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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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54.好事魔多し


「ランドール、素晴らしい戦いぶりだった」

「ありがとうございます」

 ランドール様は王太子殿下に騎士の礼をとり、ふとわたしに目を向けた。


「ランドール様! すごかったです!」

「……ああ」

 ランドール様は照れくさそうな表情を浮かべ(ちょっとだけ口角が上がっているし眉尻の角度がいつもと違うからわかる!)、わたしの前に来た。


「ランドール様、あれって! 最初からああやって勝とうって思ってたんですか?」

「いや、何も考えていなかった」

「またまたあ! 絶対、わたしと同じやり方で決めようって思ったんでしょう!」

 わたしは嬉しくなって、ランドール様の肩をバシバシ叩いた。

 すると、珍しくランドール様が声を上げて笑った。


 ああ、楽しい。まるで子どもの頃、頻繁にケルテス辺境伯家を訪れていた時みたい。

 あの頃は意地悪をするシモン様に見つからないよう、ランドール様と一緒に広い庭園を走り回ったり、木に登ったりして遊んでいたっけ。あの頃のランドール様は、声を上げて笑うことも結構あった。今ではすっかり無口無表情が通常運転になってしまったけど。


「……マティルド」

「はい?」

 肩を叩いていた手をとられ、ぎゅっと握られた。

 そのまま、流れるような動きでランドール様がわたしの前にひざまずく。

「え?」

「勝利の栄誉を、あなたに捧げる」

 ランドール様の唇が、わたしの手の甲をかすめた。触れるか触れないか、というくらいかすかな感触だったのに、わたしは飛び上がってしまった。


「え、……え、栄誉……、ああ、はい!」

 あたふたしつつ、わたしはランドール様に頷きかけた。

「ええと、はい、ありがとう……、ございます。あなたの勝利を祝福します。……立ってください」

 こんな風に試合の勝利を捧げられるなんて、初めてかもしれない。領主の娘として試合で優勝した騎士を祝福したことはあったけど、あれはあくまでルブラン家に捧げられた勝利だし。


 立ち上がったランドール様は、わたしの手を握ったまま、じっとわたしを見つめた。

 えっ? 勝者の祝福って他にやることあったっけ?

 祝福の言葉を述べて、騎士を立たせたら終わりじゃなかった?

 うわー、なんか恥ずかしい! 勝手に顔が赤くなるのは何故!


「……ランドール」

 ジェラルド様が笑顔でランドール様の肩をつかんだ。

「話したいことがある。こちらに来てくれ」

「かしこまりました」

 二人は小声で何か話しながら、講堂に向かって歩いていった。意見が合わないのか、ジェラルド様の眉間に皺が寄っている。


 このトーナメント戦で、新たに勧誘したい人材でも見つけたんだろうか。

 いつかわたしも、そうした話し合いに加えてもらえるくらい信用してもらえたらいいな~。


 まあ今日のところは、トーナメント戦優勝という実績を作れただけで良しとしよう。

 わたしの生存戦略は、今のところ絶好調だ!



 そんな風に浮かれていたのだが、好事魔多し。

 次の日の朝、わたしはグレース伯母様に奈落の底に突き落とされた。


「マティルド、リヴィエール侯爵令嬢がいらっしゃったわ」

 なんですと!?

 タウンハウスを出ようとしていたわたしは、驚きのあまり固まった。


「え、いや……、どうしてでしょう? あの、でも、今から学院に行かなくては……」

「コレット様が、あなたと一緒に登校したいとおっしゃっているの。それでわざわざ侯爵家の馬車で迎えにきてくださったそうよ」


 なぜ。

 ……いや、理由はアレしかない。

 シモン様だ。


「……わかりました。でも、グレース伯母様も一緒に……」

「それがね、付き添い用の馬車もご用意してくださったの。……マティルド、たぶん婚約について尋ねられると思うけど……」

 そうだよね、そう来るよね。

 でも婚約の件はケルテス辺境伯家が勝手に動いてるだけで、わたしも被害者なんだよ!


 侯爵令嬢をお待たせするわけにはいかない、と伯母様に急かされ、わたしは豪華な侯爵家の馬車に乗り込んだ。

「おはよう、マティルド」

「お、おはようございます、コレット様……」


 二日会わなかっただけなのに、コレット様はだいぶやつれた様子だった。

 目の下にはくっきりとクマができ、顔色も悪い。

 こ、これは……、ケルテス家に嫁いだ後、シモン様の相次ぐ浮気に精神を病んだコレット様のようではないか。

 マズい。もし今の段階で、わたしを殺した時と同じくらいコレット様の心が壊れていたら……。


 馬車が動き出しても、しばらくコレット様は黙っていた。沈黙に耐えられず、わたしが口を開こうとすると、

「……はっきり言うわ、マティルド」

 コレット様は充血した目でわたしを睨んで言った。


「もしあなたが、わたしを裏切ってシモン様の婚約者になったら……、わたし、絶対にあなたを許さないから」

 ヒィイイ!


 わたしは恐怖に震えあがった。


 ちょっ……、いやちょっと待って!

 裏切るとか誤解ですから! わたしは何があってもシモン様の婚約者にはなりませんから!


 だから落ち着いてください! 話せばわかる! たぶん!


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