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第39話 魔王 VS 黒雷剣 ③

 【狐今亭】の大座敷は、ヴァラクとの激戦で損傷が著しく、天井は崩れ月明かりがさしている。

 その月明かりに照らされながら、ヴァラクは恐ろしいほどの叫び声を上げ続けていた。

 

 『オオオおぉぉオオオ!!!……こんとンのぉぉォぉォオ!!!』


 地獄の底から響くかのような恐ろしい叫び声がヴァラクから発せられるたびに、ジョルジュの体が激しく痙攣している。


 ……一体何が起こっているっていうんだ。


 「ヤクモさん!!!見てください!黒い宝石が!!!」


 ローザの叫び声を聞き、黒い宝石の方を見るとそこにはヴァラクの叫び声に呼応するかのようにカタカタと震え出していた。

 それはまるで、新たな命を生み出そうと脈動している卵のようにも見えた。


 「なんやそれ!?けったいなもん早く破壊してまわんとあかんのとちゃうの!?」

 「いや、下手に破壊してしまうと何が起こるかわからない!」


 ここで判断を間違えると取り返しのつかないことが起こるような気がして踏ん切りがつかない。


 ヴァラクをこのまま破壊するのか、黒い宝石を破壊するのか、はたまた両方破壊するのが良いのか……



 くそっ!全然わかんねぇ!!!


 そうこうしているうちに、ひび割れだらけのヴァラクの刀身に再び黒雷が宿り始めた。

 それに伴い、ジョルジュの体も黒雷を纏い始める。


 「嘘だろ!?いくらなんでももう持たないぞ!」


 俺の言葉の通り、ヴァラクの刀身が、ジョルジュの体が、更に速度を増して崩壊を始める。


 『ヴァアアアアアアタァァアアアアアアアアシワワワアアアアアア!!!!!』


 もはやヴァラクの言葉は意味を成していない。

 そんな体でどんな攻撃を放ってくるのか、どんな攻撃がきても迎撃できるように集中する。


 『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


 「…………タスケテ」



 ……!?

 

 それは、ヴァラクの悲鳴に交じって唐突に聞こえてきたジョルジュの肉声。

 俺はその声を聞いた瞬間、驚愕のあまり一瞬硬直してしまった。


 その隙を逃さずヴァラクが動きを見せる。

 ヴァラクの刀身から黒雷が勢いよく放出された。

 今までとは違い、収束された光線のような黒雷だ。


 「……しまったぁ!」


 一瞬の不意をつかれた形になり、その黒雷に反応できなかった。

 その光線状の黒雷が向かう先には、もちろん黒い宝石がある。


 黒雷は宝石を貫き、跡形も無く消し去ってしまった。


 『……ヴァハハハァアア!こレで私ノ……シめィはァアア!!!』


 もうまともな声を出す力すら残っていないのだろう。

 崩れ行く刀身からは、ノイズ混じりではあるが、歓喜の叫び声が聞こえている。

 一方、所有者であるはずのジョルジュはその場に倒れ伏している。

 恐らく力尽きてしまったのか、ピクリとも動いていない。


 そして、一方では最も心配していた事態が起ころうとしている。


 黒い宝石が黒雷によって破壊された場所には、いつの間にか出現していた何かが蠢いている。

 その姿はまるで不気味な芋虫のようだった。


 「これは……一体なんだ?」


 その芋虫のような何かは、僅かながらピクピクと震えながら少しずつ膨れ上がっているように見える。

 最初は親指程度の大きさだったものが、手の平サイズくらいにはなっただろうか。

 俺の中に急速に嫌な予感が大きくなってきた瞬間――


 その何かがボンッ!と音を立ててサッカーボールくらいの大きさにまで一気に膨張した。

 蠢く肉の塊のような異様な存在となっている。


 「なっ!?」


 驚く間もなく、肉の塊から一本の触手のようなものが飛び出てくる。


 その触手が目指す先はヴァラクだった。

 勢いよく、ヴァラクを絡めとった触手は一気に本体に戻っていく。

 本体にヴァラクが近付いた瞬間、更に膨張しヴァラクに一気に絡みついていく。

 それはまるでヴァラクを吸収しているようだった。


 『ガアアアアァァァ!!!!そんナァ!ヤメロォォ!!!こんトンの邪シンニィイイイィイ!!!』


 ヴァラクを飲み込むべく膨れ上がった肉の塊は、ヴァラクの断末魔を無視するかのように、一気に吸収してしまった。

 あれだけうるさかったヴァラクの叫び声は吸収された途端に聞こえなくなり、辺りには肉塊が蠢く気味の悪い音だけが響き続けている。


 その肉塊の内部ではドクンドクンと脈動が続いており、何かが息づいているように見える。


 これはさすがに何とかしないとまずいだろうな。

 さっきから嫌な予感がビシビシと響き渡っており、全身から嫌な汗が噴き出し続けている。

 

 このまま待っていても埒が明かないので、俺はその肉塊を攻撃することにした。


 「〈ダークフレイム〉!!!」


 手の平を肉塊に向けて暗黒の炎を放つ。

 肉塊を炎が覆い一気に燃え盛る。

 このまま灰にでもなってくれれば……


 そう思っていたが、やはり甘かったようだ。

 突如、炎に包まれた肉塊がバァン!という音をたてて弾け飛んだ。


 一瞬、何が起こったかわからなかったが、肉塊の中から何かが飛び出したということだけは理解できた。

 


 ……その肉塊から飛び出した何かは人の形をしているようだ。


 「お、お前は……」


 というか、俺はその人の形をしている何かに対して、見覚えがある。


 「どうしてこんなところにお前がいる!!!」


 何故そうなるのか、俺には全く理解できなかった。

 何をどうやったらこんなところに魔人が出てくるのか、俺は色んな可能性に考えを巡らせるが、残念ながら正解にはたどり着けない。


 「……アシュタリテ!!!」


 それはアランドラでのスタンピードを操っていた黒幕の一人――



 魔人アシュタリテだった。



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