第10話 ラセツ VS アシュタリテ
魔王 VS 魔人の第一戦……
ラセツ VS アシュタリテが始まろうとしていた。
「お前の相手は我がしてやろう!ふん!」
ラセツがアシュタリテを相手取り、大剣を振り下ろす。
アシュタリテは素早い動きで後退し、攻撃をかわした。
「貴様なんぞに負けてたまるか! 〈ダークスフィア〉!」
後退しつつ〈ダークスフィア〉を放つ。
ラセツは、大剣を振り上げながら、ジャンプして交わす。
「それはもう見飽きたわぁ! 〈闘気解放〉」
スキルを使用し、ステータスを上昇させながら大剣を振り下ろす。
「そんな単調な攻撃が通るかぁ! 〈ダークバインド〉!」
アシュタリテは漆黒の鎖を放ち、ラセツを拘束しようと試みるが……
「むうん! 〈螺旋撃〉!」
瞬時に、大剣を突き出し、旋回させながら漆黒の鎖を絡めとり引きちぎった。
「なんだとぉ!?そんなことが出来てたまるかよぉ! 〈ダークフレイム〉!」
たまらず漆黒の炎を放つが、ラセツはものともせず突っ込んでくる。
「ぬう!なんだこいつは!?いくらなんでも強すぎるだろうがぁ!」
アシュタリテの懐に身を低くして潜り込んだラセツの攻撃が炸裂する……
「くらえ! 〈昇竜撃〉!」
〈剣術〉スキルレベル7で習得できる〈昇竜撃〉は、相手を斬り上げることで相手に大ダメージを与えることができる。
ラセツの渾身の一撃がアシュタリテを捉え……
直後、空に何かが舞った――
どさりと落ちたそれは、アシュタリテの左腕だった。
一瞬何が起こったのかわからず斬り飛ばされた自分の腕を見つめているアシュタリテ、当然ラセツはその隙を逃さない。
「とどめだぁ! 〈鬼王剣〉!」
返す刀で、斬り上げたまま振り上げられている大剣をそのまま必殺スキルを纏わせ叩きつける。
「ぬおおおお!」
アシュタリテはラセツの流れるような強力な連撃に成すすべもないまま、〈鬼王剣〉をまともにくらい、断末魔をあげながら、体を両断され息絶えた。
「……しまった。つい勢いで殺してしまったが、確かあいつに色々と情報を聞く必要があるんだったな……主に怒られる……」
頭を抱えるラセツだったが、こうして鬼人と魔人の決闘は、鬼人の完勝に終わった――
かと思った瞬間、異変が起こる。
「……こ、こここ!このまま、おおお、終わってたたったたたまるかぁぁあ!!!!」
何と両断された体が再び動き出した。
動き出した両方の体は激しく痙攣しながら、引き寄せ合い結合を始める。
「な、何だ!?魔人とはこんなこともできるのか!?」
結合を始めた肉体はそのまま、元の姿には戻らず、いつしか肥大化を始める。
そのまま、巨大な魔獣の形へと姿を変えていく……
「ぐぐぅ……まさかこの私に〈魔獣変化〉のスキルを使用させるとはな……」
最終的には、巨大な翼を生やした竜のような魔獣の姿へと変貌した。
アシュタリテの最終手段、スキル〈魔獣変化〉は、自らのHPがゼロになった時に一度だけ発動する特殊なスキルだ。
ゼロになったHPを完全に回復できるだけではなく、ステータスも大幅に上昇させることができる。
アサルトベアーの〈狂化〉のように、HPが自動で減少し続けるというデメリットも皆無である。
ただし、二度と元の姿に戻ることはできないが……
「貴様のせいで、私はこれからこの醜い姿で生きていかなければならなくなった……許さんぞぉ!」
危うく死ぬところから、復活はできたものの、魔獣の姿に納得がいっていないアシュタリテは、その怒りをラセツにぶつける。
「ふはは、魔王様に怒られるところだったが、まだ情報を聞き出すチャンスはあるようだ」
