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第34話 黒剣の脅威

 【狐今亭】大座敷


 日も沈みすっかり夜も更けてきた頃、【狐今亭】最大の大きさを誇る畳の間に二人の人物がいた。


 玉藻とローザである。

 

 「まあ、お茶でもどうぞ」

 「ええ、いただきます」


 ヤクモとガオウはさっきと変わらず地下牢に閉じ込められている。

 玉藻は先程の地下牢で聞いた話の真偽を確かめるために、人質であるローザと話をすることにしたのだ。


 「……まどろっこしいのは嫌やからなぁ、単刀直入に聞くで?あんたはほんまにバルバロッサの部下ではないんやな?」

 

 ローザへ質問した玉藻の表情はかなり険しいものとなっている。

 切れ長の目がしっかりとローザを捉え、鋭い眼光を送っている。


 「はい、今の私はバルバロッサとは全く関係ありません」


 ローザも負けじと玉藻の顔を真っすぐ見据えてしっかりとした口調で答える。


 玉藻はその回答を聞きながらも、ローザの顔をじっと見つめ続ける。


 「…………そうかぁ、まあそれならええよ」


 「……?やけに素直に私の言うことを信じるのですね?」

 「んー、あかんか?それともやっぱり嘘をついてるとでも?」

 「いいえ、でもちょっと不思議に思ったので……」

 「まあ、うちの得意技の一つやな、何か知らんけど、相手の言うてることが本当か嘘かがなんとなくわかってしまうねん」

 「そうなんですか?それは便利な特技ですね」

 「まあなぁ、さっきも地下牢であんたの連れと話したけど、やっぱり嘘はついとらんかったわ」


 先程のヤクモとガオウとの問答の中で、玉藻は二人が嘘をついていないのをしっかりと見極めていた。

 そして、念のためローザの方にも嘘をついていないのか、確認しにきたのだ。


 「それにしてもあの有名な〈異界送り〉のローザが、実はバルバロッサのことを憎んでるとはなぁ、いやぁやっぱりわからんもんやなぁ」


 玉藻はそう言いながらニヤリとほくそ笑む。


 〈異界送り〉のローザと言えば、バルバロッサの懐刀として、ベルンハイム王国内ではかなり有名な人物だ。

 その有名人が自分の目の前にいる。

 しかも、主のはずのバルバロッサのことを憎んでいるときている。


 玉藻は、面白い手駒が手に入ったかもしれないと、心の中で更に邪悪に微笑んだ。


 闇社会に生きる自分にとって、手札は多ければ多いほどが良い。

 ローザと一緒に【狐今亭】へやってきたヤクモとかいう魔王も相当面白い手駒と言えるだろう。


 何やら、自分に『仲間にならないか?』なんて聞いてきたが、即決で断ってやった。

 仲間なんていう存在なんて自分には必要ない。

 敢えて言うならば、この【狐今亭】で共に働く部下たちだけで十分だ。


 「よし、まあええわ、地下の奴らも連れてきたるさかいに待っときなぁ」


 玉藻が手をパンパンと叩くと、襖が開き部下が姿を現す。


 「地下の二人も解放や、一旦ここに連れてきぃ」

 「はっ、わかりました!」


 玉藻の部下が地下牢へ向かう。

 

 「さてと、あんたも再会の準備をしとき……」


 その時、【狐今亭】の入り口の方面から爆発音が鳴り響いた。


 「敵襲!敵襲だぁぁぁ!!!」

 「な、なんやぁ?」


 突如響いた轟音を合図に事態は風雲急を告げることになる。



 ◆◆◆◆


 【狐今亭】玄関口


 

 時間は少し遡り、ローザと玉藻が会話を始めた頃……


 【狐今亭】の玄関では玉藻の部下たちが見張りを務めていた。


 「あーあ、暇だよなぁ」

 「こらこら、しっかりと見張ってないと玉藻様にどやされるぞ」


 玄関の見張りは二人。

 【狐今亭】では違法な賭博が開かれているため、その見張りも当然腕っぷしに自信があるものが務めている。

 現在の見張りを務めている二人も、玉藻の部下の中では上位の実力を誇るものたちだった。


 「くそう、こんだけ暇だったら何か事件でも起こってくんねぇかなぁ?」

 「おい、縁起が悪いことばかり言うんじゃねえよ」

 「ん?あれ?今あそこで何か光らなかったか?」

 「おいおい、もう良いって、いい加減ふざけすぎだぞ」


 その瞬間、黒い雷光が周囲を駆け巡り、見張りの二人を貫いた。

 二人は、一瞬で丸焦げになり絶命してしまった。


 二人が息絶えたの後に、闇夜から漆黒のマントを羽織り、黒剣を携えた人物が現れる。


 ……ジョルジュだ。


 相変わらず無表情ではあるが、口元は相変わらず何かを呟き続けている。


 「コロス……」


 そこへ先程の騒ぎを聞きつけた他の見張りたちが駆けつけてくる。


 「一体どうしたんだぁ!?」

 「ああ!?二人ともやられてやがるじゃねえか!?」

 「お前の仕業かぁ!?一体どこのもんだこらぁ!」


 ジョルジュの姿を見つけた見張りたちが、すぐに戦闘態勢に入る……が。


 すぐにその合間をすり抜けるようにジョルジュが駆け抜ける。

 もちろん、すれ違い様に鋭い斬撃を見舞いながらだ。


 ジョルジュが駆け抜けた後に、見張りの男たちの体から鮮血が迸り、それぞれ悲鳴を上げながら息絶えていった。


 ジョルジュはそのまま夢遊病者のような足取りで【狐今亭】の中へ入っていく。

 何かに導かれるようにフラフラと進むその先には……


 ローザと玉藻がいる大座敷が存在していた。

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