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第8話 新たなる出会い

 階段を降りると地下41階と同じ様な光景が見えた。

 見た感じ、幾分木々の割合が少ないかな?というくらいの違いしかわからない。


 しばらく木々の間を進んで行くと早速ゴブリンが出現した。


 全部で四匹、それぞれ棍棒や手斧で武装している。

 

 「早速お出ましか!〈ダークアロー〉!」


 手早く〈ダークアロー〉を発射しながら、剣を抜きそのまま切りかかる。

 〈ダークアロー〉に貫かれたゴブリンが粒子となる頃には、残り三匹も剣撃によって崩れ落ちていた。


 「ふう、もう負ける気がしないな」


 粒子と化して消滅して行く残りのゴブリンを見ながらご機嫌で呟いた。


 しばらくゴブリンを狩りながら先へ、進んでいくと周囲の風景とは似付かわしくない物が出現した。


 少し開けた場所に土が盛ってあり、その土に木の棒が突き刺さっている。

 そんな物が四つも出現した。


 「これは……ひょっとして墓か?」

 まさか……ゴブリン達に仲間を弔う文化等、ありはしないだろう。


 「シオン、これは何だかわかるか?」

 「いいえ、わかりませんが……魔王様にはわかるんですか?」

 「多分だが、これは誰かが作った墓だと思う」

 「お墓ですか!?まさか……有り得ませんよ」


 そうだよな。モンスターが墓を作るとも思えないし、以前にこのダンジョンを訪れた冒険者が作ったのかな?……いや、違うな。

 よく見るとお墓の様な物には、小さな花が添えてある。しかも枯れていない。

 ということは、誰かが最近このお墓の様な物に花を供えたということだ。


 「誰か人間がこのダンジョンに住んでいる可能性はあるか?」

 「いいえ、私が知る限りそんな情報は入ってきていません」


 ……ますますわからなくなった。


 「じゃあ、ゴブリン以外のモンスターがこのフロアに存在する可能性は?」

 「無いとは言いませんが、基本的にゴブリンは群れを作ると、恐ろしく排他的になってしまってすぐに、自分達以外を全滅させようとするんです。なのでゴブリンが根城にしているフロアは基本的にゴブリン達以外はほぼ出現しないはずなんですが……」

 「じゃあ、この墓はゴブリンが作ったということか……そんな仲間想いのゴブリンがいるなら会ってみたいもんだが、それこそ有りえるのか?」

 「まさかぁ、そんなゴブリンがいるのなら一度会ってみたいもんですよ」


 シオンの軽口を聞きながら、色々な可能性を考えたが現状では答えは出なかった。仕方なく先に進む事にした俺達は、もっと驚くべき光景を見ることになる。


 墓の様な物を後にしてしばらく進むと、何やら騒がしい声が聞こえてきた。

 どうやらこの先で何者かが戦闘をしている様だ。


 「何だ!?先を急ぐぞ!」

 「はい!魔王様!」



 シオンと共に急いでその騒ぎの元に走っていくと、木で作られた小屋の様な物がいくつか現れた、集落の様にも見える。


 その小屋の周囲に作られた木製の柵を挟んでゴブリンと何者かが戦闘をしているのが見える。



 「片方はゴブリン達だな、えーと全部で五匹いるな。戦っている相手は……いや、相手もゴブリンじゃないか!?」


 柵の外側から集落に侵入しようとしているのがゴブリン達だ。そして、その内側からゴブリン達の侵入を防ごうとしている者も……ゴブリンだった。


 「ゴブリン同士で戦っているのか?どういうことだ?」

 「私にもさっぱりです……」


 シオンにもさすがに理解できないらしい。

 そうこうしている内に柵の内側にいたゴブリンが剣を抜き、相手側のゴブリン達に切りかかった。

 瞬く間に切り伏せられ粒子となって行く集団のゴブリン達、剣を持ったゴブリンは並のゴブリンより遥かに強力な力を持っている様だ。


 一瞬で勝負をつけた剣ゴブリンは集落の方に戻ろうとするが、そこに俺たちが声を掛けた。


 「どうもー、魔王ですー」

 「どうもー、そのお供ですー」


 「何ダ!?貴様ラ……何者ダ!?」


 敢えてフレンドリーに声を掛けてみたら何とかなるかと思ったが、何とかならなかった。

 謎のゴブリンは剣を構えて今にも襲い掛かってきそうな気配だ。



 ……ん?今、こいつ言葉を話さなかったか!?まさか、人語を話すゴブリンなんて存在するのか?


 「何者ダト聞イテイル!」

 「待て、俺はヤクモ、えーと……何ていうかその……魔王だ」


 俺はもう一度、ゆっくりと自分の素性を明かした。


 「魔王?魔王ダト!?魔王ガコンナ所デ何ヲシテイル?」

 「うまく説明するのは難しいが…とりあえずお前と敵対するつもりはないことだけは言える」

 「本当カ!?嘘ヲツクトタダデハ済マサンゾ!」


 やはり相当殺気立っている、俺は両手を上げて敵意が無い事を伝える。


 「いくつか質問しても良いか?ここは一体何なんだ?この建物を作ったのもお前か?」

 「ソウダ。モシオ前ガ、ココニイル同胞達ヘ危害ヲ加エル目的ナラバタダデハ済マサンゾ!」


 同胞だと?謎のゴブリンは何かを守っているのか?

