第33話 遠慮しとくわぁ
「あの……聞き間違いだったかもしれないから、もう一回聞くぞ?……俺たちの仲間にならないか?」
「いやぁ……遠慮しとくわぁ」
「何でだよ!?絶対に仲間になりそうな流れだったろう!?」
玉藻が〈炎王の資質〉を持つ仲間候補だとわかり、意気揚々と勧誘をしたのだが、あっさりと断りを入れられてしまった。
……いやいや、そんな展開予想してねぇよ!
「一体どうして!?」
「んー、そやなぁ、あんたやっぱり魔王なんやろ?面倒ごとに巻き込まれるのはごめんやからなぁ……それに……」
「あんたがベルンハイム騎士団の犬っていう可能性も捨てきれんしなぁ」
「一体それはどういうことだ?そんなはずは無いだろうがぁ!」
玉藻の口から出てきた意外な言葉に反応してしまう。
いくらなんでもバルバロッサの手下と思われるは心外すぎるぜ!
「でもなぁ、あんたが連れてきたあの女の子やねんけどな、あれ〈異界送り〉のローザやろ?何でバルバロッサの秘蔵っ子をあんたが連れまわしとんのや?」
「そ、それは訳アリなんだがなぁ……」
俺は玉藻に何故ローザと行動を共にしているのか必死で説明した。
「……ふうん、何か怪しいけどなぁ」
「いや、だから誤解だって!ローザもバルバロッサに家族を人質に取られて無理矢理従わされてただけなんだからな!」
「まあ自分では何とでも言えるわなぁ」
俺は必死でローザを弁護するが、玉藻はあまり信じていないように見える。
……ちくしょう、一体どうやったら信じてもらえるんだ。
「魔王様の言ってることは本当だぞ!何故信じないのだ!?」
「うるさいなぁ、ギャンブル狂の脳筋は黙っとれや」
「ギャンブル狂だとぉ!?訂正しろぉ!」
……脳筋は良いんだな。
この後、ガオウも交えて、俺と玉藻の押し問答は果てしなく続くことになるのだった――
◆◆◆◆
インヴェルノ、とある裏道
そこは普段、ならず者たちが集団でたむろしている場所だ。
今日も複数人が馬鹿騒ぎをしていた。
「ギャハハハ!!!お前また負けちまったのかよ!!!」
「うるせぇなぁ!もう少しで勝てたのによぉ!」
「お前はそればっかりだなぁ!でもどうするんだ?これでもう一文無しなんじゃないのか?」
「……ああ、どうすっかなぁ?もう今日の晩飯すら買えねぇよ」
「馬鹿じゃねぇの!?……まあ、金が無いんだったらまた適当に強盗でも空き巣でもすれば良いじゃねえか!」
「ああ、そうだな!そうすりゃぁまたカジノで遊べるぜぇ!!!!」
お世辞にも身なりが良いとは言えないならず者たちが、下品な言葉使いで笑い合っている。
彼らは、普段【狐今亭】の裏賭博場に入り浸っている。
もちろん仕事はしておらず、犯罪に手を染めながらその日暮らしをしているような連中だ。
その彼らが、日銭欲しさにまた罪を重ねる相談をしているところに、とある人物が近付いてきた。
「あん?何者だてめぇ?」
ならず者の一人がその存在に気付き、声を掛ける。
マントのような黒い布を頭から被っているため、顔は見えない。
しかし、その人物は歩みと止めることなく、ならず者たちに近付いていく。
「お、おい!止まれこらぁ!」
「止まらねぇとただじゃおかねえぞ、こらぁ!!!」
その人物の挙動が普通ではないことに気付いたならず者たちは、次々に武器を構え始める。
あるものはナイフを、あるものは剣を取り出し、その人物に向けて威嚇を続けるが……
その人物は止まらない、もはやならず者たちの目の前に迫っている。
「もう知らねえからなぁ!」
「死ねぇぇ!!!」
痺れを切らした順に武器を振りかぶりその人物に次々と襲い掛かるが……
「……ろす」
顔を覆う黒い布からわずかに覗いた口元が何かを呟いた瞬間――
一番最初に斬りかかったならず者が上半身と下半身に胴体から切断されてしまった。
日があまり差さない裏道に鮮血が舞い散る。
その様子を茫然とした様子で見つめていたならず者たちは、最初は何が起こっているかわからないと言った表情をしていたが、やはて仲間が一撃で殺害された事実を理解し、悲鳴を上げ始めた。
「ギャアアア!!!!人殺しィィ!!!」
「やばいぞあいつ!逃げろぉ!!!」
「し、死にたくねぇぇ!!!」
背中を向けて一目散に逃げだす男たち。
その口からは先程までの威勢はどこにいったのか。
情けない悲鳴ばかりを喚き散らしている。
正に阿鼻叫喚の風景と言えるだろう。
逃げ惑う男たちを一瞥した黒マントの男は懐から真っ黒な刀身をした剣を取り出す。
そのまま黒剣を頭上に構えたかと思うと再び何かを呟いた。
その瞬間、刀身から黒い稲妻のような光が解き放たれ、八方に散っていた男たちを貫いた。
「ガアア!?」
「いてぇぇぇ!!!」
「グハァッ!!!」
それぞれ断末魔を上げながら息絶えていく男たち。
その中で運よく当たり所が良かったのか、生き延びたのは一人だけだった。
「ううう、いてぇよぉ……」
唯一の生き残りの男だが、黒い稲妻に足を貫かれ、全く動けなくなっていた。
そこへ、黒マントの男が、黒剣を携え近付いていく。
「うう、悪かったよぉ、謝るから命だけは助けてくださぃぃ」
無様に命乞いをしているが、その声が届いていないのか、黒マントの男は変わらず何かを呟き続けている。
「……す」
「……はい?何ですか?」
「……す、……ろ……」
「……!?何を……」
男は黒マントの男の擦れた声を聞き取ろうとする。
しかし、その声を聞きとれた瞬間が男の命の最後になるとは思わなかった。
「ころす……」
「ええ!?」
「ころすころすころすころすコロスコロスコロス!!!!!」
「ううう、うわぁぁぁぁぁ!!!!」
「ロスロスロスロスゥゥゥゥゥゥうっぅううウウウウ!!!!!!!!!」
その瞬間、黒剣で脳天から両断され、唯一生き残っていたならず者の男は息絶えた。
全力で剣を振り下ろした余波で黒マントが捲れ、顔が露わになる。
その顔は、頬はこけ、目は虚ろになっていて、口からはだらしなく涎が垂れている。
以前とは似ても似つかぬ表情に、その男を知る者は間違いなく驚嘆するだろう。
黒剣を携え、狂気を露わにするその男は――
ベルンハイム第二騎士団長、ジョルジュだった。
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