第1話 とあるゲーマーの最後
連載開始させて頂きます。
どうぞよろしくお願いします。
(俺の人生もここまでか……)
とある病院のベッドの上、周囲にはたくさんの医者らしき人達が慌ただしく動き回っている。
今まさに一人の青年の命の灯が燃え尽きようとしていた。
……まあ、誰かが悲しむ訳でもないしな。
俺は天涯孤独だった。
生まれて間もなく施設の前に捨てられ、孤児として育てられた。
物心ついた頃から物分かりは良い方で、こんな境遇には有りがちな非行に走る様なこともなく、親の温もりこそ知らないものの、人並み程度には満ち足りた人生を過ごしてきたつもりだ。
そんな俺も成人し、一般的な社会人として自立した生活を送り始めて数年経った頃……
俺の身体がとある病に蝕まれていることがわかった。一般的には「不治の病」と呼ばれる様な大病だった。
最初はさすがに凹んだが、元々そこまで自分の人生に執着している訳でもなかったので、比較的早めに気持ちを切り替えることが出来た。
……でも、やっぱり一つだけ心残りがあるとすれば、
(次回のアップデートまでは生きていたかったなぁ…)
現在、俺の心に浮かんでいるのはとあるゲームの事だった。
『NINE HEROES ONLINE』
通称『NHО』と呼ばれ、数年前より、世界中で一世を風靡している大作ММОRPGである。
地球ではないどこかにある異世界〈スフィアース〉
〈9大英雄〉と呼ばれる9人の英雄が存在する剣と魔法の世界にて、世界の命運を賭けて繰り広げられている人類と魔族との聖戦が舞台の王道ファンタジーである。
プレイヤーは人類側の一員となり、力を合わせて魔族との聖戦へ参戦するというのがメインストーリーとなる。
俺はその『NHО』内ではそこそこ名の知れたプレイヤーだった。
成人後、間もないタイミングでそのゲームに出会った俺は、ものの見事にはまってしまった。
仕事の合間を見つけてはログインし、他人を遥かに上回る時間をゲームに費やし続けた。
病気が発覚した後も、体力が続く限りログインし、残り少ないであろう人生の全てをぶつけ続けたのである。
結果として、そのゲームの中では人が羨む程度には上位の地位と名声を得ることが出来た。
そんな俺の人生の一番の心残りが、予てから世間で噂されていた「大型アップデート」である。
次回の大型アップデートでは、敵側である魔族の首魁たる「魔王」が登場すると噂されていた。
今まで、メインストーリーの節々で名前のみ登場し、世界中のプレイヤーからゲームのラスボスとして登場を心待ちにされていた。
これで、長年の戦いに終止符が打てる……
俺も「魔王」の登場を心から待ち望んでいたが、どうやら「魔王」を見ることなく人生そのものが終わってしまいそうだ。
せめて、ストーリーを最後まで進めたかったなぁ、神様も本当に意地悪だぜ、全く!
もう一度、あの世界を駆け巡りたかった。
仲間と共に世界を守るため、魔王との戦いに身を投じたかった。
そして、魔王を倒しあの冒険の最後を見届けたかった。
恐らく二度と叶わないであろうそんな願いを心に浮かべていると、だんだん意識が薄れていくのを感じた。
(ああ、とうとうお迎えが来たのか。)
そんな事を考えながら不思議と心地良い感覚に身をゆだね続けていると、周囲が光に包まれていく様な感じがした。
今際の際ってこんな感じなのかな。
よく死ぬ間際に走馬灯が浮かぶなんて聞くけど、俺の頭の中に今浮かんでいるのは結局『NHО』の光景だった。
(我ながら、引くわ……。)
(でもやっぱり、魔王には会いたかったな……。)
ふわふわとした感覚に身をまかせながら、そっと目を瞑りそのまま深い眠りについた。
これが、この物語の主人公「皇 八雲」の現世での最後の姿となった。
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……その頃、とある異世界では……
『参ったなぁ……同時刻に2人分の魂とはね』
とある人智を超越した存在が、一人頭を抱えていた。
『どっちをどっちにした方が……面白いかなぁ』
その存在は現在とある事を決めかねている。
『病気で死んだ彼の方が……魔王の素質はありそうだけどね……より世界を破滅に導いてくれそうだ』
その存在はとてつもなく不穏な事を口走り始めた。
『よし……決めた!』
その存在がたった今決めた事象が、後々世界を大きく変えてしまう事になるが……
今は誰もその事を知る由が無かった。
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