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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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47.ログハウスでお昼を


 翌日もコレット様は学院をお休みしていた。

 どう考えてもシモン様との婚約解消のせいだと思うが、その原因がわたしだということは……、多分バレてるんだろうな。

 あああ、マズい。なんとかしてコレット様に会って、誤解を解かなければ。いや誤解ってわけではないんだけど。

 とにかく、絶対にわたしはシモン様と結婚したりしない、とわかってもらわないと。


 ただ、コレット様がいなければ食堂でお昼をとる必要もない。

 お昼休みになると、わたしは念のため持参してきたお弁当を持って、学院の裏手にある森へ向かった。


 エミール様に教えてもらった建屋は、すぐ見つかった。

 学舎はすべて石造りだが、森の前にある建屋は小ぢんまりとしたログハウスのような見た目だった。


「失礼します」

 中に入ると、ふわっと食欲をそそるいい匂いがした。

 外観よりだいぶ広い空間だった。南側の壁にガラスをはめ込んだ窓がいくつもあるおかげで、暗さは感じない。大きな木製の長テーブルが中央にドンと置かれ、大きさも形もバラバラの椅子が並べられている。そこに学生が十数名、腰を下ろして昼食をとっていた。


「おう、本当に来たか」

 テーブルの中央に座っていたジャン様がわたしに向かって手を振った。隣のエミール様も「こちらへどうぞ」と椅子を引いてくれた。


「失礼いたします」

 エミール様の隣に座り、お弁当を広げる。いつもと同じ、黒パンにチーズに香草茶という質素なメニューだ。

「あの、マティルド様。よければスープを召し上がりませんか? あちらのスープは誰でも無料で食べられます」

 エミール様の遠慮がちに言い、部屋の奥を手で示した。


 見ると、部屋の奥には暖炉を利用した竈があり、そこに大きな鍋がかけられていた。その前に数人の生徒が並んでいる。いい匂いはあのスープだったのか!

「まあ、ありがとうございます!」

 いそいそと立ち上がって竈に行くと、エミール様も一緒についてきてくれた。


「そこに並べられている木製の食器は、誰でも使っていいことになっています」

 壁に取り付けられた棚に、大きさも形もバラバラな木製の容器が無造作に積み上げられている。わたしは深めの容器を取り、列に並んだ。


 スープはたくさんの野菜が煮込まれ、何とも言えないいい匂いがした。ちょっと肉が少ない気もするけど、まあ領地では毎日肉三昧だったし、ヘルシーでいいだろう。


 食前の祈りを光速で終え、わたしはさっそくスープに口をつけた。

「おいしい……!」

 えっ、これ本当にタダ? 学院の食堂にも負けないおいしさだよ!


「これが無料だなんて、なんだか申し訳ないですわ。どなたかの寄付ですの?」

「寄付っつーか、各自持ち寄りの材料で作ってるんだよ。建屋の裏はちょっとした菜園になってるし、森に入れば魔獣もいるしな」

「食器や家具も、代々ここを使用した学生が少しずつ増やしていったものなんです」

「へー!」


 学院は金持ち仕様になっているけど、貧乏でも団結すれば環境を改善できる。生活の知恵だな。ルブラン家の掟に通ずるものを感じる。


「素晴らしい取り組みですわね。わたしも魔獣を狩って、お肉を提供いたしますわ!」

「……まあ、あんたならできるだろうけどよ。狩りの時は一応、俺らに声を掛けろよ。付いてってやるから」

「あの、僕も薬草を採集するので、良かったらマティルド様も一緒にいかがでしょうか」


 ジャン様とエミール様の発言に、向かいに座っていた生徒が口を開いた。

「平民のクラスでは見かけないけど、君はもしかして貴族?」

「まあ……、はい、貴族ですけど、貧乏です」

 正直に言ったら、声をかけた生徒もジャン様も噴き出した。エミール様はけほけほと咳き込んでいる。


「あの、うん……、平民でも貴族より裕福な家もあるし、そこまで正直に言わなくても大丈夫だよ。貴族だからここを使っちゃいけないなんて決まりはないし」

「そうそう。平民を見下して奴隷扱いしたりすれば出禁だけどな」

「まあジャンが連れてきたなら大丈夫だろ」


 わいわいと楽しそうに話しながら食べる学生たち。

 あー、食堂よりもこっちのほうが居心地がいいっていうか、気楽だわー。



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