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第40話 神からのギフト

 パーティーメンバー全員が無事に進化を終え、今は食堂にて食事をしながら今後の行動予定を話し合う手筈になっている。


 実は、今回の進化で嬉しい事が一つ起こった。

 リンネが食事を取れる様になったのだ。

 厳密にはまだアンデットではあるが、より上位のアンデット種へと進化した結果、食事を取れるまでには、人間に近付けたらしい。


 「……美味しい! ちゃんと味がします! ご飯がこんなに美味しいなんて……夢みたいですぅ!」


 今は、俺のおススメのカレーを食べながら感動している様だ。

 その横では、ラセツが相変わらず汚い食べ方でステーキを貪っている。

 その隣では、コダマが水を接種するために、指先をコップに突っ込んでおり、更にその隣では、オボロが口元を隠しながら静かに肉を食べている。

 俺もリンネと同じくカレーを食べながら、四者四様の食事の様子を見つめていた。


 「……良いなぁ、皆さんの食事を見ていると、さすがに私も食べたくなってきました……まぁ食べれないんですけどねー」


 思念体であり、食事が取れないシオンが口を尖らせている。

 自分だけ食事が取れない事に対して、やはり不満があるのだろう。


 「まぁまぁ、いつか本体の封印を解いて食事が取れる日が来るって」

 「本当ですからね!確かに約束しましたからね!」


 少し前に、シオンと交わした約束、どこかに封印されているシオンの本体を解放して、改めて仲間として招き入れる、という約束を守るためにも、まずは次の行動を起こさなければならない。


 いつしか、全員の食事が終わり、今はゴーレムが空になった食器を片付けている所だ。


 「……さて、腹も膨れた所で、今後について相談しようか」


 やっと本題に入る事になる――


 

 「今の俺達がやるべき事は二つある。 一つは残り四人の仲間を探す事、二つ目はこの〈大迷宮〉を踏破する事だ」

 「確か、残りの仲間候補の資質スキル持ちは外の世界に二人、この〈大迷宮〉の地下51階以降に二人いるんですよね?」

 「ああ、そうだ。 だから、俺達は外の世界に行くか、〈大迷宮〉に再び潜るか、どちらかを選択する必要があるな」

 「〈大迷宮〉の地下51階以降は難易度的にはどうなのだ? 今の我輩達でどこまで戦えるのだ?」

 「シオン、地下51階以降のフロアボスの情報は出せるのか?」

 「はい!以前は無理でしたが、地下51階以降が解放された時に情報が解禁された様なので、今ならわかりますよ!」


 ……シオンから教えられた地下51階以降のフロアボスの情報は以下の通りだった。


 地下60階 エンペラーリザードマン ランクB

 地下70階 エンシェントガーディアン ランクB

 地下80階 エレメントマスター ランクA

 地下90階 カオスドラゴン ランクA

 地下99階 ■■■■■■■■■■■


 ――やはり、地下50階までとはレベルが違う、今の俺達と同ランクのボスは地下70階までで、地下80階からは、何とランクAのボスが控えている。

 地下99階の情報はまだ解禁されていない様だ、この〈大迷宮〉のラスボスとなる存在だ、それだけでもどれだけ恐ろしい魔物が控えているのか、考えただけで億劫になる。


 確か、ランクAと言えば、国一つを単体で滅ぼせるレベルだったな。

 そんな恐ろしい魔物が二匹もいるんかい、このダンジョンは。


 「リンネは以前は外の世界にいたと思うが、ベルンハイム王国にランクB以上の魔物はいるのか?」

 「……ええと、いない事は無いんですけど、滅多に遭遇する事は無いですね、基本的にはランクD以下の魔物ばかりで、たまにランクCの魔物が出現したりはします、ランクBなんて出現したら国を挙げての大騒ぎになりますよ」

 「……やはり、そうだよな。という事は難易度的には次は外の世界に行く方が正解の様な気がするな、確か神の奴もそんな事を助言してくれてたし」

 「ああ、我もそう思う、外の世界で仲間を増やすと共に、我らも強くなる必要があるだろう。 その上で〈大迷宮〉に挑む方が良いだろうな」


 ……よし、方向性は決まったな。

 やはり、次に俺達が目指すべきは、外の世界に決定だ。


 「……でも、魔王様、リンネさんはまだしも、皆さんそんな恰好で外の世界に出るんですか?」

 「……確かに、間違いなく大騒ぎになりますね……」


 シオンとリンネがとうとう気付いてしまった。

 ほぼ人間と変わらない外見のリンネ以外は、どちらかというと魔物よりの外見の面子が揃っている。

 俺とラセツには立派な角が生えており、コダマは全身が鎧、オボロは目が赤い光を放っている。

 こんな状態で人里に近付こうものなら、一発で討伐対象として注目の的になるだろう。


 「……後、もう一つ気になる事があるんですが」


 リンネが続ける、今度は何に気付いてしまったんだ……


 「シオンさんって、外の世界に出れるんですか?」

 

