第14話 不死なる聖王
今回、二人目の仲間が登場してきます。
こうやって仲間が増えて行く所は書いていて楽しいです。
評価&ブクマありがとうございます。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
瓢箪から駒どころではない、思い掛けない所から新たな仲間候補が出現した。
「ソフィアに魂の共有を使うのか……そうか、その手があったな」
ソフィアの眷属化成功率もラセツの時と同じく100%となっている、やはり資質スキル持ちは成功率が100%になるらしい。
一つだけ懸念があるとすれば……
「だが、ソフィアは今はゴースト、言わばアンデットだ。アンデット系のモンスターに回復魔法は致命的な弱点になってしまうはず……シオン、その辺りは大丈夫なのか?」
「基本的にはダメダメですねー、まあ間違って自分自身に使わなければ大丈夫なのでは?」
やはり、その辺りのリスクは避けて通れないか。強敵と戦った際には、自分自身にも回復魔法を使用しなければならない瞬間も出てくるだろう、それがアンデットには致命的な攻撃手段となってしまう。その点だけクリアできればこれ以上の適任はいないんだがな……
少し迷いを見せていると、ソフィアが意を決した様に言葉を発し出した。
『あ、あの……!私は……このダンジョンを出て、しなければならないことがあります……!そのためには、どの様な苦難も受け入れます……!ど、どうか私を一緒に連れて行ってくれませんか……!?』
今にも泣きそうな表情で懇願してくるソフィア、これだけ感情を露わにするからには、それだけ外に未練があるんだろう。
きっとまだ浄化されていないのは、恐らくこの事が関係しているに違いない。
少し前までソフィアは人間だった。こんなダンジョンで人生の最後を迎えるのはそれは無念だったことだろう。
眷属化を行うことによって、少しでもその無念が晴らせるのであれば……
俺の心は決まった!
「よし……わかった。今日から俺たちは仲間だ。俺はソフィアに魂の共有を使おうと思う」
「私は良いと思いますよー」
「我も異論は無いぞ!」
「ソフィアも本当に良いんだな?」
『はい……ありがとうございます……』
ソフィアが決意を込めた強い眼差しと共に返事をしたのを見届けた俺はスキルを使用する。
「よし……それじゃあ行くぞ、魂の共有!」
再び頭の中に声が響いてきた。
『魔王ヤクモが魂の共有を使用しました。名称ソフィア(ゴースト)に対して眷属化を実行しますか?〈眷属化成功率100%〉』
「ああ、実行だ」
『只今より眷属化を実行します』
ラセツの時と同様に、俺とソフィアの体が眩く輝き出した。
ん?ソフィアの亡骸も同時に輝き出している。これはどういう事だ?
そうこうしている内にソフィアの霊体が引き寄せられる様に亡骸の方に移動して行く。そして、霊体と亡骸が重なると同時により一層輝きが増して、全く姿が見えなくなった。
俺の方も、ラセツの時と同様に、新たな力が内側から発現してくるのを実感していた。
『ソフィア(ゴースト)の眷属化及び進化を確認、新たな名称を設定して下さい』
「名前はもちろんソフィアだ」
『名称:ソフィアは本人の強い希望により使用できません。他の名前を設定して下さい』
(あれ?そうなのか?本人の強い希望か……何か思惑があるのかな?)
