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第11話 哀しき出会い

評価&ブクマありがとうございます!

連載を始めたばかりですが、とても励みになります。

 前回、大幅なパワーアップを果たした俺たちは、意気揚々と〈大迷宮〉の地下50階まで転送されてきた。

 地下50階は地下45階とは打って変わって石造りの通路が並んでおり、如何にもダンジョンといった感じの風景が続いている。


 「シオン、この階の最奥にゴブリンキングがいるのか?」

 「そのはずですけどね、さすがに近くに来たらわかるはずです」

 「ああ、あれだけの巨体、近付いてくるだけで足音等ですぐにわかるはずだ」


 ラセツを仲間に加えた俺達は、今後の動きを話し合った結果、結局地下50階へ移動した。

 目的はゴブリンキングの偵察である。今のままでは絶対に勝てないというラセツの意見はごもっともだが、一度この目で実際に見ておかないと対策も立てづらいという俺の意見が採用された形だ。


 「一応、確認だがこの偵察はレベル上げも兼ねている。出てくるゴブリン達は倒してもОK、ゴブリンキングに出会った場合は戦闘はそこそこにシオンの魔法陣ですぐに退却する。この作戦で行くが大丈夫か?」

 「はい私は大丈夫ですよ」

 「我も大丈夫だ」


 さすがに、ゴブリンキングに遭遇してしまった場合にすぐに退却できる段取りは確認しておいた方が良いだろう。


 「シオンは念のためいつでも魔法陣を発動できる様に注意しておいてくれ」

 「任せといて下さい!」


 偵察の手筈を確認し、俺たちは石造りの通路を進んで行く。

 すると前からゴブリン達の気配がする。


 「数が多いな。気を抜くなよ」

 「承知した」


 ラセツは背中から大剣を抜き構えた。

 俺も腰から剣を抜きいつゴブリンが襲い掛かってきても良い様に臨戦態勢を整えた。


 「グルル……」


 通路の向こう側から聞こえてくるゴブリン達の声は一つや二つでは無い、少なくとも10体近くはいる様だ。

 俺たちは構えを解かずにジリジリと声がする方へ進んで行く。

 そして一番手前にいるゴブリンが見えたその時……


 ラセツが大剣を振り回しながら飛び込んだ!


 「ぬおおお!」


 さすがランクC、一気阿世にゴブリン達を薙ぎ払い続ける。

 一瞬で数体のゴブリンが粒子となって消え去った。


 奥の方にいたゴブリン達が襲撃に気付き、騒ぎ始める。


 「ギャギャギャギャ!」

 「ガウガウガウ!」


 煩くて叶わない、後方のゴブリン達は俺が受け持とうか。

 剣を振り上げながらゴブリン達の中央に飛び込み目につく一体を一刀両断に切り伏せる。

 そしてそのまま……


 「〈ダークウエーブ〉!」


 俺の体から闇の波動が一気に噴き出し、周囲にいた残りのゴブリン達を残らず消し飛ばした。


 「よし、初めて使ったけど上手くいったな」


 〈ダークウェーブ〉はLv3で使用可能になる〈闇魔法〉である。

 予想通り、一人で多数を相手にする場合にも非常に有効な様だ。


 また、初めてのパーティー戦も上手くいった。

 ラセツが突っ込み相手の陣形を崩した所に俺がとどめを刺しに行く。

 10体近いゴブリン達が瞬殺出来てしまった。



 「連携が決まるとさすがに凄まじいな。こうなったら先を見据えて色々な戦い方を試しながら行くぞ」

 「承知したぞ、主よ」


 さすがに、ゴブリン達の根城の最深部フロアだけあって、ゴブリン達の数が半端では無いが、それ以上にラセツとの共闘が上手く決まったため、不安は全く感じない。


 ここから、俺とラセツで様々なコンビネーションやスキルを試しながら更に数十体のゴブリンを葬り去った。

 基本的にはラセツが突っ込み、俺がサポート兼仕留め役で戦闘を行ったが、敢えて逆にするパターンや二人で遠距離攻撃のみで倒してしまうパターン等、様々なケースを想定して戦闘をこなして行った。



