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第15話 タンクを求めて

 リンネを新たな仲間として迎えた俺達は、更なる仲間を求めて相談する事にした。

 今は居住スペースのソファーに座りながら今後の動向を話し合っている。


 「ここまで〈アタッカー〉のラセツ、〈バランサー〉の俺、〈ヒーラー〉のリンネと順調に仲間を揃える事が出来た。そこで次に狙うのは〈タンク〉を担う仲間を探そうと思う」

 「主よ〈タンク〉とはどの様な役割を担うのだ?」


 ラセツが質問を投げ掛けてきた。普段からゲームをプレイしてなければパーティーの役割なんて知っているはずが無いので、至極当たり前の質問だ。


 「ああ、〈タンク〉とはパーティーの中で敵の攻撃を引き受ける盾役の事を指す。率先して仲間を守る縁の下の力持ちの様な存在だな」

 「なるほど、という事は物凄く頑丈か、体力が多い魔物から探すという事になりますね、また候補になりそうな魔物を教えましょうか?」

 「そうだな……どうしようか……」

 

 〈ヒーラー〉探索の時にシオンに候補になる魔物を教えてもらったが、正直あまり役には立たなかった。

 さすがのシオンも、どの魔物が資質スキル持ちなのかまではわからないらしい。

 ここまで来たら残りの仲間も資質スキル持ちの魔物の中から探したいが、さてどうしたもんか……


 俺が悩んでいるとリンネが口を開いた。


 「あの、魔王様、私は地下50階まで様々な魔物と戦いながら辿り着きました。その時の経験がお役に立てるかとは思うんですが……シオンさんの情報を合わせたらある程度は確度の高い情報を導き出せるかもしれません」

 「なるほど!それは一理あるな、シオンはどう思う?」

 「はいはいー、どうせ私一人の情報では何のお役にも立てませんですいませんねー」

 「いや物凄くわかりやすく拗ねとるな」

 

 先程、シオンの申し出を直ぐに受け入れず、リンネの案に直ぐに乗ってしまったので拗ねてしまったらしい。


 「いや、だからリンネの経験談と合わせる事でシオンの情報もより正確になるというか……」

 「魔王様、リンネが仲間になったからデレデレと肩入れしてるんじゃないですかー?」

 「「なっ!?」」


 俺とリンネが同時に驚きの声を上げる。


 「俺がいつリンネにデレデレしたよ?」

 「そ、そうですよ!私はただ魔王様のお役に立ちたくて!」

 「ふーんだ、別に良いですよー、私とは違ってリンネはお役に立てて良かったですねー」

 「お前は一体何を言ってるんだ?」


 ぷんぷんと怒りを隠さないシオンに戸惑っているとラセツが助け舟を出そうと口を開いた。


 「まあまあ、主よ、シオン殿はリンネ殿に嫉妬してい……っぬおおおお!?」


 見事に地雷を踏み抜きかけたラセツの耳にシオンが嚙みついた。

 ラセツが聞いたことの無い様な悲鳴を上げてジタバタしている。


 ……数分後、ラセツに八つ当たりをかまして幾分スッキリしたのか、落ち着いた様子のシオンも含めて作戦会議を再開する。ラセツは片耳を抑えて少し元気が無い様だ。


 「それでは、改めて整理すると俺達は〈タンク〉役の仲間を探す必要がある、仲間の候補に関しては、シオンの情報とリンネの経験談を総合して探していく、これで大丈夫だな?」

