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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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52.軍神


「……あなたの勝ちです、マティルド嬢」

 ジャンヌ様が悄然とした様子で言った。

「あなたを侮ったことを謝罪いたします。……あなたはわたしより、はるかに強い。一年生であっても、建国記念祭に参加するにふさわしい実力をお持ちです」


 マンガのとおり、ジャンヌ様は高潔な方だった。

 でも、ちょっと睨んだくらいでそこまで気にしなくていいのに。


「わたしこそ、ジャンヌ様のような素晴らしい剣士と戦えて光栄です」

 今回、ここまで派手な勝ち方ができたのは、『俊敏』のスキルと前世の記憶があったからだ。

 ジャンヌ様は性格どおりの正統派すぎる戦い方をするから、ちょっとトリッキーな仕掛けには対応が遅れるんだよね。マンガでも、そのせいで誘拐犯に聖女さまを奪われていたし。


「おめでとう、マティルド嬢」

 輝く笑顔でジェラルド様が祝福してくれた。

「婚約者として、私も鼻が高いよ」

「ありがとうございます、王太子殿下」

 ジェラルド様がことあるごとに婚約者を強調するのはなぜなんだ。

 別に婚約解消されても、王太子陣営からは抜けませんから! 勝利するとわかっている陣営なんだから、そんなもったいないことはしません!


 でも、当たり前だが将来、王太子殿下が政争に勝利して王座に就くことを知っている者は、わたし以外いない。

 王太子側と第二王子側の勢力を比較すると、現時点ではまだ王太子側が若干不利だし。


 まず、王太子殿下には貴族の味方が少ない。目ぼしいところではラクロワ公爵家とミレー伯爵家くらいだが、この二家は魔術に特化した家門だから軍事力の面で不安が残る。特にミレー伯爵家は、自前の騎士団すら持っていない。

 ランドール様がその部分を補うとしても、それだけでは限界がある。最終的には王宮騎士団も王太子側につくけど、それはまだ先の話だし。

 炎の剣を創れるわたしが自陣に入ることで、戦力を増強できるとジェラルド様は踏んだんだろう。だから王太子殿下は、わたしを自陣に引き留めたいんだ。


 しかし、もしわたしの実家であるルブラン伯爵家の武力も当てにされていたら、それはちょっと難しいかもしれない。

 わたしとしても、勝馬である王太子側に実家が乗ってくれたらと思うけど、ルブラン伯爵家はケルテス辺境伯家の寄り子だからなあ……。


 ちなみにケルテス辺境伯家は現在、ルブラン伯爵家と同じ中道派だが、シモン様の代になると、ゴリゴリの第二王子派に方針転換する。来年入学する第二王子アンリ様とシモン様は意気投合し、王太子殿下に対して共同戦線を張るのだ。


 そういえばシモン様の姿がない。

 一応、シモン様も剣術の授業をとっているはずなんだけど、どこにいるんだろう。


 ジェラルド様は六年生男子の決勝戦を見学するため、女子を引き連れて移動して行った。わたしも誘われたが、シモン様のことが気になったので残ることにした。

 ブリジット様に「王太子殿下の誘いを断るなんて! 一緒に行きましょうよ!」と言われたが、就職活動に成功した今、死亡フラグであるシモン様の動向にも目を光らせておきたい。


「マティルド」

 周囲を見回していると、ランドール様がやってきた。


「優勝おめでとう」

「ありがとうございます!」

 わたしの勝ち方、どうでした? 王太子殿下の部下として、使えそうな感じでした?


 試験の結果を待つ受験生のような気分でランドール様を見上げると、

「ずいぶん腕を上げたな」

 ランドール様が微笑んでいた。

 おおお……、まるで聖女さまに向けていたような、優しさあふれる笑顔だ! わたしのパフォーマンスをランドール様も気に入ってくれたみたい。頑張ってよかった!


 とりあえず一安心。後はシモン様だが……。

 きょろきょろするわたしに、

「誰か探しているのか? ……王太子殿下なら、六年生の決勝戦を観に行かれたが」

「ああ、いえ……、その、そういえばシモン様も剣術をとられていたと思うのですが、お姿が見えないなあ、と」

「……兄上はあまり、剣術に興味がないようだ。今日の合同練習も欠席すると連絡があった」

「え、そう……、ですか」


 ケルテス辺境伯家は、腕自慢の荒くれ北部民の頂点に立つ武の名門だ。その跡取りが剣術に興味がないって、大丈夫なんだろうか。

 本人が興味を持てない分野を無理強いするのは良くないと思うが、そもそもシモン様は血筋を偽り、ランドール様から正当な権利を奪っている。そこまでしておいて「興味がないから欠席」はあんまりだと思う。せめて後継者として努力する姿勢くらい見せようよ!


 しかし、そうか。シモン様がいないなら、わたしも気楽に試合を楽しもうかな。

「ランドール様は? 三年生の決勝戦はまだなんですか?」

「俺は去年から、トーナメント戦の最終勝者と模範試合をすることになっている」

「え」

「建国記念祭に参加しないなら、トーナメントにも出る必要はないと判断された」


 ああ……、なるほど。

 もう皆、ランドール様が全学年ぶっちぎりで勝つのはわかっているから、試合を荒らさないでくれ、と。どうせ建国記念祭には不参加なんだから、優勝者としての栄誉は譲ってくださいってことか。


 真のスキル覚醒前なのに、この無双っぷり。さすがは『ソランの薔薇』で軍神と呼ばれただけはあるよ。


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