 気付けばかなり奥の方まで来てしまった様だ。そろそろゴブリンキングのテリトリーに入ってしまってもおかしくないな。

 ラセツとの連携が思いの外上手く決まり過ぎた事によって、想定を上回る速度でダンジョンの奥深くまで攻略してしまった様だ。


 「魔王様、ちょっと一気に進み過ぎじゃないですかね……」


 案の定、シオンも心配している。


 「ああ、そうだな。少しペースを落とそうか」


 先程の勢いから一転して慎重になり通路を進んで行くことにした。


 「……ん?今何か通路を横切らなかったか?」

 「いいえ魔王様、私には何も見えませんでしたよ」

 「我も気付かなかったが……」


 変だな、何か白い影の様な物がふっと通り過ぎた様な気がしたんだが…



 「気のせいかな?先を進もうか……」



 気を取り直して先へ進もうとしたその時、


 『……か、……けて……』


 「……今何か聞こえなかった?」

 「わ、私には何も聞こえませんよ!!!」

 「……我には聞こえたぞ」




 シオンが丸わかりの嘘をついているが、か細い女性の声が僅かにではあるが、確かに聞こえた。


 さっきの白い影と関係があるのかな?


 『だ……か、……し……ちを……けて……』


 「ほら!間違いなく声がするぞ!」

 「いーえ!認めません聞こえません!ワーワーワーワー!」

 「子供みたいな抵抗はやめような!」



 そうこうしているうちにまた声が聞こえた、先ほどよりも心なしかはっきりと聞こえる気がする。

 何か不気味だな……謎の声はこの通路の先から聞こえてくる。


 「この先から聞こえてくるな。先に進んでみるか」

 「ま、魔王様?本当に大丈夫ですか!?」


 シオンが分かりやすくビビっている。幽霊の類が苦手なタイプなのかな?人語を話す蝙蝠も似た者同士な気がするが……



 「大丈夫だ、怖いならここで留守番してても良いぞ?」

 「いえいえいえいえ!私も行きますとも!」


 ということで、3人で恐る恐る進んで行くと突き当りに何か人の様な物が倒れているのを発見した。



 ……人骨だな。服装から見るにここで力尽きた冒険者の様に見える。司祭の様な服を着て、傍らには僧侶が使う杖が落ちている。一人でここまで辿り着いたのか?


 『……たすけて』



 いきなり背後から声がしたので振り向くと、そこには白っぽく漂う女性の姿があった。微妙に向こう側が透けて見える……ということはこの女性は幽霊ということだろうか。


 「わわわわ!魔王様!出ましたよ!さっさと〈ダークアロー〉撃って下さい!!!」


 シオンが取り乱しているが、さくっと無視をして女性の幽霊を観察する。


 『NHО』には幽霊タイプのモンスターもたくさんいたので、その経験のお陰で幾分冷静には対応できている。

 しばらく観察していると、どうやらこちらに何かしてくる気配はない様だとはわかった。

 年齢は18歳くらいだろうか?その面影には少し幼さも残る様に見える。


 『あの……私達を……助けてもらえませんか……』


 その若い女性の幽霊は、どうやら助けを求めている様だった。



 「助けとは?」

 『私達は、探索のためにこのダンジョンに訪れた冒険者です、5人のパーティーで探索に挑んだのですが、この階でゴブリンキングに襲われて……』


 なるほど……ゴブリンキングと遭遇して全滅したってことか……ん?5人パーティーってことは、残りの4人は?



