第39話 ランクBへの進化
今回は待ちに待った進化回です。
やっとランクBに進化出来ます。
神との遭遇を無事に乗り切った俺達は、食堂に集まり食事を取りながら話し合いを行っていた。
シオンの素性に関しては、他の皆にも正直に話した。
……もちろん、シオンの許可を得た上での話だが。
シオンも、自分の正体を隠したままだと接し難い部分もあったみたいなので、自らの正体を明かせた事でかなりすっきりした様だった。
皆も最初は驚いていたが、今までと同じ様に接しようという俺の意見に特に異論等は出ず、全員で協力してシオンの体を取り戻そうとう意見で一致した。
これには、シオンも感動した様で――
「皆さんの優しさで前が見えないです……思念体なので涙出ないんですけどねー」
なんてことを、のたまっていた。
後もう一つ、俺の事でも皆に打ち明けた事がある。
〈俺が人間から転生した〉という事実を俺の口から正直に伝えさせてもらった。
最初は悩んだが、神との遭遇での俺の言動を見て、色々と腑に落ちない事も出てくるだろう。
皆が色々と考え込む前に、自分の口から真実を述べてしまおう――という事でシオンの素性の話の後に、皆に話をさせてもらったという訳だ。
俺の話に関しても皆の反応はシオンの時と同様だった。
最初はある程度は驚いていたが、直ぐに皆の反応は普段と変わらなくなった。
考えてみたら、全員が他の種族から俺のスキルで大幅な進化を遂げている存在だ。
リンネに関しては、元々は人間であり、それ程違和感なく受け入れてくれている様だ。
ちなみに、シオンは元々俺の正体を知っていたので、もちろん普段通りだ。
「魔王様、皆さんに引かれなくてお互い良かったですねー」
……なんて軽口を叩くくらいには元気が戻っている様だ。
「――さて、そろそろ玉座の間へ行こうか」
俺の言葉で皆が席を立ち、玉座の間へ移動を始める。
これから重要なイベントを控えているためだ……
――そう、ランクBへの進化を行うためにだ――
今回のゴブリンキング戦の直後に流れて謎のアナウンスが告げた事象の一つが【パーティー全員のランクBへの進化条件の達成】だった。
あの直後に期せずして、神と遭遇してしまったばかりにお預けになってはいたが、今回は全員一気にランクBになってしまおうという心積もりだった。
「……さて、改めて進化を開始するにはどうすれば良いんだ?……シオン、何かわかるか?」
「皆さんは、既に進化条件を達成されてます。後は心の中で望むだけで進化が開始されるはずです」
(心の中で望むだけでか……こんな感じかな?)
ランクBへの進化を心の中で想像した瞬間――
『〈魔王ヤクモ〉より、ランクBへの進化の要請を確認……進化条件の達成完了を再確認――』
ゴブリンキングを討伐した事で達成されたランクBへの進化条件――
『〈魔王ヤクモ〉の進化要請に伴い、個体名〈ラセツ〉〈リンネ〉〈コダマ〉〈オボロ〉に魂の共有による進化共有が適応されます……個体名〈ラセツ〉〈リンネ〉〈コダマ〉〈オボロ〉の進化条件の達成完了を再確認――』
更に魂の共有により、仲間達にも進化条件達成が共有された結果――
『――――〈魔王ヤクモ〉〈ラセツ〉〈リンネ〉〈コダマ〉〈オボロ〉の進化を開始します』
五人同時の進化が開始された。
アナウンスと同時に五人全員の体が眩い輝きを放ち出す。
「……よし、皆しばらくの我慢だ……もう少しすれば、全員で……ランクBになれる」
俺の言葉が終わると同時に輝きが一気に増し始め、周囲が光で埋め尽くされた。
黄金の光が奔流となって、玉座の間に溢れ出す。
(おお……五人一気に進化ともなると、さすがに物凄い光り方だな、眩しすぎて何も見えないぞ……)
それぞれが光の中心で進化の真っ最中だが、光の勢いが凄すぎて周囲の様子が全くわからない。
(……あれ? ……何だか、眠くなってきたぞ……くそ……眠すぎて……立ってられない…………)
突然、急激な眠気に襲われ、立っているのも辛くなってきた。
(……他の皆も……そうなのか……駄目だ……もう起きて……られな……)
いつしか限界が訪れ、俺の意識は遠くなっていった――――
「…………はっ!?一体ここは……?」
俺は目を覚ますと同時に体をがばっと勢いよく起こした。
(確か、進化中に急激に眠くなった所までは覚えているんだが……)
気付いた時には玉座の間にひかれた布団の上で寝かされていた様だ。
(……ここは玉座の間か、どうやらしばらく意識を失っていたらしいな、目を覚ましたって事は無事に進化を終える事が出来たのか?)