 その時、建物の中から数体のゴブリンがぞろぞろと出てきた。

 しかし、そのゴブリン達は今まで倒してきたゴブリン達とは明らかに違う。

 子供や女性のゴブリン…十名程だろうか。皆一様に不安そうにこちらを見つめている。


 「魔王様、あのゴブリン達、子供や女性ばかりですよ!」

 「ああ、そうだな。あのゴブリンはこの場所で非戦闘員達を守っているってわけか……」


 謎の剣ゴブリンの思惑が見えてきたので、俺は両手を上に挙げて敵意が無いことをアピールする。



 「そちらが手を出さない限りはこっちから危害を加えることは無いから安心してくれ」

 「……ソウカ、ソウシテモラエルト助カル」


 アピールが通じたのか、幾分謎のゴブリンの警戒心が薄れた様に見える。


 「お前は、ずっとこの集落を守っているのか?」

 「アア、ゴブリンノ群レハ、弱キ者ニハ生キルノハ厳シイ、ダカラ我ガココ二匿ッテイルノダ」


 なるほど、少し合点がいった。ということは、先ほどの墓もこいつらが……?


 「この先にあった墓もお前たちが作ったのか?」

 「墓?アア、我ラガ作ッタモノダ」

 「あの墓は四つ作ってあった、お前達の仲間の分か?」

 「イイヤ、アレハ、コノダンジョンデ全滅シタ人間達ノモノダ、通リガカッタ所二死体ガ転ガッテイタカラ不憫二思ッテ埋葬シテヤッタマデダ」


 話を聞いて驚いた、ゴブリン同士で争っている事、弱者を守るゴブリンがいる事、更に冒険者を弔うために墓まで作るゴブリンがいる事、全てが規格外だと言える。


 「シオン、見えるか?ここにいるのがお前が会いたがっていたお墓を作るゴブリンさんだ」

 「いやー、私もちょうど会ってみたいと思ってたんですよーって、嫌みを言わないで下さい!」


 シオンには目の前の光景が理解できないらしい。

 より詳しく話を聞かせてもらったが、やはりこの謎のゴブリンは俺達が今まで戦ってきたゴブリン達とは全く違う生き物と言っても可笑しくない様な行動を取っていた。


 まず、ゴブリン達は基本的にはダンジョンの瘴気によって勝手に増えて行くが、ほとんどは男性の大人の個体……つまり戦闘要員が生まれてくるらしい。

 しかし、極々稀にではあるが、女性や子供等の個体……非戦闘要員が生まれてくることもある。

 ゴブリン達はこの非戦闘要員に対して守ろうなんて意識も無く、戦闘が出来ない分、迫害し群れから追い出してしまうらしい。


 群れから追い出されたゴブリンは、戦闘要員のゴブリン達に気紛れで殺されてしまったり、他の魔物に襲われる等、まず生きていけない。

 そこで、この謎のゴブリンは、群れを追い出されたゴブリン達を集め、集落を作り守り続けていたとの事だ。


 「いや、驚いたな……」

 「本当に、さすがの私もビックリしましたよ」

 「あの凶暴なゴブリンが、こんなに仲間を思いやる行動を取るなんてな」

 「私も本当に信じられないです……何らかの原因で通常とは異なる進化を遂げたとしか……ん?待てよ……魔王様!あのゴブリンを鑑定してみて下さい!」


 シオンは、何か心当たりを思い出したらしい、シオンの言う通りに〈鑑定〉を使用してみる。


 名称:ゴブリン・ソードマン

 ランク:D

 HP  : 213/213

 MP  : 144/144

 攻撃力 : 145

 防御力 : 124

 魔法力 : 0

 素早さ : 134

 スキル :剣術〈Lv3〉

      剣王の資質

 眷属化成功率 : 100%


 ……強い!このゴブリンはそこら辺にいるゴブリン達とは比較にならない程の強さを持っていた。

 剣術スキルもレベル3まで上がっている。恐らく仲間を守り続けて他のゴブリン達と戦い続けた結果だろう。


 それよりも目を引くのが、〈剣王の資質〉と言われるスキルだ。『NHО』でも見たことが無いスキルだ。

 詳細を見てみると……


 剣王の資質 : 剣を究める可能性を持ち、神に選ばれし者に発現するスキル、王の資質に相応しい才覚を得る。このスキルを持つ者は、魂の共有(ソウルシェアリング)の成功率が100%となる。

 

 やはり、このゴブリンの行動は、このスキルの影響が出ているためか。

 しかもこのスキルの効果で魂の共有(ソウルシェアリング)の成功率が100%になるだと?


 「シオン、何だこのスキルは?知ってるのか?」

 「はい、一応神様より救済措置の一つとして、この様なスキルを用意しているとは聞いていました、しかしまさかゴブリンに付与されているとまでは思いませんでした」


 なるほど、このスキルは神様なりの救済措置なのか、この様な形で強力な仲間を獲得しやすい様に、様々な魔物にスキルを付与しているということか。


 ということは、このゴブリンを眷属化するかどうか決めなければならない。


 ……とは言え、俺には既に結論は出ていた。



 「なあお前……俺の仲間にならないか?」

作品をご覧頂きありがとうございます。評価&ブクマありがとうございます!


現在、第一部終了まで書き溜めてあるので、しばらくは毎日更新を続けさせて頂きます。

評価を付けて頂けると本当に嬉しいです。

ブックマークも心の底から喜びますので、どうぞよろしくお願いします!

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