だとすれば違う名前を考えなければならない……
(うーん……どうしようか……)
しばらく考えた後、一つの名前を思い付いた。
一度死んで、亡霊となりながら新たな存在へ生まれ変わろうとしている、そんな状況にぴったりの名前を……
「よし……それなら新たな名前は〈リンネ〉だ」
『命名〈リンネ〉を確認、設定します……眷属化及び進化を終了します』
どうやら、眷属化と進化が無事に終了した様だ。
眩い光が徐々に収まって行き、そこに立っていたのはソフィア……改めリンネだった。
以前の霊体の様な半分透けている状態では無く、ちゃんと実体を伴っており、どうやら魂の共有の影響で再び霊体が体に戻ることが出来たみたいだ。
服装も少し豪華な感じになっているが、見た目少し幼さの残る年ごろの女の子という風貌である。
どの様なステータスになったのか〈鑑定〉を使ってみる。
名称:リンネ
クラス:アンデット・プリースト
ランク:C
Lv:1
HP : 201/201
MP : 344/344
攻撃力 : 87
防御力 : 122
魔法力 : 401
素早さ : 113
スキル :聖王の慈愛
魔王の加護
回復魔法〈Lv6〉
……相変わらず眷属化によるパワーアップには目を見張る物がある。
ランクも俺たちと同じCになり、ステータスも魔力に関しては初期の俺と肩を並べるレベルにまで上昇している。
スキルも以前より増えているため、それぞれ詳細を確認する。
聖王の慈愛:魔王の下で、全ての者に慈愛を捧げる者に発現するスキル。回復魔法使用時、効果を大幅に上昇させる。
魔王の庇護:魔王の庇護の下、アンデットに対する回復魔法によるダメージを無効化し生者と同様の効果を与える。
〈聖王の慈愛〉はラセツの〈剣王の覚悟〉と同系統のスキルだろう、回復量に大幅な補正が掛かるらしい、〈ヒーラー〉には最適なスキルだな。
〈魔王の庇護〉の効果も凄まじい、アンデットの最大の弱点である回復魔法によるダメージを無効にするとはな、俺の心配事が一気に解決してしまった。
「……大丈夫か?」
「…………はい、魔王様、自分の体の変化に少し驚きましたけど大丈夫です。ゴーストの状態から元の体にも戻れたみたいで良かったです」
体が戻ったとは言え、クラスはアンデット・プリーストとなっている、ということは生き返った訳では無いという事か。
「名前もソフィアじゃなくて良かったのか?」
「はい、ソフィアはお母さんが付けてくれた大切な名前です。生まれ変わってアンデットとなってしまった私には相応しくないと思います……だから今の私は〈リンネ〉です。改めてよろしくお願いします」
リンネがそう言って覚悟を決めた様に前を向く姿を見せる。
彼女は、成り行きとは言えアンデットとなってしまった。そこまでしてもやりたかった事とは一体何だろうか?
「なあ、リンネ……お前がこのダンジョンの外に出てやりたかった事って何だ?良かったら教えてくれるか?」
「魔王様、それはもう少し先まで秘密にさせて頂いても良いですか?お話する決心が付いたら必ずこちらからお話しますので……」
「ああ……わかった、迂闊に聞いたりして悪かったな」
うっかり地雷を踏みそうになった俺にシオンが追い打ちを掛けてくる。
「そうですよ!魔王様は相変わらずデリカシーが無さすぎですね!女性が2人になったのにその調子だと先が思いやられますよ!」
「女性が2人?俺にはリンネとやかましい獣しか見えないんだがな」
「もはや獣扱いですか!?」
俺達のやり取りにリンネも笑顔を見せる。
そういえば、俺のステータスはどうなっているだろうか?
前回の魂の共有使用時には俺のステータスも上昇していたが、今回はどう変化したのか、早速確認してみた。
名称:ヤクモ スメラギ
クラス : 見習い魔王
ランク : C
Lv : 24
HP : 1218/1218
MP : 1201/1201
攻撃力 : 1178
防御力 : 890
魔法力 : 1368
素早さ : 997
スキル : 魂の共有
鑑定
闇魔法〈Lv4〉
魔王剣
聖魔合一
地下50階の探索でレベルも大きく上がっている分も含めてステータスが大きく上がっている。
今回の魂の共有の影響では、魔法力が大幅に上昇している様だ。
スキルの方は〈聖魔合一〉が新たに増えている。
『NHО』でも聞いた事が無いスキルだ。詳細を確認してみる。
聖魔合一:聖王と魔王の魂が共有された時に解放されるスキル、聖王と魔王の力を一つに合わせ強大な力をその身に宿し、ステータスを上昇させる。
……どうやら〈聖魔合一〉は自分の身体に強力なバフを掛ける事が出来るスキルの様だ。
様々な場面で使用出来そうな、強力なスキルだと思う。
これまで、剣王と聖王を仲間にした事により、〈魔王剣〉と〈聖魔合一〉という2つの強力なスキルを獲得する事が出来た。
これからの仲間候補も王の資質スキルを持っている魔物から選んだ方が良いのは間違い無いだろう。
「改めてよろしくな、リンネ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
◆◆◆◆
こうして、俺たちは2人目の仲間と出会った。
その者は、仲間のために自らの命を差し出す事が出来る慈愛の心の持ち主である。
不死の存在で在りながら、魔王達をその慈愛の心で支え導いて行く。
後に不死の女王として世界中に恐れられることになる……
その名は 『不死なる聖王 リンネ』
作品をご覧頂きありがとうございます。
現在、第一部終了まで書き溜めてあるので、しばらくは毎日更新を続けさせて頂きます。
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