第36話 神との邂逅
「お前が……神だと?」
『ああ……その通りだ、やっと会えたね、ヤクモ君……いや、敬意を込めて魔王ヤクモと呼んだ方が良いかな?』
俺の問いかけに対してその光の球は皮肉交じりに答え始める。
「そんな事はどっちだって良い、そんな事より……一体どういうつもりなんだ?お前には言いたい事が山ほどあるぞ!」
『君が怒っているのは……ゴブリン・キングに調整を加えた事かい?それとも……魔王に転生させた事なのかな?』
「……両方だよ、俺は絶対にお前を許さないからな!」
慇懃無礼に答えてくる神に向かって怒りを隠そうともしない俺を見て、仲間達は何が起こっているのか理解出来ないという感じで困惑している。
『まあまあ……お仲間達も心配している事だし、一度落ち着いて話し合おうじゃないか、これでも僕は君と話せる日が来る事を心待ちにしてたんだから』
「……ふざけるな、言うに事欠いて落ち着けだと?どの口が言ってるんだ!」
『あはは……取り付く島もないとはこの事だね。まずゴブリン・キングの事に関しては、謝るよ。僕なりに戦いをもっと白熱した物にしたかったんだ。結果的には、僕はこれ以上ないくらいに満足しているけども、君たちを危険に晒してしまったことは事実だからね……挙句の果てに糞運営なんて言われてしまって、僕なりにかなり反省しているんだ。この通り、謝罪させて頂くよ』
あっさりと非を認めながら謝罪を始めた神に少し拍子抜けしたが、やはりそう簡単に許せるものではない。
「俺の転生に関してはどうなんだ?何故俺が魔王になったのか……お前の口からはっきりと説明してもらおうか?」
『うーん……それに関しては、僕の口から説明しても良いんだけど……どうしようかな? 自らの目で見て理解してもらった方が面白い気もするし……』
神は、しばらく悩みながら一つの結論を出した様だ。
『やっぱりこの場で詳細を説明するのは辞めておくよ!君がこのまま順調に強くなって、この世界の真実に近付いて行けば嫌でもわかる事だしね……その時まで楽しみにしておいて欲しい。僕もその時の君のリアクションを楽しみにしているよ!』
「……この期に及んでそんな説明で納得行くと思ってんのか?」
『あはは……やっぱり納得行かないよね?……うーん、どうしようかな……あっ、それならこういうのはどうかな?君の転生に関しては教えられないけど、他に君が知りたい事があれば一つだけこの場で答えてあげるよ。……ただし、答えられる範囲でね」
なるほど……考え様によっては、これはなかなか有利な条件だ。
確かに俺の転生に関しての情報は喉から手が出る程欲しいが、それはあくまで俺個人での話だ。
これからもこの異世界での冒険を続けるのであれば、他にも知るべき情報は山ほどある。
今回は、そちらの情報を優先しても良いのかもしれない……ただし……
「……教えてくれるのは一つだけなのか?」
『……何だと?』
「今回のゴブリン・キングの件といい、お前の不当な介入にはかなり迷惑を被っているんだ。もう少し譲歩してくれても良いんじゃないのか?……『NHО』でも運営がミスをすれば何らかの補填をするのは当たり前だったぞ」
『なるほどね……神である僕に対して更なる譲歩を求めるとは……本当に良い度胸してるね。面白いよ。そうしたら君はこれ以上僕に何を求めるんだ?』
「そうだな……教えてくれる情報を三つに増やして欲しい……後は、今後に役立つアイテムを一つ提供して欲しい」
「な!?……吹っ掛けてくるねぇ、ますます気に入ったよ!……わかった、条件を飲もう、アイテムの方は後ほど考えるとして、まずは聞きたい情報を三つ、聞こうか』
(……よし!こちらの案が通った!……後は、どんな情報を聞き出すかだ)
まず、何を聞き出すか迷っていると、周囲に黄金色の光の膜の様な壁が出現した。
ちょうど、俺と神だけを包囲した様な大きさで、仲間達とは完全に遮断されてしまった。
「……一体何をした?」
『なあに、ひょっとしたらこれからお仲間達に聞かれたら不都合な事も出てくるかもしれないだろ?ちょっとした親切心さ、この中での会話は絶対に外には漏れないからね』
……なるほど、確かにラセツ達が聞いたら混乱する事も出てくるかもしれない。