 「はい、じゃあ私の方から地下50階までで頑丈で体力が高そうな魔物の情報を教えますね」


 シオンの方から教えられた〈タンク〉候補の魔物の情報は以下の通りだった。


 ・ゴブリン・ガードナー ランクD  生息階 地下45~50階

 ・トレント ランクD 生息階 地下20階

 ・ロックバイソン ランクD 生息階 地下35~38階

 ・ダンジョンタートル ランクD 生息階 地下25~29階


 候補は四匹か、この中でまず候補から外れるのはもちろんゴブリン・ガードナーだ、理由は〈ヒーラー〉探しの時と全く同じでゴブリン系統はラセツと被ってしまうからだ。

 この拘りだけは、元ゲーマーとして譲れない。

 だとすると、他の三匹の方から選ぶ事になるが、リンネの意見はどうだろう。


 「リンネはこの中でどの魔物が良いか印象に残ってるか?」

 「……この中で、魔王様が言った様な役割に合うのはトレントがぴったりだと思います、地下20階のフロアボス戦で一緒に何匹か出てきましたけど、とにかく頑丈でひたすらボスを守ってきてかなり厄介でした」

 「そうか、リンネの話を聞く限りは俺が求める〈タンク〉役に完璧に適合するな、他の魔物はどうだ?」

 「……そうですね、ロックバイソンは確かに頑丈でしたけど、ひたすら突っ込んでくる猛獣って感じでしたね、とても仲間を守る役目は果たせません。ダンジョンタートルに至っては動きが遅すぎてまともに戦った記憶がありませんね」


 シオンの情報とリンネの話を聞く限りでは、〈タンク〉役に相応しい候補はトレント一択になる様だ。

 トレントとは『NHО』では主に森林地帯に出現する木の魔物で、HPと防御力に優れ、戦闘中にひたすら他の魔物を庇い続けるので、戦闘が長引いてしまう事が多く、プレイヤー達から忌み嫌われている魔物の事だ。

 確かに、性質上は〈タンク〉役にぴったりな気がする。リンネの話によるとトレントは地下20階のフロアボス戦にボスと一緒に出現するんだったな。


 「シオン、確か地下20階のフロアボスはエビル・トレントで間違いなかったか?」

 「はい、その通りです」

 「……という事は、お目当てのトレントは地下20階のエビル・トレントと同時に出現するって事か、少し骨が折れそうだな」


 フロアボスのキラートレントと戦いながら複数のトレントに〈鑑定〉を使用し、資質スキル持ちかどうかを見極め、その上で魂の共有(ソウル・シェアリング)で仲間にしなければならない、考えれば考える程、大変な作業に思えてきた。


 「まあ、まだトレントが資質スキル持ちかどうかもわからないしな、とりあえず当たって砕けるつもりで行ってみるしかないか」

 「ああ、主よ、我もその意見に賛成だ」


 やっと、耳の痛みが治まった様で、ラセツが話に参加し出した。


 「私も賛成ですよ、地下20階は攻略済みなので、アドバイスも出来ると思います」


 リンネも心強い意見を出しながら賛同してくれた。

 これで次の探索の方針は決まった。後は、進化したばかりのリンネのレベリングである。

 ランクCとは言え、さすがにレベル1でフロアボスに挑むのは危険だ。

 

 「次の行先だが、まず地下19階へ行きリンネのレベルを上げよう、そのまま地下20階へ移動して、フロアボス戦へ挑む、これで良いか?」

 「ああ、問題無い」

 「大丈夫です」


 2人の賛同が得られたので、シオンに行先を告げる。


 「シオン、という訳で地下19階へ転送してくれるか?」

 「わかりましたー、転送用魔法陣(ワープポイント)起動!」


 シオンがいつも通り起動してくれた魔法陣で、俺たちは地下19階へ転送されて行った。

リンネは地下50階でゴブリンキングにやられてしまったので、もちろんそれまでの階は全て踏破しています。

各フロアボスは倒された後に1~2年で復活するので、ソフィア一行が〈大迷宮〉に挑んだのはそれよりも前になります。


作品をご覧頂きありがとうございます。


現在、第一部終了まで書き溜めてあるので、しばらくは毎日更新を続けさせて頂きます。

評価を付けて頂けると本当に嬉しいです。

ブックマークも心の底から喜びますので、どうぞよろしくお願いします!

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