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第27話 九大英雄〈聖女〉セラフィリア


ブクマや評価はもちろん、いいねや感想も物凄く有難く感じています。


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 ベルンハイム城のとある一室……


 広大な空間の中央に巨大な水晶が設置されており、その周囲にはベルンハイムの家臣たちが控えている。

 その家臣たちの眼前では水晶に向けて両手を掲げて魔力を送り込んでいる魔導士がいる。


 この部屋はいわゆる通信室として使用されている。


 水晶が一番よく見える位置に大きな玉座が設置されている。

 その玉座にバルバロッサが腰掛けている。

 装飾が施された肘掛けに腕を置き頬杖をつきながら通信が繋がるのを待っている。


 「……繋がりました。映像来ます!」


 通信魔法を使用している魔導士の合図で水晶に映像が映り始める。

 水晶の向こう側にいるのは、女性のようだ。



 「お久しぶりですね、私に急ぎの用があるとのことですが、どうかされましたか?」



 バルバロッサへ通信魔法を介して話し掛けてきた相手は、白銀のローブを纏った白髪の女性だった。

 年齢は二十台前半くらいに見える。

 見た目通りの落ち着いた語り口からはとても真面目で柔和な感じがする。



 「ああ、久しぶりだな……セラフィリア」



 そう、この白髪の女性こそ【神教国・リーンクラフト】の女王であり、バルバロッサと同じ九大英雄の一人……



 〈聖女〉セラフィリア、その人であった。



 「今回、こうして時間をもらったのは他でもない……神のことだ」



 その言葉にセラフィリアがピクリと反応する。

 表情は冷静なままだが、バルバロッサの言葉を聞いた瞬間わずかに目を見開いた。


 「神……ですか。まさか復活したとでも?」

 「そのまさかだ。先日、我が領土内で遭遇したばかりだ」

 「……そうですか。想定よりもずっと早いですね」


 セラフィリアの言葉はあくまで平静を装っているが、若干の焦りを含み始めている。

 バルバロッサと同様に神に対しての何らかの良くない感情を抱いているのは間違いない。


 「現在、神はヤクモとかいう冒険者に寄生している。こいつらも妙な力を使う奴らでな。早めに排除せねば我らの障害になりかねん」

 「……話はわかりました。それであなたはどの様な対策をお考えですか?」


 セラフィリアの問いに対してバルバロッサは暫く俯き考え込うような仕草をする。

 そして、絞り出すように話し出した。


 「……九大英雄を再び集めねばならんだろうな」

 「そうですか、それでは【英雄会議】を開催されるおつもりですか?」

 「ああ、そうなる。甚だしく不本意ではあるがな!」


 【英雄会議】とは文字通り、九大英雄を集めて開かれる会議である。

 しかし九大英雄ともなると協調性を持ち得る者は少なく、現在進行形でバルバロッサとマグナダインが大きな火種を抱えているように、英雄同士の仲違いも頻繁に起こり得る。


 そのため、【英雄会議】を無事に開催することは至難の業と言えよう。


 また、他者に迎合することを何より嫌うバルバロッサはこの【英雄会議】を開催することを誰よりも嫌っていた。

 自らと同等の者が九人も存在しているなどと考えるだけで怒りがこみ上げてくる。


 何故、そんな奴らと肩を並べて話し合わなければいけないのか?


 バルバロッサの本心はそんな不満で溢れているのだ。


 しかし、神が出現するとなると話は別だ。

 神の力は絶大だ。

 前回対峙した時は妙な首飾りの中にいたようで本来の力は発揮できていなかったようだが……


 それでも自分の全力の一撃は防御され、強制転移で飛ばされてしまった。


 今の内ならば手の打ちようはいくらでもあるが、完全復活されてしまった暁には危険度は何百倍にも膨れ上がる。

 そのためには、強力な戦力が必要不可欠だ。


 戦力という意味では九大英雄ほど適している存在はいないだろう。


 だからこそバルバロッサは不満を嚙み殺してセラフィリアに相談しているのだ。

 九大英雄の中では比較的常識を持ち、他の英雄に対して敵意を持たないこの〈聖女〉に。


 「……話はわかりました。調整は私の方で承っても大丈夫ですか?」

 「ああ、最初からそのつもりだ。よろしく頼む」

 「まあ突然の召集ですから何人が応えてくれるかはわからないですけどね、まあゼノスフリードとアルテワイス辺りは来てくれるでしょう。他は……正直わかりませんね」


 九大英雄はそれぞれが国を治める主であるという一面も持ち合わせている。

 そのため、召集が掛かってからと言って、ハイそうですかと集まれるほど暇ではないのだ。

 

 また、持ち前の性格から言ってそもそも呼びかけに応えるつもりが全くない者もいる。

 セラフィリアとて、何人が集まってくれるかは皆目見当も付かないのが事実なのだ。

 彼女はこれから自らに降りかかるであろう特大のストレスに若干うんざりしながらも役割を引き受けた。

 それだけ彼女の中でも神の復活という事象は重いのだろう。


 「……それでは開催の目途がつきましたら改めて連絡させて頂きます。それでは今日のところはこれで失礼しますね」


 そう言い残して水晶から映像が途切れてしまった。

 セラフィリア側から通信を遮断したのだろう。


 「……ふう、後は待つだけだな」


 バルバロッサは水晶の前の玉座に深く腰掛け、大きな溜息を吐いた。

 

 後はセラフィリアからの連絡を待つだけだ。

 彼からすれば面倒ごとを全てセラフィリアに押し付けた形になるが、バルバロッサは自らが他の九大英雄相手に調整役を買って出たとしても、まとめきれるわけがないと理解していた。

 それならば、他の九大英雄とも関係性が悪くないセラフィリアに全て任せてしまった方が最初から上手く行くに決まっているのだ。

 そして、それはセラフィリア自身も百も承知だろう。


 「よし……それでは騎士団長たちを呼べ、全員だ」


 自らも戦力を整えるべく動き出す。

 アランドラでは自らの騎士団に大きな打撃を与えてしまった。


 その被害の全容の把握と、サポートに関しては早急に動く必要がある。



 バルバロッサは動き出す。

 ……全ては神という存在を完全に殲滅するために。

 

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