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勇者と魔王が入れ替わったら世界が平和になった件  作者: 雪途 かす
第二章 古代の遺跡

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漆:魔王視点

 遺跡を囲む結界は、とても強固だったが、同時にかなり古い術式だった。

 それ故、一部縫い目を解くように、切り取って出入り口を作ることができたのは幸いだった。


 この吹雪の中、結界を張り直すにしてもこちらの魔力を消耗するのは得策ではないからな。

 それに、ずっと結界に守られてきた遺跡の町中は、外と比べ物にならないくらい暖かかった。一度結界を解いたらその瞬間に空気は冷え切ってしまうから、そうならずに本当に良かった。


 私は町に足を踏み入れ、レオンを守るために張っていた小結界を解除し、周囲を一瞥した。


「……さて、まずは入口に陣を張れ。拠点として、準備が整い次第、調査を開始する」


 私の指示に、調査隊の魔族達が素早くテントを張り始める。


「……レオン、少し休め。準備が整ったら私たちも調査に出るからな」

「あ、うん」


 レオンは大人しく、調査隊が広げた椅子の一つに腰掛けた。私もその隣に椅子をくっつけて座る。


 と、レオンが妙にしおらしいのが気に掛り、顔を覗き込むと、彼は小さく呟いた。


「……ヴェルは本当に凄いな……」

「うん?」

「結界を一部だけ解くなんて、初めて見た」

「ああ……まぁ、戦闘であれば敵の結界は破壊すれば良いし、こういった状況はそうないからな」


 結界の一部を解くなんて面倒なことをする機会は少ない。当然、そんな芸当にお目に掛る機会もそうないだろう。


「……レオンは何故そんな顔をしている?」

「え?」

「私には人間の感情というものがイマイチ理解できん……お前が不快な思いをしているように見えるが、その原因がわからん……気の利かない婚約者ですまんが、何か思うところがあるなら言葉にして伝えてほしい」

「っ!」


 レオンは真っ赤になって顔を伏せてしまった。


「……何でヴェルはその姿でも格好良いんだ……」

「うん?」

「何でもない……ヴェルは何も悪くないよ。俺がヴェルに対して不快に思ってることもない……これは俺の問題なんだ」

「……そう、か……」


 私のせいでないなら、それは良かった。

 そう思うのに、何だろうか、この不安のような、妙な焦燥感は。


「魔王様、調査隊の準備が整いました」


 イーダが声をかけてきたので、私は席を立った。


「うむ、では、お前達は調査班二つ、拠点での待機班一つに分かれろ。私はレオンと共に見て回る」

「魔王様の護衛は……」

「不要だ。イーダはフィーネとビスタと……ビスタはどうした?」


 視線を巡らせ、視界の範囲にビスタがいないこと気付いた。

 拠点の設営が完了しているため、作業している魔族の者もおらず、皆手を止めてこちらを見ている。


「あれ? ビスタ様、さっきまで、ここにいたよな……?」


 一部の魔族が顔を見合わせる。


 私は嫌な予感がしてイーダを振り返った。


「ビスタを探せ。調査班を一つにまとめて行動しろ……遺跡に罠がある可能性もある」

「承知いたしました」


 イーダが頷き、素早く指揮を取り始める。


「ヴェル、ビスタ殿は大丈夫なのか……?」

「ああ、あれでも私より長く生きている古代種で、魔王軍幹部だ。心配はいらん」

「で、でも……」


 レオンが言いたいことはわかる。

 そんな強い魔族が消えたのだからこそ心配なのではないか。


 それはそうだが、私にはビスタが何者かによって拉致されたり、罠に嵌ったようにはどうしても思えなかった。


 ビスタの魔力の気配が、まるで遮蔽魔法を用いたかのように全く読み取れないからだ。

 勿論、拉致や罠だった場合、その犯人が遮蔽魔法を使っている可能性もあるが、ビスタ程の魔法使いが、それを掻い潜って何の痕跡も残せないとは考え難い。


 私は周囲に視線を巡らせ、町の向こうに聳える塔に目を留めた。


「……あの塔が気になる。行くぞ」


 私は問答無用でレオンの腕を掴み、飛翔魔術を唱える。


「へっ? わっ!」


 慌てて空中でバランスを整えるレオン。流石は勇者だ。人間にしては身体能力がかなり高い。

 ものの数秒で塔の前まで移動し、着地した。


「……凄い塔だな」


 古く質素な石造りの塔だ。高さは魔王城の一番外側の城壁と同じくらいで、現代の建築物と比べたらそれほど高くはないが、この遺跡の古さを考慮すると、かなり高度な技術で造られたことが伺える。

 入り口に木製の扉があり、施錠されているようだが、物理的な錠であれば私の前では何の意味も成さない。


解錠魔法バセム


 扉の錠が開く音がする。


「……入るぞ」


 扉を開けて脚を踏み入れる。中には螺旋階段が上へ伸びていた。


「これを上るのか……」


 レオンが少々嫌そうに顔を顰める。


「……いや、階段は目眩ましだ」

「え?」


 私は一目でそれに気付いた。


 螺旋階段の一段目、そこに僅かな魔力を感じた。

 本当にごく僅か。まるで引き出しからはみ出した紙片のように。


 膝を折って触れると、端の石が動くことに気付いた。それを押し込むと、からくり箱のように、一段目と二段目が螺旋階段の中心側へ引き込まれるように横へずれ、その下にぽっかりと開いた穴が露わになる。


「すご、これ、隠し通路?」

「ああ。やはり、何かが隠されているらしい」


 穴の下には、上りと同じような石の階段が続いている。

 しかし、それほど深くはなさそうだ。


 手元に魔法で明かりを灯し、階段を下ると、私の背丈でぎりぎり直立できるくらいのところで底に着いた。目の前に扉があり、そこは施錠されていなかったので普通に押し開ける。


 と、その時、魔法による攻撃が発動したのを察知し、咄嗟に防御魔法を唱えた。


「……私に対して攻撃するとは、どういうつもりだ?」


 眉を寄せて、手元の明かりを部屋に投げ込む。

 ふわりと広がった明かりによって、右手を構えた術師の姿が浮かび上がり、それを私の後ろから見たレオンが声を上げた。


「ビスタ殿!」


 そこには、忌々し気な顔をしたビスタが立っていた。

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