第30話 意外な再開?
玉藻は相変わらず笑顔を崩さない。
笑顔は崩れてはいないが、先程と比較してこちらに与えてくるプレッシャーはどんどん増加している。
「ほんまに嫌やわぁ、人のことを魔物呼ばわりなんて……こんなうら若き乙女をとっ捕まえて何を言うてはるんやろかぁ」
あくまで白を切るつもりらしく、白々しい態度を取り続けている。
……そんなもん、〈鑑定〉を使えば一発なんだけどな。
「ふん、そんな態度を取ってられるのも今だけだろうに、さあお前の正体を見せろ!〈鑑定〉!!!」
玉藻に向かって〈鑑定〉を使用する。
これであいつの正体も見事に暴かれ――
「……何だ?結果が表示されない?」
なぜか〈鑑定〉の結果が表示されない、何かの間違いかと思い、何度か試してみたが、ことごとく失敗してしまった。
「またまた、人のプライバシーをのぞき見してからに……ほんまにいけずやわぁ」
玉藻は余裕たっぷりの態度を崩していない。
「馬鹿な!?バルバロッサですら〈鑑定〉できたんだぞ?シオン、どういうことかわかるか!?」
『魔王様、恐らく〈鑑定〉を阻害する専用のスキルを使われていると思われます」
九大英雄のステータスすら見ることができたのに、それが通じないなんて……
確かに『NHO』でもこちらの〈鑑定〉を阻害してくる魔物は存在した。
しかし、それはもっと上のランク、Aランク以上の魔物と戦う段階で初めて遭遇するようなスキルだった。
そのスキルを持つ魔物とこんなところで出会うなんてな。
「こうなったら実力行使しかないか……」
「ええー、まさかこんなか弱い女性に暴力を振るうとか言うんやないやろなぁ?怖いわー、悪逆非道やわー」
玉藻の声を聞いていると何だか調子が狂うな。
戯言には耳を貸さずにさっさと斬ってしまうに限る。
俺は剣を抜き、玉藻に向かって行こうとしたが――
「はい!そこまでー!皆のもの!出てきーやー!」
玉藻の合図で襖がスパーンと開き、さっき倒したような暗殺者みたいな風貌をした人物が何人か入って来る。
そして、その中の一人が拘束されたローザを連れているのを発見してしまった。
「な!?」
「はいはいはいはい、あんたが手を出すならこの子の命はないでー」
しまった……
今思えば、同じ宿の別の部屋にいるはずのローザのフォローを一番に考えるべきだった。
暗殺者が狙っているのは俺だけだろうと高を括っていたのが運の尽きだな。
「ヤクモさん、すいません……私、いきなりこいつらに……」
ローザが泣きそうな顔をしているが見る限り怪我はなさそうだな。
こうなっては仕方ないか……
「武器は捨てるから、ローザを解放してやってくれるか?」
俺はそう言いながら剣を床に置く。
「殊勝な考えやなぁ、後スキルの使用も禁止やで?スキル使った瞬間、あの子がどうなるかわからんよ?」
「わかってるよ、だけど逆にローザに何かあった場合は……覚悟しとくんだな」
俺は威圧をたっぷりと込めながら周囲の暗殺者共々、玉藻を睨み付ける。
暗殺者たちは恐怖のあまり震えながらたじろいでいたが、玉藻は全く影響を受けていないかのよういニコニコと笑顔を崩さないでいた。
「あはは、そんな怖い顔をしても無駄やでー、とりあえずあんたは地下牢にでも入っててもらおうかいな、あっ、逃げようとしても無駄やで。その瞬間、この子の可愛い顔が見るも無残に変わり果てるさかいなぁ」
やはりローザは人質のままか。
一緒に牢に入れてくれたらその瞬間、牢をぶち破ってやったのに。
恐らく玉藻はそこまで読み切っているのだろう。
「そんじゃぁ連れて行きー、この前、借金まみれになって暴れくさった脳筋もそろそろ大人しくなってるやろうけど、一応気を付けるんやで」
玉藻の言葉に一筋の不安が心をよぎった気がするが気のせいだろう。
俺は暗殺者たちに地下へ連れていかれる。
ここで暴れればすぐに脱出できるのだが、ローザを人質から解放するまではそれも不可能だ。
「……よし入れ!」
俺は手枷をはめられ、地下牢にぶち込まれる。
手枷自体は大した強度ではないため、力を込めればすぐに破壊できる。
しかし、手枷の鎖の部分に妙な勾玉のような装飾が付いているのを俺は見逃さなかった。
これは多分、イストの鳥居と同様のものだろう。
手枷を破壊した瞬間、玉藻に感知されてしまう可能性が高い。
それに地下牢も特別製だ。
牢自体が朱色の格子で出来ている。
これも鳥居や手枷の勾玉と同じ原理だと見て間違いないだろう。
「ちょっと厄介だな……」
脱出自体はそこまで難しくないが、ローザを人質に取られてしまったことが痛すぎる。
かといって見捨てるわけにも行かないため、全く打つ手がないのが現状だ。
「さて、どうしたもんかなぁ……」
ジタバタしても仕方がないので、牢に設置されている粗悪なベッドに腰掛ける。
そういえば、さっきから気になっていたが、隣の牢にも誰か入れられているようだ。
気配がするのと、熟睡しているのかさっきから豪快なイビキが響いている。
俺が牢に入れられる時からずっと響いているので、余程深く熟睡しているのだろう。
「誰か助けにきてくれたりしないかな?」
俺は仲間たちのことを考える。
ローザの感知が確かならばこのインヴェルノにも仲間が一人転移させられているはずだ。
その仲間が助けに来てくれれば渡りに船なんだがなぁ……
ラセツであれば、俺との連携で何とかこの場を切り抜けられるかもしれない。
コダマの場合も、コダマの防御でローザを守ってくれれば何とかなるだろう。
リンネであれば、回復魔法を使えるのでいざという時にローザを助けてくれるだろう。
オボロがいれば、ひょっとしたら一番適任かもしれない、影に潜んでローザをすぐに解放してくれそうだ。
このうちの誰か一人がいればこのピンチを切り抜けられるだろう。
うん、何とかなりそうだな……何とか。
俺は出来る限りポジティブな考えを頭に浮かべるが、その間にも隣の牢から大きなイビキは鳴り響き続ける。
何だろう、さっきからこのイビキを聞いていると、胸がザワザワするんだが……
何というか不安感を煽るというか……
俺は心に残った一抹の不安をどうしても除去できないでいた。
……いや、そんなはずはない。
そうであって欲しくない。
しかし、このイビキを聞いている内に俺の不安が確信に変わりつつあるのだ。
まさかなぁ……
隣の牢屋にいるのって……
俺は観念するかのように思い切って声を掛けてみる。
「あのー!すいませーん!!!お隣さん!起きてください!!!」
力の限り、隣の牢屋で眠っている何者かに向かって呼びかけてみる。
俺の推理が正しければ、この後の展開は……
「ぐごぉぉーっ!!!……んん!?この声は……魔王様かぁ!?」
……やっぱりな。
隣の牢屋で豪快なイビキを放ち続けていたのは――
ガオウだった。
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