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第1話 外の世界へデビューしました

 〈大迷宮〉を出て移動すること、約半日――


 「おお、あれがアランドラの町か」


 遠くの方に、壁に囲まれた町の様な物が見えた。

 この距離だと、後一時間も歩けば到着するだろう。


 見る限り、かなり規模の大きい町の様だ。

 リンネによると、この周辺では一番大きい町の様で、冒険者達の拠点として栄えているらしい。


 もちろん俺達は、変化の宝珠で人間の姿に偽装し、町を目指している。

 俺は角が無くなり、口元から少し覗いていた牙も見えなくなった。

 禍々しかった鎧や剣なんかも、良い感じに冒険者風の装備へと見た目が変わっている。

 これなら俺の事を初見で魔王だと見抜く奴なんていやしないだろう。

 

 ラセツも俺と同様、角や牙は無くなっており、更に肌の色が程よく日焼けした程度の肌色となっている。

 装備も全般的に地味な見た目になっており、勇猛な冒険者にしか見えない。


 コダマは、全身鎧なのはそのままだが、同じく装備が冒険者風に偽装されている。

 まさか中身がドライアドとは思えないだろう。


 オボロは、全身黒装束はそのままだが、頭巾から除く目の辺りが完全に人間の物に変わっている。

 正に、忍者職の冒険者といった感じだ。


 リンネは、元々見た目が人間そのものなので、装備が一般的な僧侶職の物になった以外は全く変わっていなかった。


 そして、肝心のシオンだが……


 『いやー、やっと着きましたね、首飾りの中は意外と快適なんですが、如何せん退屈なのがね……』


 俺の首から下げられた〈封印の首飾り〉の中で悠々自適にしている様だ。


 『後は、この魔物達の死骸がちょっとね……』


 もう一つ、意外だった事がある。

 シオンを〈大迷宮〉から連れ出すためのアイテムだったはずの〈封印の首飾り〉には、いわゆる格納庫的な使い方もあるらしく、様々な物を格納する事が出来るのである。

 最初は、実験がてら岩や木なんかを格納してみたが、どうやらサイズ的な制限は無いらしい。

 今は、リンネの助言で道中に退治した魔物達の死骸を格納している。

 これは、町に着いた時点で人間世界の通貨に換金するためだ。

 俺達は、魔王一行とはいえ、現在一文無しのため、町に入っても何も出来ない。

 そこで、魔物達の死骸を換金し、当面の収入を得ようという訳だ。

 外の世界の魔物は〈大迷宮〉の中と違い、倒しても粒子化はしない。

 人間の世界では、魔物達の死骸から様々な素材が取れるため、重宝されているとの事だ。


 幸い、〈大迷宮〉からここまでは、苦戦する様な魔物は出てこず、発見次第、片っ端から退治して来たので、かなりの数の魔物の死骸が〈封印の首飾り〉に収まっている状態だ。


 「まあ、確かに良い気分はしないかもしれないな、もう少しで町に着く。そうしたらすぐに換金してもらうから、あと少し我慢してくれるか?」

 『はいー、出来るだけ早くお願いします……』


 これだけ大量の魔物の死骸と一緒に閉じ込められるのは、やはり精神衛生上あまり良くないらしく、心なしか元気が無い様だ。


 そうこうしている内に、町がすぐ近くに見えてきた。

 魔物の侵入を防ぐためなのだろう、四方を高い壁に囲まれており、正面の門からしか入れない様だ。


 門の前では武器を持った門番達が待ち構えており、その前に町に入ろうとする冒険者や商人達が行列を作っている。

 俺達はそのまま、その列の最後尾に並んで順番を待つ事にした。



 ……何だろう、周囲から物凄く見られている気がする。

 そんな事を考えていると、リンネが耳打ちしてきた。


 「……魔王様、やっぱり私達、かなり注目されてますね……」

 「……やっぱり気のせいじゃなかったか……何でこんなに見られているんだ?」

 「……単純に私達が目立つからじゃないですか?変化の宝玉で偽装出来ているとはいえ、普通の人間達のパーティーと比べたら、かなり癖のあるパーティーだと思いますので……」


 ……なるほど、確かに俺達のパーティーを見てみると――

 銀髪の俺、大柄で白髪で大剣を背負うラセツ、更に大柄で全身鎧のコダマ、全身黒装束のオボロ、そして紅一点のリンネか……


 びっくりするくらい目立っとるわ!


 周りを見渡しても、一般的な装備や服装で固めた人達しかいない。

 そんな中で、こんな風貌の奴らが紛れ込んでいたら注目しない方がおかしい。


 一気に気まずくなり、出来るだけ目立たない様に身をすくめて順番を待つ事にした。



 ……そうこうしている内に順番が回って来た。

 ここは、元人間のリンネが対応する。


 「……君達は初めて見るな……何というか、凄い集団だな……」

 「ええ、よく言われます。私達は普段は、ベルンハイムの反対側のイムルの町の方で活動しているんですが、今回は一足伸ばしてこのアランドラの周辺で一稼ぎしようかと思いまして……」

 「……なるほどな。道理で見ない顔だと思った。冒険者でお金が目当てという事は、この後はギルドに行くのかい?」

 「はい、道中で討伐してきた魔物達の素材を換金してもらう予定です」

 「……魔物達の素材?そんな物、どこにあるんだ?」


 門番が怪しんでいる。

 確かに今の俺達は皆手ぶらだ。魔物の素材等は持っていない。

 他の冒険者たちは荷車やズタ袋を利用して持ち込んでいるのに、怪しまれても仕方がないだろう。


 そこで、俺が口を挟む。


 「ああ、俺達はとあるアイテムを持っていてな。魔物の素材を格納できるんだ、ほら、こんな風に」


 百聞は一見に如かず、俺は実際に一匹の魔物死骸を首飾りの中から出して見せた。

 これは、さっき仕留めたウサギの魔物の死骸だ。


 「おお!なんとこれは〈格納魔法〉か?噂には聞いていたが実際に見るのは初めてだ……わかった!通過を許可する。疑って悪かったな、ギルドは門をくぐって真っ直ぐ行った所にある」

 「いやいや、こちらこぞありがとう」

 「アランドラの町へようこそ、気をつけてな」


 こうして、俺達は外の世界で最初の町となる、アランドラへと到着したのだった。

 

お待たせしました。

第二章開始です。

第一章がひたすらダンジョンの中の話だったので、ここから色々な場所を舞台に話を広げて行きたいです。

転生には付き物のギルドなんかも出てきますので、ご期待下さい。


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