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第18話 キラートレント討伐戦

 〈大迷宮〉の地下20階、森林中央部――


 フロアボスのキラートレントはそこに待ち構えていた。

 他のトレントよりも一回り大きく、木の幹の色は黒に近いグレー色をしている。

 木の幹の中央部に険しい表情を浮かべながら、明らかにこちらに敵意を向けていた。



 「……問題は周囲のトレント達だな、まずはこいつらから排除しないと面倒だ――」



 事前にリンネから聞いていた通り、キラートレントの周囲にはトレント達が並び立っている。

 見る限り二十体近くはいるな、あの数でキラートレントをガードされたら、かなり骨が折れそうだ。


 まずは、キラートレントへ〈鑑定〉を使用する。


 名称:キラートレント

 ランク : C

 HP  : 980/980

 MP  : 420/420

 攻撃力 : 320

 防御力 : 610

 魔法力 : 310

 素早さ : 110

 スキル : 回復魔法 Lv5

       守護魔法 Lv5


 やはり想像通りかなり硬い。HPと防御力が抜きん出ているし、スキルが〈回復魔法〉に〈守護魔法〉と耐久特化に振り切っている。

 周囲のトレント達も含めると並の攻撃力では、かなり戦闘が長引きそうだ。


 「最初から全力で行くぞ……〈聖魔合一〉!」

 

 俺はリンネを仲間にした時に得たスキル〈聖魔合一〉を使用する、ステータスを全体的に上昇させるこのスキルの効果により、体中に力が漲ってくるのがわかる。


 「無理はしないで下さいね皆さん――〈オートヒール〉!」


 リンネが俺達に自動回復魔法を使用した。

 これで多少の無理を押し通しても大丈夫だろう。


 「俺が周りのトレント達を排除するから、ラセツはキラートレントを集中して狙ってくれ、リンネは俺達がダメージを受けたら即座に回復を頼む……さあ、行くぞぉ!」

 「おおう!」


 ラセツと同じタイミングでキラートレントの方向へ向かって駆け出す。

 その動きを察知してトレント達がさっきと同様に一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 無数の葉や枝の鞭等、四方八方から攻撃が向かってくる。


 「それはさっき見たなぁ、〈ダークウェーブ〉!」


 すかさず前に出た俺は〈ダークウェーブ〉で攻撃を一掃し、その隙にトレント達に切り込んで行く。

 一番手前にいたトレントに向かって素早く駆け寄り顔の辺りに斬撃を見舞った。


 「ギィィィ!」


 一撃で中央辺りを真っ二つにされたトレントが雄叫びを上げながら粒子と化していく。

 今の俺は〈聖魔合一〉を使い、攻撃力も大幅に上昇しているため、トレントと言えど一撃で葬る事が可能だ。

 そのままの勢いで、二匹目、三匹目と次々に倒して行く。


 「ラセツ、今の内にキラートレントを狙え!周りのトレントは俺一人で十分だ!」


 俺の指示を受けたラセツが、一目散に中央のキラートレント目掛けて突っ込んで行く。

 その姿を横目にしながら、周囲のトレントを次々に粒子に変えていった。

 多少ダメージを受けてもリンネが掛けてくれた〈オートヒール〉の効果で、見る見るうちに回復して行くため、ここはどんどん無理を通して攻めあるのみだ。


 「どらぁぁっ!」


 ラセツが大剣でキラートレントへ斬り掛かっていく。

 キラートレントは、何十本という枝を触手の様に扱い、ラセツを迎撃しようとする。


 「甘いわぁ!」


 しかし、ラセツの大剣による斬撃はそんな物では防げない。

 触手もろとも、キラートレントを斬り裂いた。


 「ギィィィィィィィィィ!!!!!」


 キラートレントが一際大きな悲鳴を上げる。どうやら大ダメージの様だ、この調子ならば意外と早くに討伐できるかもしれない。


 ……と思ったその時、信じられない光景を目にした。

 キラートレントが生えている地面一面が隆起したかと思うと、巨大な根が現れそのまま体を持ち上げた。


 ――キラートレントが立った!!!

 

 ……という表現が合っているかどうかわからないが、そうとしか表現仕様がない。

 そのまま、のっしのっしと後ずさりながら移動を始めた……あいつ動けるんかい。


 呆気に取られていたラセツだが、はっと気を取り直す。


 「……逃がさぬぞぉ!」


 直ぐに追撃しようとしたが、そこに他のトレント達から枝や葉の横槍が入り、上手く追撃できなかった。


 「ギギギギギギ!!!」


 キラートレントが急に淡い緑の光を放ちだした。

 ……すると、ラセツによって斬り裂かれた傷口がみるみる塞がり始めた。

 これは……〈回復魔法〉か!?


