第19話 強襲、ベルンハイム第二騎士団
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突然、俺達を拘束すると宣言しながら襲い掛かってきたベルンハイム第二騎士団。
恐らくそれぞれがかなりの腕前を誇るのであろう。
多種多様の武器を用いてこちらに向かってくる。
ある騎士は片手剣、またある騎士は身の丈程もある大剣、他にも槍や大斧、大槌なんて獲物を持っている騎士もいる。
俺の方には双剣を操る、壮年の騎士が向かってくる。
身のこなしからして、ただ者では無いのがわかる。
その騎士は両手に持った剣を物凄い速さで振るってきた。
しかし、俺は片っ端からその剣撃を捌いていく。
確かに速いのは速いが、避けれない程ではない。
アシュタリテと同じくらいのレベルかな?
……だとしたら俺の敵では無いな。
一瞬の隙をついてその騎士の胴体に蹴りを見舞い吹っ飛ばす。
「……ぐうっ!強い!」
その騎士は片膝をついて苦しそうにしている。
「まさか、テリウス副団長が!?」
他の騎士たちが驚いている。
この騎士、副団長だったのか、どうりでそこそこ強いはずだ。
ラセツたちも騎士の攻撃を上手く捌いているようだ。
このベルンハイム第二騎士団の面々は確かに強いのは強いが、今の俺たちを倒せる程のレベルではないらしい。
そうこうしている内に城壁の上で、動きを感じたので振り返ると……
「〈ファイアアロー〉!」
「〈ライトニングボール〉!」
「〈フラッシュアロー〉!」
「〈アローレイン〉!」
魔法や弓矢などの遠距離攻撃が一斉に放たれるのが見えた。
「頼むぞ、コダマ!」
「心得た!〈樹霊障壁〉!」
大量に放たれた遠距離攻撃に対してコダマが障壁を張る。
全ての攻撃が障壁にぶつかり大爆発を起こすが……
障壁は無傷だった。
「……何ぃ!?あれだけの攻撃でも防いでしまうのか!?」
第二騎士団長、ジョルジュが驚いている。
「あいにく、その程度の攻撃は今まで腐る程防いできてるんでなぁ」
コダマが胸を張る。
「かくなる上は私自らがぁ!」
ジョルジュが自らの剣を抜いた瞬間……
「いい加減にしろぉ!!!こんな場所で戦闘行為などど、騎士として恥ずかしくないのかぁ!!!」
エレールが怒声を飛ばしながら間に割って入ってくる。
その表情からはベルンハイム第二騎士団に対する怒りが溢れているのがわかる。
「口出しはやめてもらおうか、エレール殿、これは我がベルンハイム王国の〈剣帝〉、バルバロッサ様からの勅命によるものだ、一介のギルドのリージョンマスター如きが口出しをして良い問題ではない」
エレールに対し、ジョルジュも全く引く気配がない。
〈剣帝〉バルバロッサ、つまり九大英雄の一人であり、この国の王でもある人物の後ろ盾があるのだ。
態度が大きくなるのも無理はないだろう。
「いいや、この人たちはアランドラを救ってくれた恩人だ!我がギルドとしては、その恩人のピンチに指を加えて見ているわけにはいかんのだ!」
エレールも負けない、言葉を紡ぎながらも槍を抜きジョルジュへ向けて構える。
騎士団の行為に対して、余程の怒りを覚えているのだろう、バルバロッサの名前を出されようが徹底抗戦の構えを崩さない。
「……ほう!それでは貴殿は我らが王、バルバロッサ様に弓を引くつもりかな?」
ジョルジュの言葉に一瞬、躊躇したかの様な反応を示したエレールだが、すぐに何かを決心したかのように言葉を返す。
「私はギルドからこのアランドラを管轄として任されているリージョンマスターだ。すなわち、我がギルドのグランドマスター、〈魔戦将軍〉マグナダインより権限を受けている!そちらこそ、我が主、引いてはギルド全体を敵に回す覚悟はあるのだろうな!?」
