エピローグ 新たな旅立ち
今回、第一部最終回となります。
今までお付き合いありがとうございました。
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「よし……いよいよ明日は外の世界へ向かって出発だな」
俺は自室のベッドで仰向けになりながら呟いた。
あの後、一度解散し、それぞれ明日の出発に向けて英気を養う事になったのだ。
ラセツとコダマは玉座の間で何やら特訓をすると言っていた。
リンネとオボロは自室でゆっくり過ごすらしい。
シオンはどこかで勝手に過ごしているだろう。
俺の部屋に入りたがっていたが、断ってやった。
たまには俺もゆっくりしたいし、どうせその内勝手に侵入して来るだろう。
という訳で束の間の自分の時間を手に入れ、自室でのんびり過ごしているという訳だ。
(……しかし、転生してから色んな事があったよな……)
いつしか俺は、転生してからの今まで起こった事に思いを馳せていた。
(本当に、転生前では考えられない様な事ばかり起こったよな……)
転生してからのシオンを始めとした仲間達との出会いや、強敵達との戦い、そして神との邂逅……
何より、あの『NHО』の世界に存在出来ているという事が本当に夢の様だ。
「……これからは、更に外の世界で冒険出来るんだな……」
今までは〈大迷宮〉の内部のみしか冒険出来なかったが、次からは世界中を旅する事が出来る。
転生前に寝食を忘れプレイした『NHО』で得た知識を……
転生後にこの〈大迷宮〉で得た経験を……
自分の全てをぶつける事が出来る……
(これからが本当の『NHО』体験の始まりだな……)
そう考えると、自然に鼓動が高鳴るのが分かった。
「……よし、明日の出発に備えて早めに寝るか」
高鳴る鼓動を抑え、外の世界へと万全の態勢で挑むために、今日は早めに休む事にした。
「シオンが来るまえに寝ないとうるさいしな……」
「……呼びました?」
「いつの間に入ったぁ!」
結局、シオンに邪魔されながら、夜は更けていく――
いよいよ、転生魔王は〈大迷宮〉での最初の関門をクリアし、外界へと赴くのであった――
◆◆◆◆
その頃、とある街の闘技場での出来事――
ここでは、世界中から集まった格闘家や腕自慢達が日夜、勝負を繰り広げている。
この街では、腕次第で何でも手に入れる事が出来る、金も、食料も、土地も、名声も。
それらを求めて今日も、数多の実力者達が集まっていた。
その中で、一際目立つ挑戦者が一人――
「……なあ、見てみろよ……あんな奴今まで見た事あったか?」
「……いや、初めて見るな。 しかし、あいつ……どう見ても獣人じゃないか?」
「……ああ、それもかなり野性味溢れるタイプの獣人だな……」
その挑戦者は全身が黄金の毛色で覆われた獅子の様だった。
「さてと、ここから俺の伝説が幕を開けるんだな。 全く、腕が鳴るぜ……ちょっと前に急に人間の言葉が話せる様になったと思ったら、闘争心が疼いて仕方ない……とりあえず、ここの街で最強の座を獲得してやろうか」
一人で意気込みを話すこの獅子は、これから自らの身に降りかかる運命に当然ながら全く気付いていなかった――
◆◆◆◆
とある、都市の外れにある宿屋にて――
「な!?……また負けただと! これで何連敗目だ! イカサマでもしてるんじゃないのか!?」
お世辞にも綺麗とは言えない身なりをした荒くれ者が声を荒げている。
「いやいやー、イカサマやなんてひどいわ、うちは清廉潔白がモットーやのに」
どうやら、この宿屋では闇賭博が行われているらしい、そこで負け続けた荒くれ者が、胴元の妙な言葉使いの女性に怒声を上げている。
「どう考えてもおかしいだろうが! こんな賭けは無効だ! 俺は帰るぞ!」
「お兄さん、それはさすがに厳しいで、ちゃんと勝負した結果や、きっちり払うもんは払うてもらわな、こっちも困るんやわ」
「……うるせえ! 女の癖に生意気だ! 手前なんか俺に掛かれば簡単にあの世行きなんだからな!」
荒くれ者の男はそう言いながら、懐からナイフを取り出した。
「なっさけな、これやから肝っ玉の小さいチンケな男は嫌いなんや、もうええわ、見逃したるからさっさと尻尾を巻いて逃げなはれ」
「っくそ! 俺を馬鹿にするのもいい加減にしやがれ、この女狐がぁ!」
男はナイフを振りかざし、女性に向かって行く。
「……はああ、しゃあないな、〈■■■■〉」
女性がぼそっと何かを唱えると、男の周囲が急激に燃え上がり、男を火だるまにした。
「……があああ! 熱い! 助けてくれー!!」
「じゃあ後は頼むわー」
女性は、横で見ていた配下の者達に後始末を任せて、奥に下がって行った。
「いやぁ、ちょっと前に急に使える様になったけど、やっぱりこの力は便利やわぁ」
そう呟く女性のお尻の辺りではふさふさとした尻尾がゆったりと揺れていた。
不思議な力を使いこなすこの女性も、この後、自らの身に激動の運命が待ち受けている事を知る由も無かった――
◆◆◆◆
ここは、世界のどこかにある巨大な城の玉座の間――
「……報告させて頂きます。ギレンが人間共に敗北した様です。」
「……そうか、あのギレンがやられたか。あれ程の使い手でも勝てないとなると、やはり人間共の力がかなり増してきている様だな」
「はい、このままでは我らの敗北も時間の問題化と……如何なさいますか?」
「ぬうう……少し考える……今しばらく指示を待て」
「……承知致しました…………【魔王様】」
配下の者はすっと立ち上がると一礼をしてその場を去って行く。
ついさっき、魔王と呼ばれた者はそのままどさっと玉座に深く腰掛け直し……
「はああ……魔王というのも楽ではないな……」
そう呟きながら目頭を押さえた――
◆◆◆◆
様々な者の様々な運命がいずれ複雑に絡まり、一つの物語を紡いでいくであろう。
魔王ヤクモは、その物語を自らの物にすべく全力で戦って行く。
全ては『NINE HERОES ОNLINE』の世界で生き抜くために――
第一章 完
これにて第一章は終了となります。
ここまでご覧頂きありがとうございました。
只今、第二章を全力で執筆中です。
こちらに関しては順次投稿させて頂きます。
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