表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/64

36.二人の求婚者


「この……っ、よくもこの僕に……!」

 シモン様が真っ赤になって怒鳴りちらす。


 ふーんだ。ぜんぜん怖くなんてありませんよーだ! 断ってもいいって許可をもらってるし、万が一シモン様に暴力を振るわれたって、わたしのほうが強いもんね!

 ……いや、暴力を振るわれても暴力で返しちゃいけないんだった。どうしよう、逃げたほうがいいかな?


「無礼な女め!」

 シモン様がつかみかかってくる。ひょいっとよけると、「よけるな!」と怒鳴られた。

 わたしだってよけずに投げ飛ばしたいけど、それはダメって言われてるからしかたないんだよ!


 それから何回もひょいひょいとシモン様の攻撃をよけていると、

「……何をしているのかな、マティルド嬢?」

 背後から声をかけられ、振り返った。


「王太子殿下……!」

 ジェラルド様が何とも言い難い表情を浮かべて立っていた。


 相変わらず朝から輝いている。シャンプー何使ってるんだろう。シモン様もわたしも似たような金髪なのに、ジェラルド様とは輝きが違うんだよね。


 思わず見惚れていたら、シモン様に殴られそうになった。慌てて横っ飛びに飛ぶ。

「おはようございます、王太子殿下」

 着地して淑女の礼をするわたしに、ジェラルド様が噴き出した。


「いったい……、っふ、何をやって……」

 ジェラルド様が苦しそうにお腹を押さえている。何となくわかってきたけど、ジェラルド様って笑い上戸なんだな。

「お見苦しいところをお見せして、申し訳ありません、殿下」

「いや、見苦しいとかそういう……。ケルテス辺境伯令息、か弱い令嬢に暴力を振るうのはやめたまえ」


 か弱い? とわたしとシモン様の声が重なったが、

「……とにかく、学院内での暴力行為は禁じられている。今すぐやめなければ、学院長に申し立てて罰則を科す」

「そんな!」

 シモン様が大声を上げた。


「悪いのはこの女です、王太子殿下! 僕はただ、この女に」

「ルブラン伯爵令嬢、だ。この女などと言うのはやめろ」

 ジェラルド様が冷たく言った。


「っしかし、このおん……、ルブラン伯爵令嬢は、僕の婚約者です!」

「婚約者?」

 ジェラルド様が顔をしかめた。

「そうなのか、マティルド嬢?」

「嘘です!」

 ここぞとばかりにわたしは主張した。


「たしかに昔、シモン様と婚約していたこともありましたが、十歳の時に正式に解消されました! 現在のシモン様の婚約者は、リヴィエール侯爵令嬢コレット様です! 正式な婚約解消もなく婚約者を他人にすげ替えるなんて、王国法に反する行為です!」

「きさま! よくもそのような……!」


 ジェラルド様がスッとわたしの前に立ち、いきり立つシモン様と対峙した。そして一瞬振り返り、不思議な……、何ともいえない表情でわたしを見た。


「……マティルド嬢の言うとおりだ。貴族の婚約については、王国法で詳しく定められている。それに則れば、ケルテス辺境伯令息の言い分は間違っていると言わざるを得ない」

「王太子殿下!」

「どちらにせよ、マティルド嬢は私の婚約者となるから、君とは婚約できない」


 ジェラルド様の言葉に、わたしとシモン様だけでなく、その場にいた生徒全員が動きを止めた。


「……えっ?」

 今、私の婚約者、って言った? えっ? どういうこと?


「マティルド嬢」

 ジェラルド様はわたしの前にひざまずき、そっとわたしの手を取った。

「初めて君に会った時から、私の心は君のものだ。……どうか私の婚約者になってほしい」

 ちゅっと軽く手の甲にキスされ、きゃあああ! と周囲の女生徒が黄色い悲鳴を上げた。


 え……? いったい何が起こってるの?

 王太子殿下の婚約はもっと後のはずだし、相手は平民の聖女さま……、いや、ちょっと待て!


 わたしは突然、天啓を受けたように閃いた。


 そうか!

 ジェラルド様は、色恋沙汰で婚約を決めるような御方ではない。必要ならば、平民であってもためらうことなく結婚する。そういう政治的判断をくだせる御方だ。

 ということは……、ジェラルド様は、わたしにそれだけの価値がある、と判断されたんだ。ここでシモン様を蹴散らし、自分の陣営に加えるためなら、大切な婚約者カードを切ってもいいと、そう考えてくださったんだ!


「ありがとうございます!」

 わたしはジェラルド様の手をぎゅっと握り返した。

「至らぬところも多かろうと思いますが、精一杯努めさせていただきます!」

 ぎゃあああ! とさっきとは違う怒りの声が女生徒たちから上がった。

 でも、わたしの心は高揚していた。


 あのシビアなジェラルド様が、わたしを味方にしてもいいって思ってくれたんだ!

 しかもそのために、大切な婚約者カードを切ってくれた。

 わたしのユニーク魔術を、そこまで評価してくれたなんて!

 おおお……、頑張ります! 絶対、後悔はさせません! このご恩に報いるべく、炎の剣でガンガン敵をやっつけます! 危なくなったら『逃走』を使って、御身をお守りいたします!


 やる気をみなぎらせるわたしを見て、ジェラルド様がおかしそうに笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