『さあ、一つ目に聞きたい事は何だい?』
「一つ目は……お前が俺に求めている『災厄をもたらす』とは一体何のことだ?お前は最終的に俺に何をして欲しいんだ?それなら答えられるだろう?」
『……なるほどね、確かにその質問になら答える事が出来る……』
神は、一呼吸置いた後で、説明を始めた。
『僕はね、この世界を作った時に、最終的には人間側と魔王側で戦争が起こると思っていたんだ。九大英雄率いる人類と魔王率いる魔族の間でね。長い年月を掛けてお互い力を蓄えた上で、成熟しきった戦力同士が全力でぶつかり合う……正に決戦だね。そんな光景が見たくてこの世界を作ったと言っても過言でではないだろう……しかし、何百年待ってもそんな兆候すら置きやしない、人類と魔族は小競り合いを繰り返すばかりでちっとも面白くならなかった……そこで君の登場だ。新たな魔王として、いずれ魔族側をまとめ上げて人類側に戦争を吹っ掛けて欲しい。それが僕が一番君に求めたい事かな…………とりあえず、こんな所でどうかな?』
「そ、そんな事のためにこの世界を作ったっていうのか?……ちょっと待てよ?今の話が本当ならばこの世界が出来てからもう数百年も経ってしまっているって事になるじゃないか!俺の世界で『NHО』が発売されたのは精々5年前だぞ!?」
『ああ、そんな事か……神である僕にそんな時間感覚なんて有って無い様な物だよ。ちなみに今は君が死んでから正に数百年は経っているね。僕くらいになると時間を超越して魂を運んでくるなんて朝飯前なんだよね』
神が告げる衝撃の事実に、俺は驚きを隠せない。
てっきり、俺が生きていた時代と並行した時間軸で転生していると思い込んでいたが、まさか数百年後の世界へ転生しているなんて、正直、全く考え付かなかった……
「……そんな……馬鹿な……じゃあ、現在は俺の住んでいる世界は……」
『全く別物の世界になっちゃってるね、気になるなら状況を伝えても良いけど、それは意味が無いんじゃないかい?君はその世界に干渉その物が出来ないからね。僕が君の魂に目を付けたのはそこが理由の一つでもある。今の時代の君がいた世界にそんなゲームにハマっている奴なんて一人もいやしない。その点、君が生きていた時代は『NHО』の全盛期だ。この異世界に転生したいなんて奴は腐る程いたからね、死に際にまで『NHО』の事を考えている君なんて正に打ってつけの人材だった訳だ』
神の説明に少し合点がいった。
だが、やはりどうしても譲れない部分がある……俺が人類と戦争を起こすという部分だ。
「……そういう事か……それで何故魔王に転生させられたかは、自分で解き明かすとして……俺は今の所人類と戦争するつもりなんてこれっぽっちも無い。お前の指示に従うつもりもない。ということはお前の想定通りにはなるはずもないだろうが……」
『まあ。それに関しては僕も強制するつもりもないけどね……あまり介入し過ぎても興ざめするだけだし……気分的には、もっとアグレッシブに人類への敵意を持って欲しいけどね、そのために色々とサポートはさせてもらってるつもりではあるよ。例えば、王の資質スキルを用意したり……シオンって言ったっけ?あのお供のコウモリを用意したり……後はほら、居住スペースなんて至れり尽くせりだろ?君の住んでいた世界を参考に頑張ったんだぜ!…………まあ、この件に関しては問題無いと考えているよ、君はこの異世界でいずれ、必ず人類側と戦う事になるだろう。理由は……その内嫌でも理解できると思うよ』
「な!?どういう事だ!?」
『だ・か・ら……その内嫌でもわかるって、よし!一つ目の質問はこの位で良いだろう、二つ目の質問に移ろうか!』
……何か凄く嫌な事を聞いてしまった気がする。
俺がいずれ人類側と戦争する事になるだって?とてつもなく不吉な予言を聞いてしまった……
(どんな事が起ころうとも、人類と戦おうなんて考えは絶対に起こらない気がするけどな……)
俺は納得がいかない表情を浮かべながら二つ目の質問をする事にした。
「それじゃぁ二つ目の質問だが……『九大英雄』について教えて欲しい」
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