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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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39.魔術の評価


「『炎』」

 声とともに、ガブリエル様の目の前に巨大な炎の柱が出現した。

 すごい。

 生徒たちも呆然としている。


「合格です、ガブリエルさん。威力も制御力も素晴らしいわ、安心して見ていられます。A+を差し上げましょう」


 授業で課題が出されると、それに対してAからEまで評価が付けられる。Aが優、Bが良、Cが合格、Dが不合格、Eが問題外。さらに+や-が付くことで十段階の評価となる。


 ガブリエル様は最高評価を得たのか。さすがだ。


「さあ次は?」

 ではわたしも、と手を上げたが、

「……先生、次はわたくしにやらせてください」

 デルフィーヌ様が思いつめた表情で言った。

「そう? ではどうぞ、デルフィーヌさん」

 バベット先生は軽く言い、デルフィーヌ様が進み出て演壇の上に立った。


 今さらだけど、皆の注目を浴びながら魔術を披露しなきゃならないってメンタルが強くないとできないよね。

 魔術師になったら魔獣と戦うかもしれないし、国の求めに応じて戦場に立つかもしれない。そういった事態にも落ち着いて対処するために、これくらいで尻込みしていてはいけないってことなんだろうな。


 デルフィーヌ様は唇を噛みしめ、硬い表情で右手を掲げた。

「……『我が求めに応じ、清き雫の花を咲かせよ』」

 コォオオ、と放出された魔力が渦巻く音がする。おお、デルフィーヌ様もすごい。


 デルフィーヌ様の掲げた右手の前に、小さな水球がふよふよと浮かぶ。水珠は少しずつ変化し、可愛らしい花の形になった。

「……っ」

 だが残念な事に、水の花はすぐに形を崩し、パシャッと床に落ちてしまった。

「魔力の制御が乱れてしまいましたね。ですが、工夫が見られましたし発想は良かったですよ。デルフィーヌさんはBです」

「……ありがとうございました」

 デルフィーヌ様は真っ青な顔色で演壇から下りた。


 大丈夫なんだろうか。デルフィーヌ様の魔力保有量はあまり多くないから……。


「それでは、次はマティルドさんね」

「えっ?」

 えー……、この空気の中でやるんですか? ちょっとやりづらいなあ。


 なんか刺すような視線を感じるが、ここで落第点をとるわけにはいかない。

 魔法騎士になるために! 生き残るために!


 演壇に上がり、深呼吸して右手を掲げる。

 よし、憧れの勇者さまの剣をイメージして……。

「炎の剣を『創造』する!」

 すると、魔術師の塔で生み出したのと寸分違わぬ、紫色の炎に包まれた大剣が現れた。教室が一気に騒がしくなり、わたしのテンションも上がる。


 これだよ、これこれ、炎の剣! 勇者さまと同じ剣!


 わたしはウキウキと炎の剣を手に持ち、構えてみた。

「ちょっと待ってマティルドさん! その剣を振るうのはやめてね!」

 バベット先生が慌てたように言った。

「え、でも」

「でも、じゃありません。そんな剣を振り回されては、校舎が破壊されてしまうわ。マティルドさんはA+です。早く剣をしまって」

「はい……」


 せっかく出した炎の剣をすぐ消すのは、ちょっと残念だけど……、まあA+をもらったんだからいいか。

 わたしは剣を鞘にしまうイメージを浮かべ、炎の剣を消した。


「ちょっと待て!」

 ガブリエル様が大声を上げた。

「今、その炎の剣をどうしたんだ!?」

「え、どうって……、しまいました」

「しまったって、どこに!?」

 どこに、と改めて言われると自分でもよくわからない。


「えーっと、しまったんじゃなくて、消した? かもしれません」

 ガブリエル様は頭を抱えた。

「消した!? 消したというのか、あんな素晴らしい剣を!」

「あっ、大丈夫です、すぐ出せますんで!」

 わたしは慌ててもう一度、右手を掲げた。


「炎の剣を『創造』する」

 すると再び、あの紫色の炎をまとった大剣が現れた。


「ねっ? すぐ出せたでしょう?」

「……………………」

 ガブリエル様が呆然と炎の剣を見つめている。ガブリエル様だって剣に炎の効果付与ができるんだから、そこまで驚くかなくてもって思うけど。


 でも、フフフ、わたしの剣は大きいのに軽いしね! 魔力の消費が少ないスーパー魔剣だし、やっぱりわたしの炎の剣が一番カッコいい!


 クラスの生徒たちは「何だあの炎は!?」、「校舎が破壊されるって!?」と騒いでいたが、バベット先生が手を叩き、次の生徒を指名すると大人しくなった。


 そろそろ炎の剣をしまうか。でももう少し、見ていたい。ていうか使いたいなあ、と未練がましく炎の剣を眺めていると、突き刺すような視線を感じた。

「………………」

 デルフィーヌ様の取り巻き令嬢たちが、鬼のような顔でわたしを睨んでいた。デルフィーヌ様ご本人は、わたしを見ていない。真っ青な顔色でうつむいている。


 ……えええ……。なんかまるで、わたしが悪者みたいじゃないですか……。


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