 『敵が強すぎて歯が立たなくて、無我夢中で他の4人を逃がしたんですが……全員大怪我を負っていたので、無事に逃げ切れたのか心配で……』



 そこまで聞いて俺は物凄く嫌な予感がした。

 隣を見るとラセツも同じことを考えているらしく、微妙な表情をしている。



 「なあ、ラセツ、この娘が言っている他の4人って……」

 「……ああ、恐らく地下45階で我らが埋葬した4人であろうな、命からがら上の階までは逃げられたが、そこで他のゴブリンに襲われたか、力尽きたか……その後で、我らが亡骸を発見したのだろう」


 「そういうことか……」


 『あの……今のお話は本当でしょうか……?だとしたら……ああ!ラティウスもポーラも……皆死んでしまったの!?』



 とてつもなく、悲壮感溢れる顔で泣き崩れる女性の幽霊の姿を見ていると何ともやるせない気持ちになった。

 自らが命を賭して逃がした仲間が、結局助からなかったとは……考えただけでも胸が張り裂けそうになるな……


 「お主の仲間は、我らが墓を作ってしっかりと埋葬した。ゴブリンや他の魔物に遺体を荒らされることもない、それがせめてもの救いとなれば良いが……救ってやれんで申し訳なかった」


 ラセツが苦渋に満ちた表情でそう伝えると、女性の幽霊は立ち上がり気丈な表情で述べた。



 『いいえ、謝って頂かなくても大丈夫です。こちらこそお礼を申し上げます。あなた方のお陰で大切な仲間達が私の様に亡霊化せずにすみましたから……』



 この女性の幽霊は、仲間達の事が心配で未練を残し亡霊となってしまったのだろうか。

 こんな年端も行かない女の子がダンジョン内でこんな無残な死に方をしてしまうなんて、何てやるせない世界なのだろう。


 「あの……良かったら名前を教えてくれないか?」

 『はい……私はソフィアと申します。ベルンハイム王国第5戦士団所属の僧侶です』



 ベルンハイム王国か!『NHО』内では、スフィア―ス内でも一、二を争う軍事国家だったな。

 確かベルンハイム王国を治めていたのは……



 『私たちは、〈剣帝〉バルバロッサ様の勅命を受けてこのダンジョンの探索に向かいました』



 やはり〈剣帝〉か……

 九大英雄の一人の名前がこんな所で出てくるとはな。


 九大英雄とは、『NINE HEROS ONLINE』のタイトルの由来にもなっている、スフィアース最強の座に君臨する九人の英雄を指す。


 ちなみに〈剣帝〉はその内の一人、スフィアース最強の剣士と言われているベルンハイムの帝王、バルバロッサの異名であり、彼が就いている〈英雄職〉のクラス名を指す。


 〈英雄職〉は世界でもたった九つしか存在しない特別な職業で、それぞれ九大英雄が就いているクラスを指している。

 

 それにしても、とんだ大物の名前が出てきたなこりゃ。


 「〈剣帝〉がこんなダンジョンに何の目的で探索を命じたんだ?」

 『それは、私にも分かりません……恐らく、王国の領土内にあり、不可侵状態であったこの〈大迷宮〉が目障りだったのではないかと、私達は推測していました……』


 なるほどな、そもそもこの〈大迷宮〉はベルンハイムの領土内にあったのか、初耳だわ。


 「それで、探索の途中にゴブリンキングに襲われてしまったということか」

 『はい……残念ではありますが、仲間達の最後も知ることが出来ました……私にはもう思い残すことはありません……』



 ソフィアと名乗る亡霊は、哀しげな表情を浮かべながらそう言った。



 「……変ですね?亡霊は自分の人生に満足感を感じると自然と浄化されてしまうはずです。ソフィアさんは自分で思い残すことは無いと言いながら、全然浄化される気配がありません。ということは、ソフィアさん……何か嘘をついていませんか?」


 ここでシオンの鋭い突っ込みが入る。さっきまで怖がってたとは思えない鋭さだ。


 「……ということは、まだ何か未練があるのか?」

 『いえ……ええと……それは……』




 ソフィアが急に狼狽えだした。明らかに動揺しているな。

 やっぱり何か未練があるのだろうかと考えていたその時……





 「グルルルルルルルルルルルルルァァァ!!!!!!」



 遠くからまるで地鳴りの様な巨大な咆哮が聞こえてきた。

作品をご覧頂きありがとうございます。


現在、第一部終了まで書き溜めてあるので、しばらくは毎日更新を続けさせて頂きます。

評価を付けて頂けると本当に嬉しいです。

ブックマークも心の底から喜びますので、どうぞよろしくお願いします!

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