疑問に思っていると、どこからか聞き慣れた声が響いてきた。
「あっ!魔王様も目を覚ましたんですね!良かったです!」
シオンがパタパタと羽根をバタつかせながら飛んできた。
「ああ、どうやら無事に進化出来た様だな。他の皆はどうしてるんだ?」
「ええ、他の皆さんも無事に進化を終えられて、今は居住スペースにおられます。魔王様が一番最後ですよー」
「そうなのか?俺は一体どれくらい眠っていたんだ?」
「そうですね、大体二時間くらいですかね?皆さんも起きられたのはついさっきですよ、とりあえず皆さんを呼んできますね!」
シオンが勢いよく飛び去り、仲間達を連れて戻って来た。
俺は玉座に座り、進化した皆の姿をじっくりと見る。
それぞれが恐ろしい程の進化を遂げているのがわかる。
……そういえば、自分の姿は変わっていないのか?
「シオン!前に出してくれた鏡を出してくれ!」
「はいよー、どーん!」
シオンの合図で大きな鏡が上から降って来る。
そういえば、これはどんな原理なんだろう?
とりあえず、鏡に自分の姿を映してみた……
「えーと、そんなには変わってないかな……?」
見た感じは、着ている鎧が少し禍々しくなった位だな。
顔はほとんど変わっていない……いや、よく見ると、側頭部から生えた黒い角が曲線を描き、先端を天に向けている。
「ああ……そういえばこんな角を付けた魔王っていたよなー」
俺がイメージしていた魔王像により近付いてしまった様だ。
そういえば、ステータスはどうなったんだろう?
〈鑑定〉を使用してみる。
名称 : ヤクモ スメラギ
クラス : 新米魔王
ランク : B
Lv : 1
HP : 2020/2020
MP : 2008/2008
攻撃力 : 2034
防御力 : 2011
魔法力 : 2467
素早さ : 2005
スキル : 魂の共有
鑑定
闇魔法〈Lv8〉
魔王剣
聖魔合一
魔王の盾
魔影鎖縛
えーと、新米魔王か……
新米……?新米って何?そんなクラス名があるの?
確かに見習い魔王よりはマシな感じがするけど、新米魔王も大概だよなぁ……
ステータスは、レベルが1になった事もあって、多少下がっているが、これはレベルを上げれば直ぐに戻るだろうから問題は無いだろう。
寧ろ、レベル1で全ての項目が2000を超えている分、確実に底上げされている。
これはレベル上げが楽しみだな。
スキルは、全く変わっていなかった、ランクBになれば新しいスキルを覚えられるんじゃないかと、期待していたので、これは正直残念だった。
ただし、魂の共有の残り回数が4/8回になっていた。
……という事は、全部で8人の仲間を獲得可能で、残り4人までスキルを使用する事が可能という事だ。
まあ、スキルは仲間を増やせば新たなスキルを獲得出来るのはわかっているので、そっちに期待することにする。
続いては、ラセツの進化を確認してみる――
名称 : ラセツ
クラス : オーガ・ソードマン
ランク : B
Lv : 1
HP : 1982/1982
MP : 1447/1447
攻撃力 : 2010
防御力 : 1732
魔法力 : 0
素早さ : 1830
スキル : 剣王の覚悟
鬼王剣
剣術〈Lv8〉
闘気解放
ラセツは、種族がゴブリンからオーガに進化している。
それに伴い、見た目も緑色の肌から赤黒く変化していた。
顔も更に人間味を増し、凛々しくなっており、漆黒の角に白色の長髪、赤黒い肌に漆黒の甲冑と正に戦う鬼神という感じの見た目だ。
更に禍々しくなった大剣を背負っており、戦闘ではとてつもなく頼りになりそうだ。
スキルは〈闘気解放〉というスキルを獲得している。
詳細を確認してみると――
闘気解放 : オーガとなった者が獲得出来るスキル、体内に眠る闘気を解放し、一時的にステータスを大幅に上昇させる。
〈闘気解放〉は一時的にステータスを大幅に上昇させる効果を得る事が出来る様で、俺の〈聖魔合一〉と似たような感じだな。
常に前線で戦うラセツには打ってつけのスキルと言えるだろう。
次に、リンネの進化を確認してみる――
名称 : リンネ
クラス : レヴァナント・ハイプリースト
ランク : B
Lv : 1
HP : 1703/1703
MP : 2101/2101
攻撃力 : 810
防御力 : 975
魔法力 : 2358
素早さ : 927
スキル : 聖王の慈愛
魔王の加護
回復魔法〈Lv8〉
聖輪波動
リンネも驚くべき進化を遂げている。
基本的には見た目は変わっていないが、心なしか全体的に成長し、大人びた様に見える。
髪の毛も伸び、年齢でいえば二十歳くらいか?
