第19話 守護魔法の主
「――しかし、一体誰が俺たちに〈守護魔法〉を掛けてくれたんだ?」
地下20階のフロアボス、キラートレント戦の最中に不意に俺達を助けてくれた謎の〈守護魔法〉は一体誰が掛けてくれたのか――シオンが何か知っているらしいが……
「へっへー、魔王様?魔王様達が必死に戦っている間に私が何をしていたと思います?」
「それは、いつも通り無様に逃げまどっているのかと……」
「言い方が悪すぎます!」
おっと、違うのか……まあいつものシオンがそんな感じだからな。
「じゃあ何をしていたんだ?」
「はい!魔王様の言う通り、資質スキル持ちの魔物をフロア中飛び回って探したんです、そして、この方を見つけました!」
シオンがどうぞーっとばかりに背後から呼び出したのは、一体のトレントだった。
トレントと言っても他のトレント達と様子が違う。
他のトレント達より二回り程小さく、何より二足歩行で歩いている、身長三メートル程度だろうか、樹木の巨人という表現がぴったりの、明らかに他のトレントとは違う進化を遂げた個体だった。
「まさか、このトレントが俺達に〈守護魔法〉を掛けてくれたのか?」
「はい!そうです!魔王様が戦っている時にフロアの隅っこで縮こまって震えていたんですが、私が説得して手助けしてもらいました!」
「……なるほど、ありがとう、助かったよ」
お礼を言うと、そのトレントは申し訳無さそうにペコリと頭を下げて話し始めた。
「コチラコソ有難ウゴザイマシタ」
「ん?何故、礼を言われるんだ?」
「アノ、キラートレントハ最近イツニモ増シテ狂暴二ナッテシマイ、手ガ付ケラレズ困ッテタンデス、魔王様ガ退治シテクレテ本当二助カリマシタ」
……どうやら、このエビルトレントも、長年退治されずに成長を続けた結果、仲間に迫害を加える程には狂暴になってしまってたらしい。
この辺りは地下50階のゴブリンキングにも通じる所はあるな。
どう見ても、このトレントが王の資質スキル持ちの魔物だとは思うが、念のため確認を行うべく、〈鑑定〉を使用する。
名称:ハード・トレント
ランク:D
HP : 302/302
MP : 188/188
攻撃力 : 102
防御力 : 220
魔法力 : 107
素早さ : 99
スキル : 守護魔法〈Lv3〉
盾王の資質
眷属化成功率 : 100%
やはり、思った通りこのトレントは王の資質スキル持ちだった。
しかも、盾王の資質とは、間違いなく〈タンク〉役にピッタリじゃないか。
このハード・トレントを仲間に出来れば更にパーティーがパワーアップする事間違い無しだ。
(狙い通り行き過ぎて少し怖くなってくるな……)
「こんなに狙い通りに行って良いものなのかな……?」
「何を言ってるんですか、魔王様! せっかく私が新しい仲間を見つけたんだからもっと喜んで下さいよ!ほらほら、もっと笑って下さいな!」
「……お前は本当に気楽で良いよな……」
「な!?ま、魔王様!?ひょっとして私の事をただの能天気な馬鹿コウモリとか思ってませんか!?」
「……え?い、いやぁ、そんな事は……ないんじゃないかぁ……あははー」
(こいつ、俺の心が読めるのか?)
じーっと訝しげにこちらを見つめているシオンはさておき……
俺は改めてハード・トレントに声を掛けた。
「なあ……俺達の仲間にならないか?」
「仲間デスカ?構イマセンヨ、アナタ達ニハ、キラートレントヲ倒シテモラッタ恩モアリマスシ」
よし、これで決まった。
このハード・トレントに魂の共有を使用する事が決定した。




