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第5話 初めてのボス戦

 階段を降りると、だだっ広い空間に出た。大きさ的には体育館くらいだろうか。

 薄暗い洞窟の中央に、巨大な蛙が待ち構えている。


 ……あの大蛙がここの中ボスか。すかさず〈鑑定〉を使用する。


 名称:ストーンフロッグ

 ランク : C

 HP  : 380/380

 MP  : 110/110

 攻撃力 : 260

 防御力 : 182

 魔法力 : 88

 素早さ : 210

 スキル :溶解液

      岩石魔法〈Lv3〉


 ……さすが中ボス、そんじょそこらの雑魚敵とは強さの桁が違う。

 ランクも俺と同じCとはな、転生後初めて同格の敵と戦うってことか。

 こちらの姿に気付いたストーンフロッグがゆっくりと動き出した。臨戦態勢って所か、望むところだ。


 「シオンは少し離れていてく……」

 「らじゃーです!」


 俺の言葉が終わる前に肩から飛び立ち安全な距離まで最速で飛んで行くシオン、あいつ後で覚えとけよ。


 「……気を取り直して、行くぞおらぁ!」


 俺は腰から剣を抜き、ストーンフロッグへ向かっていく。

 

 「ゲゴォォォッ!」


 いきなりストーンフロッグが口からドス黒い液体を吐き出してきた。

 俺はすかさず横っ飛びで避ける。地面に飛び散った黒い液体は明らかに体に良くない様な匂いを振りまき、ジュワジュワと嫌な音を出している。間違いなく強酸に近い性質の液と思われる。


 「確か、スキルに〈溶解液〉ってのを持ってたな」


 あまり近付くのは得策では無いのかもしれない、では今の俺に取れる手段は一つ。


 「〈ダークアロー〉!」


 現在の俺の唯一の遠距離攻撃手段だ、差し出した掌から黒い光が一直線にストーンフロッグへ向かっていき……


 「ゲェェッ!?」


 ストーンフロッグの右目へ直撃した。さすがに痛かったらしく、大きく仰け反りそのまま仰向けにひっくり返った。


 「おっしゃ、今の内にぃ!」


 この隙を逃す手段は無い。再びストーンフロッグの懐を目指し駆け抜ける。

 奴は今、右目に大ダメージを負いながらもんどりうっている、このまま仰向けの腹にこの剣を突き立ててやる。

 俺は剣を振りかぶりストーンフロッグの懐へ飛び込んだ……瞬間に俺の側面から巨大な岩石が俺を目掛けて飛んできた。


 「何ぃ!?」


 急な事態に避けきれずまともに岩石の直撃を受けた。懐へ飛び込もうとジャンプしていたのが仇となり、そのまま入り口付近まで吹っ飛ばされた。


 「ま、魔王様!?大丈夫ですか!?」


 俺が吹っ飛ばされた付近に避難していたシオンが心配そうに声を掛けてきた。


 「少し驚いたしさすがにダメージを受けたが大丈夫だ、この程度では俺は負けない」

 「そうですか、良かったぁ魔王様がこんな所で負けたら私まで危ない目に合うじゃないですか、もっと気合を入れて頑張ってください、ほらふぁいとー」

 「お前今度は本当に握りつぶすからな!」


 シオンとのやり取りはともかく、今の攻撃には驚いた。ストーンフロッグのもう一つのスキル〈岩石魔法〉だろう。

 思えば転生後初めてダメージを受けてしまった。

 やはり、中ボスは一筋縄では行かない様だ。


 「ゲゴゴゴォ」


 俺が吹っ飛ばされている間にストーンフロッグは体制を立て直している。そして奴の周囲にはさっき俺を吹っ飛ばしたのと同じような大きさの岩石がいくつも浮き上がり舞っている状態だ。

 これは確か岩石魔法のLv3で使用可能な魔法〈ストーンラッシュ〉だな。

 自分の周囲に無数の岩石を飛ばし、ランダムではあるが複数の敵にダメージを与える魔法だ。


 これが奴の本気モードか、それならこっちも更に気を引き締めないとな。

 

 俺は真っすぐ前に左手を伸ばし、掌を相手に向けた。


 「〈ダークバインド〉!」


 その瞬間、俺の掌から鎖状の黒い光が飛び出した。そのままストーンフロッグの身体に巻き付き、雁字搦めにする。


 「ゲゲェッ!?」


 ストーンフロッグは一瞬で身動き出来なくなり、驚愕の表情を浮かべた。

 これは闇魔法レベル2で習得できる〈ダークバインド〉だ。一時的ではあるが、相手を拘束できる効果を持っている。


 「よし、これで!」


 大きな隙が出来た!再び突っ込もうとした瞬間……


 「ゲゴゲゲゲェ!」


 ストーンフロッグが一際大声で喚くと、辺りに浮き上がり舞っていた無数の岩石群が四方八方に飛び出し始めた。

 