「……な、何だと!?」
エレールの言葉にジョルジュが絶句してしまった。
そうか、ギルドのグランドマスター、すなわちトップも確か九大英雄の一人だった。
〈魔戦将軍〉マグナダイン、ここより遥か西方に存在する【ガルガノ連邦】のトップでもある大人物だ。
そのマグナダインの名前を出されてしまっては、ジョルジュと言えども必要以上に強く出れないのであろう。
万が一自分の判断のせいでバルバロッサとマグナダインという九大英雄同士の戦争が始まりでもすれば、間違いなく責任問題どころでは済まない。
ジョルジュの方もさすがにどうすれば良いのか判断がつかないのだろう。
先程からオロオロと狼狽するばかりだ。
他の騎士団員たちも追従するかのように動揺を隠せないでいる。
「それでは、我らの恩人に対しては手を出さないということで約束してもらおうか」
その反応を見てすかさずエレールが俺たちへの追撃をしない旨の確約を迫る。
……よし、これで何とかなりそうだな。
今のうちに他の場所へ向けて出発してしまうか。
「〈異界の門〉発動」
……そう考えた瞬間に、目の前にいきなり魔力の渦のような物が発生し始めた。
それはシオンの〈転送用魔法陣〉とも違う、異質ともいえる魔力だった。
魔力の渦は瞬く間に大きくなり、人が通過できそうな大きさにまで膨れ上がった。
「こ、これは!?」
目の前の光景に驚くのも束の間、その渦の向こう側から放たれてくる異常な気配を察知する。
それは異常で異質、今まで感じたことのない程の強大さと特質さを併せ持つ、恐ろしいほどの濃密な気配だった。
「主よぉ!離れろぉ!」
ラセツもこの異常な気配を察知したのだろう。
咄嗟に俺に対して注意を促す。
見れば他の仲間たちも一瞬で警戒態勢に入っている。
「く、くそぉ!」
俺も咄嗟にその場を飛びのくが……
『ふん……ぬるいわぁ!!!』
謎の怒声と共に渦の向こう側から一筋の剣閃が放たれてくるのが見えた。
その剣閃は異様な速さでこちらに迫ってくる。
間違いなくこの世界にきてダントツの一撃だろう。
「く、くそぉ!〈魔王の盾〉!!!」
ギリギリ間に合うかどうかのタイミングで〈魔王の盾〉を発動し、体の前に差し出す。
……その瞬間、ギィインッ!!!と激しい金属音が鳴り響き。
俺の〈魔王の盾〉が真っ二つに分かれてしまった。
「何だとぉ!?」
今まで敵の攻撃を完璧に防いできた〈魔王の盾〉、それが一撃で破壊されてしまったことに少なからずの衝撃と畏怖を覚えてしまった。
(……だが、何とか攻撃を防ぐことができ)
瞬間、俺の肩口より斬撃によるものと思われる鮮血が吹き上がる。
「ぐはぁっ!?防御仕切れていないだと!?」
「主ぃ!?」
「魔王様ぁ!!!」
少なくないダメージを負ってしまい、膝から崩れ落ちる俺の下へラセツとリンネが駆け寄るのが見える。
「く、来るなぁ!」
しかし、俺はその二人に対して制止の言葉を発する。
何故ならば、俺は見てしまった。
目の前の魔力の渦の中から、一人の人物が出てくる所を……
その人物は長さ三メートルはあろうかという大剣を担いでおり、見事な黄金色の甲冑を全身に着こんでいる。
身の丈二メートル以上はあろうかという巨大な体躯を誇るその人物の顔には見覚えがあった。
「……バルバロッサ」
『NHO』でも何度か見たことがあるその顔を間違えるはずがない。
この世界の頂点の一角、九大英雄の一人。
〈剣帝〉バルバロッサが、獰猛な笑みを浮かべながら、目の前に現れてしまった。
とうとう、九大英雄の一人が出現しました!
次回に乞うご期待!!!
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