第3話 マスター登場
冒険者ギルドの受付嬢のキャパシティの限界を越えてしまったため、更に上の立場を呼んでくると、立ち去ってから、十分程度経っただろうか。
受付嬢が二人の人物を連れて戻ってきた。
一人は見るからに厳つい筋肉質の男だ、身長は二メートルはあるだろう。
背中には巨大な斧を担いでいる。
小型のゴブリンキングみたいな奴だ。
もう一人は、女性だ。
赤い髪の毛に、赤い鎧、背中には深紅の槍を背負っている。
ぱっと見は、優しそうな顔をしているが、只者ではない雰囲気を醸し出している。
(この二人、強いな……特にこの女性の方は、頭一つ抜き出ている感じだ)
試しに二人に〈鑑定〉を使ってみた。
名称 : グライフ
クラス : アックスファイター
ランク : C
Lv : 34
HP : 940/940
MP : 340/340
攻撃力 : 865
防御力 : 690
魔法力 : 0
素早さ : 720
スキル : 斧術〈Lv6〉
格闘術〈Lv4〉
名称 : エレール
クラス : クリムゾンランサー
ランク : B
Lv : 43
HP : 1630/1630
MP : 1020/1020
攻撃力 : 1650
防御力 : 1310
魔法力 : 970
素早さ : 1020
スキル : 剣術〈Lv8〉
火炎魔法〈Lv8〉
魔法槍(炎)〈Lv8〉
強いな……
厳つい男の方も、なかなかの強さだが、このエレールという女の方は今の俺達とも良い勝負をしそうな程の強さを誇っている。
ランクも俺達と同じBである。
(これは、もし戦闘になったら負けはしないだろうが、ただでは済まないだろうな……)
俺達が無意識に身構えていると、二人が口を開いた。
「まあ、そんなに身構える事はない。俺はここのギルドマスター、グライフだ」
「私はエレール、ベルンハイムの西部一帯のギルドを任されている、リージョンマスターです」
「……リージョンマスター!?」
エレールの言葉にリンネがが驚いている。
「リージョンマスターって何だ?そんなに偉いのか?」
「偉いなんてもんじゃありません。一人でいくつものギルドを統括しているのがグランドマスターです。云わばギルドの幹部、なかなか会えるものじゃないですよ!」
リンネが興奮気味に力説している。
なるほど、という事はこの辺りの冒険者ギルドで一番偉いのが、このエレールなのか。
「……お嬢さん、紹介ありがとう……でも、謙遜しなくて良いわよ、だって私よりあなた達の方が全然強いもの」
「……エレールさん!?まさか!」
エレールの言葉にグライフが驚いている。
「ええグライフ、本当よ、五人共に私達より強いわよ、特に真ん中の銀髪の方、彼には逆立ちしても適わないわね」
(……驚いたな、ひょっとして〈鑑定〉のスキルでも持っているのか?)
「ああ、ちなみに言っておくと、私は〈鑑定〉なんて持っていないわよ、あなた達の強さは……何ていうか感覚でわかっちゃうの」
エレールが俺の考えを見透かしているかの様に、淡々と言葉を発していく。
「あなた達がその気になれば私達には止める術はないわ、その上で聞かせてもらうけど……あなた達は一体何者なの?」
エレールは俺達の事を怪しんでいるのか、素性を尋ね出した。
「私達は、ただの冒険者です。東部のイムルの町の方から遠出してきています」
「……そう、イムルの方にあなた達みたいな強力なパーティーがいるとは聞いた事がないけど……まあ、いいわ、そういう事にしておきましょう」
エレールは、にっこりと笑ってそう締めくくった。
(……ひょっとしてばれたんじゃないのか?完全に俺達の事を怪しんでいるな)
予想外の展開に、鼓動が高くなるのがわかる。
万が一の事態も想定しておいた方が良いのかもしれない。
「ええと、確か魔物の素材の換金を希望してたのよね?今出してくれてる〈メガロクロコダイル〉だけでも、かなりの金額になるのに他にも魔物の死骸を持ち込んできたの?」
「……はい、他にもかなりの数があります。全て〈格納魔法〉で収納していますが、全部出しましょうか?」
「へぇ……〈格納魔法〉まで使えるのね、ますます興味が出てきたわ、いいわ、全部ここに出してちょうだい」
品定めをするかの様に話ながらこちらを見つめているエレールに、少し怖気つきながらも、〈魂封じの首飾り〉から魔物達の死骸を全て放出した。
夥しい量の魔物達が広場に並べられていく。
ランクEから、ランクCまでの様々な魔物が100体近く並べられている様はかなり壮観だった。
「……こ、これは、ここまでとはね」
「エレールさん、こいつらは一体……」
エレールとグライフは揃って顔を引きつらせている。
「……本当にあなた達は一体何者なの?これだけの魔物を一度に持ち込む冒険者なんて初めてよ……」
「ど、どうしますか?これだけの数を捌くとなると、一日や二日では難しいですよ」
グライフの指摘にエレールは暫く考えた後に、一つの結論を出した様だ。
「えーと、お名前は確か……ヤクモさんだったかしら?」
「はい」
「わかりました、こちらの魔物達の素材は有難く買い取らせて頂きます……ただし、量が多すぎるので金額の査定に、少しお時間を頂けますでしょうか?」
「良いですよ、どれくらい待てば良いでしょうか?」
「……そうですね、ざっと見積もって一週間程度は掛かるかと思います」
……想像より長かった。
(参ったな……今の俺達は今晩の宿代すら無い状態だ。一週間はさすがに待てないぞ)
「……もちろん、前金で幾らかはお支払いさせて頂き、残りは全数の査定が終了後にお支払いするという形で対応させて頂きます」
……なるほど、それなら当面はしのげるな。
「ええ、わかりました。その条件で大丈夫です」
「ありがとうございます。こちのアランドラ支部にとっても、今までで最大規模の取引となります。気合を入れて対応させて頂きますね」
「はい、よろしくお願いします」
これで、依頼は終了だ。
後は、一週間も待てば、まとまった金額の収入が手に入る。
「さて……取引の話はこれで終了ですね……ここからは」
エレールがにこやかな表情を崩さないまま、声色を変えながら言葉を発する。
「ギルドとしての正式な依頼の話をしましょうか」
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