 リンネの言葉に他の皆がハッとした顔をしながらシオンを見つめる。


 「……さすが、リンネさん、鋭い所に気付きましたね。 仰る通り、私は外の世界に出る事は出来ません。 神様からこの〈大迷宮〉でのガイドという事で思念体として生かされている身ですので――」


 ……そういう事か、今まで一緒にいすぎて気付かなかった。

 

 「まあ、さすがに寂しいですけど、こればかりは仕方ないですね、私はここで皆様の無事を祈ってます」

 寂しげな表情でそう呟くシオンだが、本音は一緒に付いて来たいに決まっている。


 「整理すると俺達の外見と、シオンが一緒に来れない件、この二つが問題点か……」


 (何とかならないもんかな……)


 俺が頭の中で解決策は無いか知恵を絞っていると――


 

 不意に、食堂の天井の辺りが一瞬輝いた。


 「何だ!?」


 突然の事態に俺達が驚いていると、その光の痕からひらひらと紙の様な物が落ちてくるのが見える。


 「……これは、神からの手紙か?」


 俺が転生直後に受け取った神からの手紙の時とほぼ同じ様な現象だ。

 そのままひらひらと俺の手元まで舞い降りてきた手紙をキャッチする。


 (一体何が書かれてるんだ?)


 直ぐに封を開け、中身を確認する――



 ◆◆◆◆


 やあ、元気かい?

 この前は楽しかったよ。

 君さえ良かったらまた、色々と話せたら嬉しいな。


 話している中で、僕から何かのアイテムを渡すっていう約束を覚えているかい?


 あれから、僕なりに色々と考えたんだけどね、物凄く君達が欲しがりそうな物を二つばかり思い付いたから、それをプレゼントする事にしたよ。


 〈変化の宝玉〉と〈封印の首飾り〉って言うんだ。


 効果はそれぞれのアイテムに説明書を付けておくからよく読んで使って欲しい。


 君達が気に入って来る事を心から祈っているよ。

 それじゃあ、外の世界での冒険を楽しんでね!


 ◆◆◆◆


 手紙を読み終えた瞬間、近くのテーブルで先程と似たような光が一瞬だけまた輝いた。

 光が収まった後にテーブルの上を確認すると、小包程度の宝箱が二つ並んで置いてあった。


 「……これが神からのプレゼントか?」


 俺はまず一つ目の宝箱を手に取って開けてみると、中には手の平サイズの球が入っていた。

 

 「これが〈変化の宝玉〉か?」


 宝箱の中には何やら文字が書かれた紙が一緒に入れられていた。

 その文字を読んでみると――


 『変化の宝玉 : 魔物達を一時的に人間の姿に変化させられる。変化中の能力は変化前と変わらない。宝玉から離れて一日経つと効力は無くなってしまう』


 ……正に今俺達が欲しいアイテムその物じゃないか。

 しかも、この紙の内容を信じるならば、人間の姿に変化している間のリスクも特に無い様だ。

 さすが、神からのプレゼント、チート級の一品と言えるだろう。


 (……となると気になるのはもう一つのアイテムだな)


 俺はそのままもう一つの宝箱を開けると――


 中には、紫色の宝石が付いた首飾りが入っていた。

 こちらも、文字が書かれた紙が一緒に入れられている。


 『封印の首飾り : 様々な物を宝石に封じ込め、外に持ち出す事が出来る。封印可能なものは魂や思念体、物資等に限られる』


 ……これも、正に今俺達が必要としているアイテムに他ならない。

 この首飾りにシオンを封じ込めたら外の世界に連れ出せるのだろう。


 (……まさか、俺達の会話を聞いてたんじゃないよな……)


 先程の俺達の会話を盗み聞きされていたとしか思えない程に、ピンポイントで必要なアイテムを送り付けてきた神に疑念を頂きつつも――


 「まあ……これで外の世界に打って出れるな」


 二つの難題があっさりと解決された事に対して前向きになる俺達であった――

次回、第一章最終回となります。

ここまでお付き合いありがとうございます。


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