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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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43/58

43.社長と重役


 エルヴィス様とその友人たちはグチグチ文句を言っていたが、ロイド先生に一喝された。

「騎士を目指そうとするなら、試合結果に文句を言うな。何の不服があると言うんだ? マティルド君の馬術は見事だった。障害を一つも落とさず、誰よりも早くゴールした。結果を受け入れる度量を持て」


「しかし」

 わたしと競った陰口男が、憤然と言った。

「ルブラン伯爵令嬢は、僕の馬にわざと近づいて進路を妨害しました!」

「最初に君が斜行して、マティルド君の進路を妨害したからだろう。彼女は真っ直ぐ進んだだけだ」

「それは……、でも!」


「いい加減にしなさい」

 ロイド先生はため息をついた。

「これ以上、私を失望させるな。……君は何のために馬術を習っているんだ? 国民の範たる清廉な騎士となるためではないのか?」

 黙り込んだ男子生徒に、ロイド先生は厳しく言った。

「いいか、私の授業で騎士にふさわしくない振る舞いをした者は、容赦なく落第させるぞ。わかったな!」


 その後、ロイド先生の一喝に恐れをなしたのか、生徒たちは皆大人しく障害物競走に臨んだ。

 きれいなフォームで丁寧に障害を飛び越え、妨害もしない。

「ちょっとつまらない……」

 思わずつぶやくと、ジャン様が呆れたように言った。

「おまえ本当に貴族令嬢か?」

「ジャン、言い過ぎ!」


 わたしは肩をすくめた。

「わたしは北部出身ですので、例外と思っていただければ」

 ジャン様とエミール様は顔を見合わせた。あれ、あんまり知られてないのかな。

「ご存じありません? 血まみれゴードンや吸血ミシェル、勇者ベルゼンなど歴史に名を残す人殺しは、全員北部出身ですわ」

「その三人を一緒にするなよ……」

 ジャン様が疲れたように言った。


「……まあ、いいか。あんたのおかげで勝てたしな」

「ええ、これからもよろしくお願いいたします」

 頭を下げると、

「……あの、マティルド様もお昼を中庭でとられてましたよね?」

 エミール様が遠慮がちに言った。


「ええ、うちは貧乏なので」

「その、これからまた中庭で昼食をとるようでしたら、学院の裏手の森の前にある建屋にいらっしゃるといいと思います。そこは、学院の生徒なら誰でも利用できるんです。といっても利用するのは皆平民ですから、それでよければですが。これから中庭でお昼をとるのは、寒いと思うので……」

 へえ、そんな施設があったのか。

「ありがとうございます。機会があれば是非、使用させていただきますわ」

 毎日そっちに行きたいけれど、今日はコレット様と食堂予定なんだよなあ。残念。


 しかし、その後コレット様を迎えに行ったが、教室にコレット様の姿はなかった。

 着替えに手間取ったからもう先に行ってしまったのかもしれない。慌てて食堂に向かったのだが、そこにもコレット様はいなかった。


「マティルド嬢?」

 代わりに、なぜかジェラルド様と遭遇した。後ろにはランドール様もいる。

「王太子殿下」

 膝を折って礼をするわたしを、ジェラルド様が片手を上げて止めた。


「堅苦しい挨拶はいい。……私たちは婚約者同士なのだから」

 いたずらっぽく笑うジェラルド様に、ランドール様は驚いたようだった。

「婚約者?」

「ああ。先ほどマティルド嬢に婚約を申し込んだんだ。……承知してくれてありがとう、マティルド嬢。君が私の婚約者だなんて、幸せだよ」


 キラッキラの王子様スマイルがまぶしい。


「そのようにおっしゃっていただけて、恐縮です」

 まだ何の成果も上げていないから、そんなに喜んでもらえるとちょっと申し訳ない気がする。


 なんかランドール様の視線を感じるんだけど、どうしたんだろう。わたしが王太子殿下の陣営に入っても大丈夫なのかって心配されてるのかな。


 そのまま何故か、ジェラルド様とランドール様と一緒に昼食をとることになってしまった。まあ同じ陣営で働くなら、コミュニケーションは密にしたほうがいいだろう。今回もおすすめメニューを選択する。これが一番安い。


「あの、ランドール様。わたし、ユニーク魔術で炎の剣を作れるようになりました!」

 席につくなり、わたしは自分の能力をアピールした。ランドール様は王太子陣営の中でも最重要メンバーといっていい。ランドール様に認められなければ重要な案件には関わらせてもらえないだろうし、そうなったら手柄も立てづらい。


「炎の剣を?」

 思ったとおり、ランドール様が興味を示した。

 北部民にとって炎の剣は特別だからね!

「炎の剣は一度、サヴィニー伯爵が使うのを見たことがある。マティルドも使えるのか?」

「ユニーク魔術で作り出しただけで、まだ使ったことはないんです。一度、試してみたいと思っているんですけど」

「その時は俺も見学していいか?」

「もちろんです!」


 ジェラルド様が思案げに顎に手を当てた。

「あの炎の剣を使うなら、結界のしっかりしたところでないと危ないな。……使えそうな場所を魔術師団長に聞いておくよ。私も見学したいしね」


 なるほど。社長と重役による実技試験みたいなものだな。


「わかりました! ご期待ください!」

 はりきって言うと、何故かまたもやジェラルド様が噴き出した。片手で顔を隠し、肩を震わせて笑っている。


 ……ジェラルド様、笑いの沸点が低くないですか?


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