第37話 九大英雄について
『九大英雄について?例えばどんな事を教えて欲しいんだい?』
「詳細についてわかる事は全て教えて欲しい。これから外の世界に出向くとなれば必ず関わらざるをえないだろうかな……色々と頭に入れておきたいんだ」
『なるほど……殊勝な心掛けだね。とりあえず九大英雄それぞれの名前と〈英雄職〉に関しての情報は知っているね?まあ一応、復習がてら教えておこうか……
〈勇者〉 アシュレー
〈剣帝〉 バルバロッサ
〈聖女〉 セラフィリア
〈大賢者〉 エルローネ
〈騎士王〉 ゼノスフリード
〈魔戦将軍〉 マグナダイン
〈武神〉 ガーランド
〈神弓手〉 アルテワイス
〈極忍〉 ジンオウ
……以上の九名が偉大なる英雄たち〈九大英雄〉と呼ばれる者達だ』
「ああ、そこまでは『NHО』をプレイしていた者ならば知っている。問題は、この九人が今の異世界でどんな役割を果たしているのか……その辺りを詳しく教えて欲しいんだ」
ゲーム内の情報ならばある程度は頭に入っているが……恐らくこの異世界では状況はかなり変わっているだろう。
『なるほどね……まあこの辺りも知っているだろうけど、このアースフィアには八つの国が存在している。
【ベルンハイム王国】
【神教国・リーンクラフト】
【魔導国・ギルモア】
【エルディア公国】
【ガルガノ連邦】
【連合国・シヴァ】
【精霊国家・フィリア】
【東都・カムイ】
……〈勇者〉を除く〈九大英雄〉はそれぞれの国のトップだね、この形は数百年間変わっていないよ』
「そうか……〈勇者〉は普段はどこにいるんだ?」
『さあね?基本的に彼は根無し草で世界中を旅しているみたいだ、その気になれば探せるけど、別にどこにいようとあまり興味は無いからね』
「……そうなのか?〈勇者〉ともなると人類側のトップ戦力だろうに、そこに興味を持たないのは少し意外だな……」
『あはは……まあ、その辺りもね……その内わかると思うよ』
一々、思わせ振りな事を言ってくる神に対しては、少しイラっとする所もあるが、せっかく情報を聞き出すチャンスなので、態度には出さず話を続ける。
「それぞれの国の関係は?これだけの国があるならば戦争中の国とかはあるんじゃないのか?」
『うーん……昔はそれなりに争ってたりはしていて楽しめたんだけどねぇ……今はかなり懲りたみたいで、たまに小競り合いなんかが起こっても直ぐに鎮火しちゃうんだよね、僕的にはずっと戦争してもらってても良いくらいなのにねぇ』
……やっぱりこいつは碌でもないな。
だが、国同士の戦争等は現在は起こっていない事がわかったのは収穫だ。
外の世界で戦争に巻き込まれるのはごめんだからな。
「それぞれの能力を教えて欲しいんだが」
『それは……辞めておくよ!そこは自分で体験してもらわないと面白味がないからね。一つだけ伝えておくと、九人とも正真正銘の化け物揃いって事だね。君たちが苦戦したゴブリンキングくらいなら、全員一撃で倒してしまえるのは間違いないね』
やはり、実力的には化け物揃いという事らしい。
『NHО』の時から〈九大英雄〉は最強のNPCとして、全プレイヤーから恐れられていた。
この異世界でも当然、最強の名を欲しいままにしているという事だろう、
『まあ……一つだけサービスで教えておくと、この〈大迷宮〉があるベルンハイム帝国の〈剣帝〉バルバロッサ、こいつには今は近付かない方が賢明だね。実力、性格共に今の君に手の負える相手じゃない。
外の世界に出たとしても、これだけは肝に銘じておくが良いさ』
……この〈大迷宮〉はベルンハイム帝国の領内にある、という事は外に出た時に関わる可能性が最も高いのは、言うまでも無く〈剣帝〉バルバロッサだろう。
だが、神の言う事を信じるならば、良好な関係を築けるとは思い難い。
(ここは、言う事をアドバイスを素直に聞いておいた方が無難だろうな)
「……逆に、友好的な関係を築けそうな奴はいないのか?」
『うーん……敢えて言うならば〈聖女〉セラフィリアか〈騎士王〉ゼノスフリードあたりじゃないかな?他の〈九大英雄〉と比べると、まだ外面はマシな方だからね。だからといって油断したらいけないよ。基本的には全員どこかしら狂ってると考えて接した方が良いだろうからね』
……何かすごい嫌な事を聞いてしまった。
いつか〈九大英雄〉と絡む可能性があると思うと、憂鬱になってしまいそうだ。
『他に聞きたい事はあるかい?基本的には〈九大英雄〉に関しては、君達が自ら出会った上で、直接的に色々と知って欲しいと考えている。その方が面白い方向へ転がる可能性は高いだろうからね、せっかく癖の強い猛者達が揃ってるんだから楽しんでもらわないとね』
「……やっぱりお前はどこまでも自分が楽しむ事が最優先なんだな……つくづく実感したよ」
『あはは……褒め言葉として受け取っておくよ……さて〈九大英雄〉に関しては、この辺りで大丈夫かな?あまり具体的な情報を渡せなくて申し訳なかったね』
「ああ、かなり有益だったよ……」
『それは良かった……さて、最後の三つ目の質問に移ろうか、最後に聞きたい事は何だい?」
「……ああ、最後の質問は……『シオンは一体何者だ?』」
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