ラセツは、アシュタリテの変貌よりも主である魔王ヤクモに怒られることの方が怖いようだ。
笑顔で大剣を構える。
「さあ、改めて……いざ参るぞ! 〈鬼王剣〉!」
そのまま、スキルを発動し、雌雄を決するために覚悟を決める。
「燃え尽きろぉ!ガアアアアア!!!!」
アシュタリテは大きな口を開き、ブレスを放った。
ラセツを飲み込まんと、周囲にブレスをばらまかんと首を振り回したため、辺り一帯に激しい炎の奔流が渦巻いた。
「くおお!まさかこんな展開になるとはなぁ!魔獣退治とは、ますます心が踊るわぁ!」
炎に包まれながらも、ラセツは笑みを崩さない。
鬼人は基本的に闘争を好む。
相手が強大であればあるほど、その闘争心は燃えたぎる。
〈大迷宮〉で相対したゴブリンキング以来の強敵との遭遇に、ラセツの心は不思議と満たされているのであった。
「おおおおお!!!」
ラセツは咆哮をあげながら、ブレスの炎を突き抜け、アシュタリテに迫る。
「ふん!毎度毎度突っ込んできおって!なめるなぁ!」
さっきまでは持ち得なかった、頑丈な爪をラセツが撃ち込んでくる大剣にぶつける。
ラセツの〈鬼王剣〉とアシュタリテの剛爪の激突の結果は、正に互角だった。
激しい火花を散らしながら、二人は距離をとる。
「〈鎌鼬〉!」
ラセツが遠距離スキルを使用する。
鋭い真空の刃が発生し、アシュタリテの顔に迫る。
「ちぃ!小細工を!」
アシュタリテは寸でのところで避けるが、頬に一筋の傷をつける。
「貴様ぁ、こんな小賢しい攻撃で決着が着くとは思ってないだろうなぁ?」
かすり傷をつけられたアシュタリテは、憎々しいと言わんばかりの言葉を発する。
「ふん、そんなことは微塵も考えとらんよ」
ラセツは返事をしながらも、〈鎌鼬〉を連続で使用する。
二発、三発と連続で放たれた刃は、アシュタリテの肌に傷を刻んでいくが、とても致命傷とは成り得ない。
「ええい!鬱陶しいわぁ!死ねぇ!」
激高しながら、ブレスを全力で放つ。
再度、周囲一面が炎で満たされる。
「ははは!またこの展開か!そのブレスはさっきもう味わったわぁ!」
ラセツは、体を限界までねじり大剣を振りかぶる。
「どらぁ! 〈旋風撃〉!」
そのまま、大剣を全力で振り抜き、スキルを放つ。
〈剣術〉スキルレベル8で使用可能な、大技だ。
〈旋風撃〉は強力なスキルではあるが、使用条件に少し制限がある。
それは使用ゲージを貯めることだ。
このゲージは〈鎌鼬〉を使用することにより、蓄積していく。
先程の〈鎌鼬〉の連撃は小細工などではなく、このスキルを使用するための布石に過ぎなかった。
〈旋風撃〉により引き起こされた強大な竜巻がアシュタリテのブレスをかき消しながら物凄い速さで迫っていく。
「何だこれはぁぁぁ!」
アシュタリテは、羽を広げて上空に回避しようとするが――
間に合わず竜巻が放つ真空刃の連撃に巻き込まれる。
アシュタリテが広げていた羽は無残にも切り刻まれ、鮮血が舞う。
「くそおおおお!」
「なかなか楽しめたぞ、今度こそおしまいだ。 〈鬼王剣〉!」
ラセツが〈鬼王剣〉を発動させながら、再び懐に飛び込み……
アシュタリテの肩口へ大剣をめり込ませた。
「ぐぎゃあああああ!!!!」
アシュタリテは断末魔の悲鳴をあげながら倒れ伏した。
「恐らく死んではいないだろうから、主には怒られまい……」
ラセツ VS アシュタリテの決着がついた瞬間だった。
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