第31話 仲間達が眠る場所
俺達は順調にレベル上げをこなしながら地下45階に到着していた。
ここにはラセツ達が暮らしていた集落がある。
今はもちろん誰も住んではいないが、ここに来た目的は他にある……
「ここが、ラティウス達のお墓なんですね……」
かつてゴブリンキングに敗れこのフロアで力尽き、ラセツ達によって埋葬されたリンネの戦友達の墓の前に俺達はいた。
遺体を埋葬し、木の棒を立ててあるだけの殺風景な墓ではあるが、リンネにとっては大切な仲間達が眠る場所には違いない。
「ああ……ラティウス、ポーラ、ノーマン、フィンクス……」
リンネは墓の前に跪いて祈り捧げる様に声を絞り出している。
「あなた達だけでも生きていて欲しかった……」
リンネは自らの命を捨て、ゴブリンキングから仲間達を逃がした……
しかしその仲間達もダンジョンから脱出する事は叶わず、この場で力尽きたのである。
「……大丈夫か?」
あまりの憔悴ぶりに心配になり声を掛けたが、リンネが気丈に返事をする。
「……はい、もう大丈夫です!仲間達が眠る所にお祈りも出来ましたし、私がこんな所でくよくよしてる訳にも行きませんしね!」
どん、と胸を叩きながら笑顔で答えるリンネは本当に強いと思った。
そこへ、ラセツとコダマがどこからか戻って来た。
手にはどこから摘んできたのか綺麗な花を持っている。
「……リンネ殿、こういう場合に何と言ったら良いのか……」
「我輩達からのせめてもの気持ちではあるが……このくらいしか力になれず申し訳ない」
そう言いながらそれぞれの墓に花を供えるラセツ達を見て、リンネが精一杯の笑顔を見せた。
「本当にありがとうございます。ラセツさんが皆のお墓を作ってくれたおかげでこうやってお別れを言うことも出来ました。コダマさんもありがとう、二人とも優しくて大好きですよ!」
リンネからのお礼の言葉にラセツとコダマが明らかに照れた表情を浮かべながら動揺している。
「わ、我らはただ、お墓が殺風景のままではリンネ殿の仲間達が寂しいのではないかと……なあ!コダマ殿!」
「あ、ああ!我輩達は騎士として当然の事をしたまでよ!なあ、ラセツ殿!」
二人共、とてつもなく挙動不審になっている。
ラセツは心なしか緑色の顔色がほんのり赤くなっている様に見えるし、兜で隠れているが、コダマの顔も恐らく真っ赤になっているに違いない。
「……よし!魔王様、私の我がままを聞いて下さってありがとうございました。仲間達ともお別れが言えてスッキリしました。この調子で私もどんどん頑張っちゃいますよ!」
リンネが吹っ切れた表情で決意を述べる。
「……そうか、それは良かったな、じゃあ皆この調子でこの先も頼むぞ」
「「「おう!」」」
「……あ!オボロさんも見張りありがとうございました!」
「……気にするな……」
木の上で辺りを警戒していたオボロも降りて来て合流し、更に先に進む事にした。
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