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第2話 ギルドデビューしました

 俺達は門番に教えてもらった通り、冒険者ギルドを目指した。


 それにしても、町中を歩いていると、本当に『NHО』の世界その物の町並みだと、感動してしまう。

 〈大迷宮〉の中はひたすら暗闇の中だったが、こうして陽の当たる場所を歩きながらゲーム内の世界を体験しているだけでテンションが上がってくるのがわかってしまう。


 また、町の中を歩いている町民や冒険者達がより一層俺のテンションに拍車をかける。

 

 (いやいや、本当に細部まで表現されているじゃないか……こうやって町の中を歩いているとゲームにハマっていた時の事を思い出すな……)


 そうこうしているうちに冒険者ギルドへ到着してしまった。

 他の建物よりも一際大きな建物のため、すぐにわかった。


 中に入ると、ゲームの通りの冒険者ギルドの光景が広がっていた。

 正面のカウンターへ向かうが、当然の様に周囲の冒険者達が一人残らず視線をこちらに向けている。

 やはり、俺達はパーティーとして、目立ちすぎてしまう様だ。


 注目を浴びながらもカウンターで受付嬢の女性にリンネが声を掛けた。


 「あの、魔物の素材を買い取って欲しいんですが」

 「あ、はい、こちらの冒険者ギルドは初めてですか?」

 「はい、初めてなので登録をお願いしたいんですけど」

 「わかりました。それでは、ステータスカードを作成しますので、この用紙の中央の余白に手の平を当てて下さい。防具はつけたままで大丈夫です」


 そう言われてまずは、リンネが即座に用紙に手を当てる。

 さすが、元こちらの世界の住人、動作に迷いが無い、俺達にとっては保護者の様なものだな。


 リンネが用紙に手を当てていると、何やら文字が浮かんできた。

 どうやらステータスが表示されるらしい。

 ちなみに、俺達が魔物という事に関しては〈変化の宝珠〉の効力で偽装可能という事は確認済みだ。

 神のアイテムに抜け目は無い。


 「……こ、これは、ランクBですって!?そんなまさか!」


 その用紙を受け取り目を通した受付嬢が、突然血相を変えて騒ぎ出した。

 どうやらリンネのステータスの高さに驚いているようだ。

 〈変化の宝珠〉は見た目と俺達が魔物だとわかる部分に関しては偽装されるが、能力自体はそのままだ。

 〈大迷宮〉で鍛えに鍛えた俺達のステータスは、この町では破格の性能を誇るらしい。


 「……なんだと、あんな小娘がランクBだって?」

 「……何かの間違いじゃないのか?」


 案の定、周囲の冒険者も騒ぎ始めた。

 まずいな、ますます注目を集め始めている。


 「あ、あの、一応他のお仲間の方達も……ステータスカードの作成をお願いしますね」


 受付嬢が、動揺を露わにしながらも、仕事を進めようと頑張っている。

 うん、正にプロ根性だ。


 俺も含む他の四人もそれぞれ配られた用紙に手を当て、ステータスカードを作成する。


 全員がカードを作成し、受付嬢が受け取る。


 「よ、四枚ともランクB!?あなた達全員がランクBの冒険者なの!?」


 四枚のステータスカードを確認した受付嬢は案の定、またもや動揺を隠せず、騒ぎ出した。

 せっかく、頑張ってたのに、プロ根性はどこ行った?


 「……あいつら、全員ランクBだってよ!?」

 「やばいな……あんまり関わらない方が良いぜ」


 あーあー、またまた注目を浴びている。

 そして一周回って避けられそうだ。


 「リンネ、この町ではランクBの冒険者はそんなに珍しいのか?」

 「はい、ベルンハイムの首都なんかに行けば、たまに見かけるんですが、アランドラの様な辺境の町だと、かなり珍しいと思います。増してや私たちの様に五人全員がランクBのパーティーは、まず存在しないと思いますね」


 なるほどな……それは意外だった。


 「騒ぎにならない内に、素材を売り払ってここを出てしまおうか?」

 「そうですね、すいません!登録が終わったなら早く魔物の素材を買い取って欲しいんですが……」

 「……え、ええと、はい、わかりました!それでは、魔物の素材を出して下さい」

 「魔物の死骸でも大丈夫ですよね?一応、ちゃんと部位が大丈夫な様に倒してますので」

 「ええ、うちのギルドでは解体も請け負っているので問題無いですよ」


 ……よし、それじゃあ早速〈魂封じの首飾り〉の中から魔物の死骸を出すか、とりあえず、このギルドの中で出せそうな手頃なものから出すか……

 俺は一体の魔物の死骸を首飾りから出し、カウンターの前へ置いた。


 「え!?これは〈格納魔法〉!? 初めて見ました! っていうかこの魔物は〈グランドバイソン〉じゃないですか! しかもこんなに綺麗な状態で……」

 「まあ、こんなんで良ければ後十体以上は格納してるから、広い所があれば出せるぞ」

 「〈グランドバイソン〉が十体以上!? 〈グランドバイソン〉はランクDの中でも最上位に入る凶暴な魔物ですよ?さすが、ランクBの冒険者ですね」


 ……ちょっと強さの感覚にギャップがあり過ぎるな。

 ちなみにこの〈グランドバイソン〉は、なるべく綺麗な状態を保つ様に、リンネの杖で撲殺してある。


 「とりあえず、格納してある魔物を全部出したいから、どこか広い場所は無いのかな?」

 「あ、はい!それでは、ギルドの裏手にある広場へ案内します。そこなら大概の魔物は置けると思いますので……」


 さっきから驚きっぱなしの受付嬢に案内されて、冒険者ギルドの裏手に向かう。

 他の冒険者達も何故か着いてくる……おのれ野次馬共め。


 「着きましたよ、ここでなら大丈夫ですか?」

 「ああ、問題無いと思う、それじゃあ引き続き魔物の死骸を出していこうか」


 案内されたのは、かなり広大な広場だった。

 今後冒険者ギルドの増築が必要となった時のために確保してある土地で、普段は冒険者達の訓練などに使用されているらしい。


 (ここでなら、一番場所を取っていたあの魔物も出せるな)


 首飾りの中から、一番サイズが大きな魔物を出してみた。


 「……へ?……こ、これは!? まさか〈メガロクロコダイル〉ですか!? この辺りで沼の主と言われて恐れられているランクCの魔物ですよ!?」

 

 この人さっきからずっと驚いているな、いい加減疲れるだろうに。


 それにしても、この魔物は道中の森の中の沼地で遭遇した巨大なワニの魔物だが、この辺りではそこそこ有名な魔物だったらしい。

 向こうからちょっかいを出してきたので、怒ったラセツが大剣で眉間を一突きにして仕留めた魔物だ。

 先程から、周囲の冒険者達も一様に驚きを隠せないでいる。


 「さすがに、私には手に余ります! もう少し上の立場の者を連れてくるので、少々お待ち下さい!」


 受付嬢は、なかば半狂乱になりながら駆け足でギルドに戻って行った。

 どうやら、更に上の立場の者を連れてくるらしい。


 「……あまり目立ちたくはなかったんだけどなぁ……」


 俺は天を見上げながら本音を呟いた。


 

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