第30話 レベルをMAXまで上げるには
無事に地下40階のフロアボス、アサルトベアーを退治した俺達は、今はまた居住区のロビーで休憩しながら、今後について話し合っている。
「次はいよいよゴブリンキングに挑む事になる」
俺の言葉にメンバー全員に少し緊張感が走ったのがわかる。
相手はステータスが俺達より遥かに高い化け物だ、その化け物に挑むというだけで緊張を覚えるのは無理もない、俺は慎重に言葉を選びながら、今の構想を説明する。
「今の俺達はかなり強くなった。仲間も増え、連携も強化出来てきている。しかし、それでもまだゴブリン・キングに確実に勝てるかどうかはわからないと思う。それでは、少しでも勝利の確立を上げるにはどうしたら良いか?一番重要なのは、ステータス差を埋める事だと思う。そのために必要なのはレベルをカンストまで上げる事……これに尽きると思う」
以前、地下50階に偵察した時に遭遇したゴブリン・キングのステータスは今の俺達と比較してもかなり高かったため、更なるレベル上げを行う必要性が出てくる。
今の俺達のレベルは一番高い俺でレベル45で、一番低いのは最後に加入したオボロで21となっている。
「シオン、ランクCの俺達のレベルの最高値はどれくらいだ?」
「はい、ランクCの場合ですと最高レベルは70ですね」
(……カンストまでまだまだレベル上げの余地があるな)
「少し地道な作業になるかもしれないが、全員がカンストになるまでレベル上げを行おうと思うが、皆はそれで良いか?」
俺の意見に全員が肯定的な返事をしてくれる。
ひたすらレベル上げを行い全員のレベルを70まで上げる事、これが次の俺達の方針に決定した。
「レベル上げは地下41から49階でゴブリン相手に行う事にする、前回かなりの数のゴブリンを駆逐したが、もう数もそれなりに復活しているだろうからな、それで足りなかったら他のフロアでレベル上げを行いながら、ゴブリン達の再ポップを待つ。ある程度数が戻ったらまた地下41階以降でレベル上げ……これの繰り返しで行こう」
具体的な行動予定を決めた後は、出発までの時間はそれぞれの心身を休息させるための時間とし、一旦解散する事にした。
「それじゃあ、皆しっかり休んで次のレベル上げのために体を休めてくれ」
こうして、俺達はそれぞれ自分の部屋へ戻っていった。
◆◆◆◆
……その頃、とある異世界では……
『なるほどね、ヤクモ君の方はかなり順調だなぁ、一つずつ課題を克服しつつしっかりと地に足を付けて成長していってるね。このまま行けばゴブリン・キングも問題無く倒せるだろうね……』
そこまで呟いて、その存在はふと何かを思い付いた様な表情を浮かべた。
……そしてその直後、にやりと口元を歪めながら笑みを浮かべた、明らかに良からぬ事を考え付いた様だ。
『……でも、このまますんなり先に進まれたら、それはそれで面白く無いよねぇ』
とてつもなく、不穏な事を呟きながらその存在は右手を掲げ、何らかの能力を発動した。
『……よし、これでもう少しはスリルのある戦いを味わえるんじゃないだろうか、我ながら良い仕事だねぇ』
たった今、この存在が行った行動がどの様な影響を及ぼすのか判明するのはまだ少し先の話になるが……
魔王ヤクモ達にとってより困難な事象となるのは間違いは無かった。
◆◆◆◆
「〈ダークフレイム〉 !」
スキルを発動し、周囲にいるゴブリンをまとめて焼き尽くす。
「ふん! 〈鬼王剣〉!!」
「……〈雷遁の術〉……」
ラセツが〈鬼王剣〉でゴブリン達を薙ぎ払い、オボロが〈雷遁の術〉で雷を発生させ、残った敵を一掃する。
「そっち行ったぞぉ!」
「我輩に任せよ!とりゃぁ!」
俺達の勢いに圧倒されてしまい、逃げ出したゴブリン達に、待ち構えていたコダマのランスが突き刺さる。
「ギャギャギャギャギャ!!!」
追い詰められて自棄になった残りのゴブリン達が、意を決したかの様に後方のリンネの方向へと武器を振りかざしながら突っ込んでいく。
「よいしょぉぉぉ!!!」
するとリンネが杖を振り回しゴブリン達を吹き飛ばす。
「いくら後衛だからって……あなた達くらい私でも倒せますよぉ!」
肩にシオンを乗せたまま、杖をぶんぶんと振り回しゴブリン達を次々と叩きのめして行く。
ゴブリン達は、ある者は首を吹き飛ばされ、ある者は壁に叩きつけられながら光の粒子となり消えて行った。
「……あははー、リンネさんって意外とアグレッシブなんですね……」
出番が少なかった今までの鬱憤を晴らすかの様に暴れているリンネを見ながら、決して安易に怒らせない様にしようと、静かに誓いを立てるシオンの姿がそこにはあった。
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