか少し不安だが……、とにかく私は、必ず君を正式な婚約者にすると約束するよ。信じてくれ」

「殿下を疑ったことなど一度もありません!」

 なんてったってジェラルド様は『ソランの薔薇』の主人公だからね! 物語が始まったとたん殺されるようなモブ令嬢ごときが、そのお言葉を疑うなんて不遜な真似はしないッス!


 ジェラルド様がそこまでおっしゃるなら、もしかしたらわたしは本当に、ジェラルド様の正式な婚約者になれるのかもしれない。そうはいっても、結局は聖女さまが現れるまでの一時的な措置になるだろうけど。

 しかし、ジェラルド様は誠実だなあ! ヘッドハンティング婚約にさえ、こんなに真摯に向き合ってくれるなんて。

 これなら将来、給料未払いなんて非道な仕打ちは絶対にされないだろう。きっと労働環境もホワイトに違いない。

 信頼できる主君に恵まれて幸せです! 一生ついてゆきます、殿下!


「……何故か私の気持ちが伝わっていないような気がしてしかたないんだが」

 ジェラルド様が微妙な表情で言った。


 何をおっしゃいますか! そんなことはありません、しっかり伝わってますよ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