彼女を見て、一発でアンデットと見抜く者は最早いないだろう。
服装も、更に神官っぽくなっており、凄みを増している様に感じる。
スキルも新たに〈聖輪波動〉を獲得している。
聖輪波動 : 上位の聖職者となった者が獲得出来るスキル、聖王の力を波動に変えて放出する事が出来る。
……なるほど、ここに来て攻撃スキルか、確かにリンネは回復役に徹していたので、戦闘中に出番が回ってこない事も多かった。
これはこれで、かなりの戦力となるかもしれないな。
それでは、次はコダマの番だ――
名称 : コダマ
クラス : ドライアド・ナイト
ランク : B
Lv : 1
HP : 2210/2210
МP : 1627/1627
攻撃力 : 1654
防御力 : 1975
魔法力 : 1589
素早さ : 1627
スキル : 盾王の矜持
樹霊障壁
守護魔法〈Lv8〉
神樹槍
コダマは見た目に関しては、全身鎧の姿はそのままだが、その鎧のグレードが明らかに上がっている。
何というか、今までの鎧と輝きが違う……
持っている盾も進化前よりサイズも大きくなり、グレードアップしている様だ。
種族もトレントから、ドライアドに進化した様だ。
サイズも一回り小さくなり、かなり人間味が増した様に見える。
スキルは新たに〈神樹槍〉を獲得した様だ。
神樹槍 : 世界のどこかに眠る神樹を守護するドライアドに進化した者が獲得出来るスキル、一時的に自らの武器に神樹の力を宿らせ、攻撃力を大幅に上昇させる事が出来る。
……なんと、攻撃系のスキルを覚えている。
確かに、コダマは今まで前衛でありながら守備系のスキルしか覚えていなかった。
これからは、敵の攻撃を防ぎつつ、自らも強力な攻撃を仕掛ける事が出来る。
これはかなり大きな進化と言えるだろう。
それでは、最後にオボロを見てみる――
名称 : オボロ
クラス : 修羅忍蜘蛛
ランク : B
Lv : 1
HP : 1803/1803
MP : 1501/1501
攻撃力 : 1787
防御力 : 1760
魔法力 : 1715
素早さ : 2089
スキル : 影王の殺意
幻影操術
粘糸
忍術〈Lv8〉
幻影手裏剣
オボロはある意味一番大きく進化をしたと言えるかもしれない。
見た目は、進化前はどちらかというと蜘蛛に近い見た目だったが、今は完全に人型と言える様な外見となっている。
全身に黒の装束を纏った様は、正真正銘の忍者と言える。
目元のみ見えているが、眼光は以前と同じく鋭く赤く光っている。
スキルは幻影手裏剣といういかにも忍者っぽい名前のスキルを獲得している。
幻影手裏剣 : 影王が上位の忍者へと進化した時に獲得出来るスキル、自らの影を大小様々な大きさの手裏剣へと変化させる事が出来る。
このスキルは〈幻影操術〉を更に攻撃的にしたスキルだな。
かなり汎用性が高そうでオボロにピッタリと言える。
これで全員の進化後のステータスの確認が出来た。
結論から言うと、予想以上の戦力アップを果たしたと言えるだろう。
レベルは全員1になってしまったので、ステータス的には多少減少しているが、それぞれが覚えたスキルが、今まで不足していた所を補う様なスキルとなっているので、今後の戦闘に置いて絶大な効力を発揮するだろう。
「……いや、皆本当に見違えたな。今後の戦いが今から楽しみで仕方ないよ」
「魔王様こそ、立派な角が生えて更に魔王らしくなっちゃいましたね」
「うむ、それでこそ我輩達の魔王だな」
「ああ、我らの新たな魔王の誕生を誇りに思うぞ」
「…………」
皆を褒めるつもりが、逆に持ち上げられた。
オボロに関しては、無言で指でサムズアップしている。
どこで覚えたそんなもん。
「魔王様、魔王様」
「ん?何だシオン?」
「そんな角が生えたら、寝る時に邪魔で仕方ないですね」
「進化直後にかける言葉がそれか?」
……まあ確かに邪魔そうだけども!
また対策は考えるとして、この後は、全員のステータスを把握した上で、今後の行動予定に関して皆で作戦を練ることになっているため、一度食堂へ移動する事にした。
やっと皆進化できました!
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