 「こいつ!拘束されたままの状態で〈ストーンラッシュ〉を撃ちやがった!」


 正に捨て身の攻撃、大小様々な大きさの岩石が周囲に吹き荒れる中、こちらにも無数の弾丸が突っ込んできた。


 「っく!つおお!」

 

 必死に回避し、致命傷になりそうな大き目の岩石を必死に避ける。とは言え無数の細かい石礫は避けきれないため、どうしても喰らってしまう。

 


 「致命傷にはならないとは言え、ダメージは馬鹿にならないな!それならぁ!」


 一時的に剣を腰の鞘に収納し、両手を荒れ狂う岩石嵐の中央に拘束されているストーンフロッグへ向け……


 「〈ダークアロー〉!連射だああああ!!」


 こうなればこっちも物量で対抗するしかない、HPとМPが続く限り連射し続けて削りきってやる。

 両手の掌から左右交互に連続で黒い光が射出され続け、ストーンフロッグの身体中に連続で直撃した。


 「グゲゴゴゴォォ!?」

 

 20発程撃っただろうか?

 拘束されて動けない状態のまま顔面や身体中に遠距離から撃たれ続けているのではたまった物じゃない。ストーンフロッグは全力で拘束を解こうとして必死で藻掻いている。


 元々一時的な効果しか無い上に時間も多少経っていたため、ストーンフロッグ渾身の抵抗によって、〈ダークバインド〉の拘束は遂に消滅してしまった。


 ……しかし、必死に抵抗している間に気付けば〈ストーンラッシュ〉の岩石嵐が止んでいた。とても、攻防両方をこなす余裕は無かった様だ……そして、俺はその瞬間を待っていた。


 「やっと隙が出来たな、っとりゃぁ!」


 その間にストーンフロッグの足元に潜り込んでいた俺は、再び抜剣しながらストーンフロッグの喉元へ剣を突き出す。


 「ッゲバァ!」


 その瞬間ストーンフロッグは口から黒い液体を吐き出した。戦闘の一番最初に見た〈溶解液〉だ。

 これは、回避するか!?いやそんな事をしたらせっかく巡ってきたチャンスが無駄になってしまう。

 ……こうなれば正面突破だな、死なんだろさすがに、多分。



  「んなろぉ!」


 正面から溶解液を身体中に浴びた。痛い、かなり痛い。しかし、どうやら俺の耐久力の方が上回ったらしく身体が溶けることは無かった。


 「いってぇぇ!こなくそぉ!」


 そのままストーンフロッグの喉元へ剣を突き立て、即座に手首を返し、下腹部の方へ向けて掻っ捌いた。


 「ゲゲギャァァァ!」


 さすがにストーンフロッグも耐えられなかったらしく、膝から崩れ落ちて行く。

 

 「これで止めだなぁ!」


 目の前に崩れ落ちてきたストーンフロッグの脳天へ向かって縦一文字に一閃、頭部を縦に真っ二つに切り裂いた。


 その瞬間、ストーンフロッグの身体が粒子となって消えて行った。少し手こずりはしたが、堂々の勝利だろう。


 「はあ、さすがにフロアボスは手強かったな」


 俺は勝利を噛みしめながら剣を鞘に戻した。ストーンフロッグが無事に討伐されたのを確認し、シオンが安全圏からパタパタとこっちに向かって飛んできた。


 「さすが、魔王様こんなカエル余裕でし……くっせぇ!!!」


 シオンが急に反り返って地面へ墜落した。最後の攻防時に溶解液をもろに被った影響で、周囲に悪臭をばら撒く恐怖の存在になってしまった様だ……


 「やっぱり、そんなに臭うか?」

 「臭いなんてもんじゃ無いですよ!本当に死ぬかと思いました!もうおぶ……魔王様!」

 「お前、今俺のことを汚物って言いかけなかった?」


 何はともあれ、初のフロアボス戦を無事に終えることが出来た。

 さすがに疲れたな、体の匂いも落としたいし……


 こうして、俺達は探索を終え、玉座の間へ帰還したのだった。

作品をご覧頂きありがとうございます。


現在、第一部終了まで書き溜めてあるので、しばらくは毎日更新を続けさせて頂きます。

評価を付けて頂けると本当に嬉しいです。

ブックマークも心の底から喜びますので、どうぞよろしくお願いします!

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