第20話 九大英雄 〈剣帝〉 バルバロッサ
ついに現れた九大英雄の一人!
いやぁここまで長かった……
その男の持つ剣は、全てを斬り裂き葬り去る。
いかなる者も、どの様な物も、関係ない。
生きとし生けるもの全てをその剣で等しく葬り去ってしまう。
いつしかその男はこう呼ばれるようになる……〈剣帝〉と。
〈剣帝〉バルバロッサ。
この世界で九人しかいない英雄にして頂点。
剣を使う者の中で彼の名を知らない者はいないだろう。
ベルンハイム王国の王にして生きる伝説である。
……その伝説が、今まさに目に前に存在していた。
……即座にバルバロッサに対して〈鑑定〉を使用する。
名称 : バルバロッサ
クラス : 剣帝
ランク : S
Lv : 99
HP : 9340/9340
MP : 8230/8230
攻撃力 : 9032
防御力 : 8965
魔法力 : 6455
素早さ : 8742
スキル : 九大英雄 〈剣〉
剣帝の奥義 〈Lv9〉
剣術 〈Lv9〉
剣技強化 〈Lv9〉
覇気 〈Lv9〉
威圧 〈Lv9〉
剛力 〈Lv9〉
狂化 〈Lv9〉
魔術耐性 〈Lv9〉
状態異常耐性 〈Lv9〉
龍滅剣
斬艦剣
邪封剣
聖王剣
……冗談だろう?
こんな化け物勝てるわけがない。
神が言っていた『ゴブリンキングなら一撃で倒せるレベル』なんて表現が生易しく思えてしまうレベルだ。
その気になれば一瞬で全滅させられてもおかしくない。
〈鑑定〉した瞬間、一つの間違いで自分たちの命が無に帰してしまう可能性に気付いてしまった俺は、全身から冷や汗が噴き出てくるのを実感してしまった。
大体、何故こんなところにバルバロッサが現れる?
意味不明過ぎるだろが!
「貴様たちが、スタンピードを退けたという冒険者たちか?」
混乱する俺の思考を遮るようにバルバロッサが問いかけてくる。
「……ああ、そうだ」
奴が何を考えているのか全くわからないが……
少なくとも、俺たちにとって絶望的な状況なことは確かだろう。
「……やはりな、貴様らの戦いぶりは、このローザから送られてきた映像から見せてもらった、なかなか見事な戦いぶりだったぞ」
バルバロッサの脇からローブを羽織った少女が現れた。
このローザと言われた少女、不気味というかなんというか、バルバロッサとはまた違った意味での異質さを周囲に放っている。
バルバロッサの隣で常に俯き、こちらを見ようともしない。
「あの子は……〈異界送り〉のローザ!」
「……知っているのか?」
エレールはどうやらあの少女に心当たりがあるらしい。
「ベルンハイム王国に代々仕える魔導士の一族の末裔だと聞いている。何でも空間を越えて移動したり、情報を送ったりするスキルを使用できる一族だとか……」
「……ということは、さっき魔力の渦を発生させてバルバロッサをここに呼び寄せたのも……」
「ああ、ここにいるローザのスキルの効果だ。我が騎士団で貴様たちを捕らえられなかった時に俺をこの場に呼び寄せる任を与えていたというわけだ」
……そういうことか!
シオン以外でワープ能力なんて存在すると思わなかったが……
バルバロッサの部下にその能力者がいるだなんてな。
ベルンハイム第二騎士団がこちらに襲い掛かってきた時に、影で隠れてこちらの情報をバルバロッサに送っていたのだろう。
そして、俺たちが優勢になった段階で手筈通り、バルバロッサをこちらに呼び寄せたということか。
「さて、御託はこれで終わりだ。貴様ら、今から俺と一緒にベルンハイム王都へ来い、そこで話がある」
「……嫌だと言ったら?」
「貴様らに拒否権など無いわ、拒否すればその瞬間に命は無いものと思え」
バルバロッサの威圧が更に激しくなる。
もはや殺意に等しいその圧力は、先程から天井知らずに強くなるばかりだ。
……くっ、断ればその瞬間に襲い掛かってくるに違いない。
だが、大人しく王都まで連行されてしまえばどんな目に合わされるかわからない。
俺たちが魔王一行だとバレてしまったらその瞬間に処分されてしまうのは目に見えている。
どうやっても助かる道が見えない。
頭をフル回転させて考えても良い案が浮かばず、答えに窮している俺を見ながらバルバロッサが苛立ちを交えた目線で見つめている。
「お待ちください!この方たちはスタンピードからアランドラを救ってくれた恩人です!我がギルドとしては、手荒な真似を見逃すわけにはいきません!」
エレールが意を決したかのようにバルバロッサに進言を行った。
バルバロッサの威圧に精一杯抗っているのだろう。
声は上ずり、体は震えているが、それでも勇気を振り絞ってエレールなりの抵抗を見せている。
「……貴様はギルドのリージョンマスターだな……確かエレールとか言ったな」
「……はい、何卒ご容赦をお願い申し上げます」
バルバロッサは暫し考え込んだ後に、おもむろに剣を振り上げ、いきなりエレールに向かって振り下ろした。
「……っ!!」
咄嗟のことに動けなかったのか、はたまた覚悟を決めて動かなかったのか、剣はエレールの目の前で寸止めされている。
「……ほう、胆力はなかなかのものだな」
「ば、バルバロッサ様!さすがに無礼ですぞ!エレール殿はギルドのリージョンマスター!ベルンハイムの王といえどもそれなりに尊重すべき立場であるはず!」
「……黙れ、下郎が!」
たまらず横から口を出したグライフへ向かって更なる威圧を放つバルバロッサ。
「……ぐうぅ!?」
凄まじい圧力を喰らい顔面蒼白で動けなくグライフ、あれだけ屈強な男が立っているのもやっとになるほどだ。
その力がどれだけ凄まじいかを物語っている。
「ふん、この程度の威圧で動きを封じられとは情けない。このエレールとかいう小娘の方が遥かに度胸が据わっているようだな」
グライフにはさほど興味を示さず、エレールの方へ向き直る。
「ギルドのリージョンマスターか、貴様を斬ればさすがにマグナダインの奴も黙ってはいまいな」
「……はい、バルバロッサ様もギルドと戦争になるのは避けるべきだと思います」
「ふん、別にこれを機会にマグナダインごと滅ぼしてやっても良いんだがな……」
物騒なことを口走りながら、ニヤリと笑うバルバロッサの表情からは狂気しか感じられない。
神が以前に俺たちに言った『バルバロッサは実力的にも性格的にも近付かない方が良い』という言葉を思い出していた。
「ふん、まあ良い、俺の威圧に屈しなかった貴様の度胸に免じてやるか、奴らを王都に連行するのは無しにしてやる」
「……はい、ありがとうございます!」
エレールが安堵の表情を浮かべる。
ひょっとして俺たちは助かったのか?
「しかし!一つだけ条件がある」
その後にバルバロッサが述べた条件は俺たちにとって、とうてい受け入れがたい条件だった。
「そこの小娘は一緒に来てもらう、貴様には話があるのでな」
そう言ってバルバロッサが指さした先にいたのは……
リンネだった。
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