 更にキラートレントから別の青い光が放たれ出した。

 恐らくこれは、〈守護魔法〉だ。自身の防御力を上昇させているのだろう。


 「ラセツ!このままではキリが無い!先に周りのトレント達を全滅させてしまおう!ただし、妙な行動を取るトレントがいたら倒さない様に気を付けてくれ!」


 万が一資質スキル持ちのトレントが混ざっていて倒してしまったら大変だ。


 「承知した!」


 俺達が周囲のトレント達に標的を変更した瞬間、キラートレントが攻撃に転じてきた。

 キラートレントの枝という枝に赤い果実の様な物が生り始める。


 「ギギギギギィ!」


 キラートレントの奇声と共に、その果実の一つがこっちに向かって飛んで来た。

 

「〈ダークアロー〉!」


 すかさず、〈ダークアロー〉にて迎撃し、ピンポイントで着弾し撃ち抜く事に成功したが……

 

 撃ち抜かれた直後に果実は大爆発を起こしてしまった……

 

 「……嘘だろ」


 どうやらあの果実は一つ一つが爆弾の様だ。

 他のトレントには無い、キラートレント独自の必殺技という所か。

 キラートレントの枝にはまだまだ無数の果実が生っている、あれを一斉に発射されたら……


 俺の心配はどうやら的中した様だ。

 ニヤリと幹の中央の顔の様な物がほくそ笑んだ様に歪んだかと思ったその瞬間……


 「ギギギギギィ!!!!!」


 キラートレントの枝に生えていた果実全てが一斉に発射された。

 標的はもちろん、俺達だ。


 〈ダークウェーブ〉で一斉に撃ち落とすか?……しかしそれでは、そこら中で大爆発が起きてしまい、収拾が付かなくなる。

 ……下手したら俺達もただでは済まない。


 どうする!?……思考を続けるが完璧な答えを導き出せない、そうこうしている間にも果実はこっちに向かってくる……その時!


 俺とラセツを包み込む様に巨大な光の球体が出現した。

 まるで、バリアの様だ。


 「何だ、これは!?」

 「魔王様!そのバリアは味方の〈守護魔法〉です!私の言葉を信じて、果実を〈ダークウェーブ〉で迎撃して下さい!」


 その声は……シオンか!

 誰の防御魔法かはわからないが、ここはその言葉を信じるしかないか。


 「やるしかないかぁ! 〈ダークウェーブ〉!」


 シオンの言う通りに〈ダークウェーブ〉を発動し、果実全てを迎撃する。

 案の定、凄まじい規模の大爆発がそこら中で発生した、どうやら他のトレント達も巻き込まれている様だ。

 しかし、俺とラセツはバリアに守られたため、全く被害は受けなかった。


 大爆発による粉塵が晴れてきた時には、周囲には俺達以外にはキラートレントしか存在していなかった。

 他のトレント達は全員、爆発に巻き込まれ粒子化してしまった様だ。


 「ギギィ!?」


 予想外の光景にキラートレントは目に見えて狼狽えている。


 「誰の〈守護魔法〉かはわからないが有難い!このまま倒させてもらうぞ……〈鬼王剣〉!」


 ラセツが必殺のスキルを使用し、大剣に闘気を纏わせながらキラートレントへ向かっていく――

 完全に止めを刺すつもりの様だ。



 「ギィィィィィ!!!!」


 キラートレントが自らの枝を振り回しながら、必死で抵抗しようとするが――


 「させねぇよ……〈ダークバインド〉!!!」


 俺はすかさず〈ダークバインド〉を放ち、キラートレントを拘束した。


 「これは有難い……ぬうん!!!」


 ラセツは無防備となったキラートレントの元へ飛び込み、縦一文字に斬撃を加えた。

 キラートレントは一撃の下に左右に一刀両断される――


 「まだまだぁ!」


 そのままラセツは回転しながら横薙ぎにキラートレントを斬り払う。


 顔の中心部を軸に十文字に切断されたキラートレントは、断末魔を上げる間もなく粒子と化して消えていった。

 


 「……ふう、何とか無事に倒せたな」

 

 地下20階のフロアボス、キラートレント討伐の完了の瞬間だった。

作品をご覧頂きありがとうございます。


現在、第一部終了まで書き溜めてあるので、しばらくは毎日更新を続けさせて頂きます。

評価を付けて頂けると本当に嬉しいです。

ブックマークも心の底から喜びますので、どうぞよろしくお願いします!

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