表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

くねくねがメタバースに!?

VRクリエイターから直接送られてきた短いメッセージ。ログデータの先に添えられていたメモは、こうだった。


「あの奥に……白い“何か”が立っている。絶対にモデルデータには入れてない。なのに、いる。見た瞬間、気分が悪くなった。……そして、そこから、記憶が曖昧なんです」

ナズナは送られてきたセッションログを解析した。場所は市販VR空間のサンドボックス領域──ユーザーが視線をほとんど向けない“隅”。


そこでは、“何か”が揺れていた。関節のない身体を“水のように”ねじるように。異常は、「見た」瞬間から始まっていた。


背景が粒状に乱れる

アバターの肘が逆関節で固定される

音声フィードに不可解なノイズが走る

ログには何も残らない。だが、“体験した”という事実は、確かに存在していた。


──── ナズナの仮説:それは構造の“外”から来た

都市伝説の“くねくね”──田舎の川辺に現れる白い存在。共通点は「見てはいけない」。


ナズナはそれが「仮想空間」に現れ始めたことに、別の恐怖を感じていた。仮想空間とは、本来“誰かが作り上げる”事で成り立っている場所。その構造の“外”から侵入してきた何か──。


──── パラサイン:観測から逃れる儀式

ナズナは複数の被害者ログから、“共通波形”を抽出した。視認と同時に脳波が急変していた。


α波の消失

θ波の断裂

γ波の無秩序な上昇

一部ユーザーは、無意識に“数列”を唱えていた。


「1、1、2、3、5、8、13──」

フィボナッチ。自然の“均衡の揺れ”。

何故だ?何かの影響が間接的に数字を唱えさす結果となっているのか?


では、反対、もしくは無関係を唱えれば回避できるんじゃないか?対症療法的に


ナズナはこの“反対の波(もしくは無関係)”をパラサイン(逆相符号)と名づけた。


パラサイン儀式 ── 手順:

音声出力を完全シャットダウン

 パラサインを心の中で繰り返す(例:昔の記憶など、強い感情でありながら、正常な時期の記憶を想起したりする。今までの膨大な正常の無意識の積み重ねに、単発の異常は勝てないと仮定する)

“視界の端”にそれを置いたまま、意味を捉えない訓練を行う

意識を“それのいない空間”に移動させる

くねくねは“意味をつけた瞬間に”現れる。


──── 最後の記録:ナズナの語り

「もしかしたら、見たから壊れたのではない。

壊れてるから見るのだ、それを現実に引き戻す応急処置ってとこだな........」

「メタバースは、私たちの知覚の拡張。

そして、心やそれ以外の未知の揺らぎが映る“鏡”でもある」

「そこに現れる異形は、まだ名前を持たない何か。

観測とは、責任だ。見るならば、“見ることの意味”を背負いなさい。それが嫌なら好奇心で変な事には近づかない。安全と保障された道だけを進みなさい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