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【完結】追放された聖女の明るい復讐譚「声が甲高くなる呪いをかけてやる」  作者: みねバイヤーン(石投げ令嬢ピッコマでタテヨミコミック配信中)


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21.寝させてくれ


 三人の女性がエイミーの前で嘆いている。


「うちの夫、イビキがすごくて」

「うちは歯ぎしり。ギリギリギリギリってすごい音よ」

「うちは寝返りが激しいの。私しょっちゅうベッドから押し出されて落ちるの」



 エイミーはひとり寝の経験しかないので、少しだけうらやましい。


「別の寝室で寝ればいいじゃないですか?」


「その通りです」

「それができればどんなにいいか……」


 女性たちが顔を見合わせる。



「ダメなの?」


「子どもが産まれたあとならいいけれど、ねぇ」

「そうそう。うちもまだ子どもいないから、ちょっとねぇ」

「使用人にウワサされて、あの夫婦は別室で寝てるって他家に知られると、ねぇ」


「そうですか」


 貴族ってめんどくさいなぁ、エイミーは思った。



「イビキって太ると出やすいって聞いたことあるから、痩せさせればいいのでは?」


 エイミーが提案すると、女性が考え込む。


「確かに、最近なんだか太ってきたような気がするわ、あの人」

「やっぱり」


「うちの人、噛まずにささーっと食べられるものが好きなの。仕事が忙しいから、食事に時間をかけられないって」


 エイミーは腑に落ちた。


「それですよ。よく噛まないと太りますよ。噛まないとお腹いっぱいになった気がしないから、つい食べすぎちゃうんです。平民はとにかくよく噛むの。少ない量で食べた気にするには、硬めのごはんをよく噛まなきゃ」


 エイミーは『どんなに気をつけても食事中に必ず一度喉に詰まらせる呪い』の魔法陣を出した。


「これから食事内容を、噛みごたえのあるものに変えてください。そして量は少なく。よく噛まないと危ないって思わせてください」


「ありがとう。お礼は髪の毛とお金でいいのよね?」


「うーん、髪の毛は最近余ってるぐらいだから、ひとふさだけでいいです。何か代々伝わる魔法陣とか、お守りがあったら今度見せてください。お返ししますんで」


「分かったわ。探してみるわね」



「歯ぎしりの旦那さんにはこの魔法陣がいいと思います」


『朝起きると、枕が抜け毛まみれになってる呪い』


 三人が一斉に首をかしげる。


「髪が抜けると歯ぎしりが止まるの?」


「いえ、止まりません。肩が凝ってたり、体が緊張していると歯ぎしりしやすいって聞きます。だから、旦那さんには運動してもらわないと」


「はあ」


「歯ぎしりなおしてほしいから、運動してって言っても、多分旦那さんやってくれないんじゃないかなって。だって、旦那さんは自分の歯ぎしりで困ってないでしょう?」


 女性がハッとしてエイミーを見つめる。



「本当だわ。その通りよ。わたくしが何度訴えても、そんな訳ないって聞き流されたわ」


「歯ぎしりの厄介なのはそこなんですよ。本人に自覚がないの。だから、別の分かりやすい問題を作ってあげればいいんです。抜け毛って男の人は気にするでしょう?」


「素晴らしい目のつけどころだわ。そうね、抜け毛のためって言えば、猛烈に運動すると思うわ。ありがとう、エイミーさん」


 女性は喜んでエイミーの手を握ってブンブン振る。



「寝返りが激しい旦那さんにはこれです」


『寝返りを打つと必ず寝違える』


「でも効くかどうか微妙です……」

「そうね」


「効かなかったら、もうひとつ小さなベッドを買ってはどうですか? ふたり用のベッドの横に、少し隙間あけて小さいベッド置けばいいと思います。奥さんはそっちで寝ればもう落ちないですよね」


「まあ、それとってもいい案だわ。それならなんとでも言い訳できますものね。夜中にお手洗いに度々行くから、夫を起こしたくなくて、とか言えばいいのよね。助かるわ。ありがとう、エイミーさん」


 女性たちは皆明るい笑顔を浮かべた。



◆◆◆


「むぐむぐ……グッ、うううう……ゴホッゴホッゴホッ」


「あなた、ひと口につき三十回噛んでくださいって、何度も申し上げたでしょう」

「あ、ああ、そうだった。ついクセで」


「しっかり噛まないと、死にますわよ」

「あ、ああ、そうだな。気をつける」


「あなたには元気で長生きしていただきたいですから。ね」

「あ、ああ。そうだな。お前もな」

「はい。ふふふ」


◆◆◆


「わーーーー」

「な、なんですの、なにごとですか?」


「わーーーーー」

「まあ……すごい抜け毛……」


「わああああああああ」

「あなた、抜け毛には運動がいいんですって。一緒に乗馬しましょうよ」


「する」

「はい」


◆◆◆


 ゴロンゴロン


「イテッ」


 ゴロンゴロン


「イテテッ」


 ゴロ……ガッ……


「……器用な人ねぇ。ベッドの隙間で寝てるわ……」


◆◆◆


「ティムって寝相いいの?」

「なんだい、急に?」


「さっきね、ベッドから落ちてアザできたーって子どもが言ってたから」


「ああ、なるほど。僕は寝相はいいと思うけど、分からないなあ」

「そっか」


「レナは寝相いいの?」

「えー分かんないけど。……一緒に寝て確かめてみる?」


「えっ? えっと……それは。すごく心惹かれるけど……。レナ、日を改めてきちんとプロポーズさせてくれないかい? やはり順序は守りたい」


「うん」


「レナに催促させるみたいになって、ごめんね。すごく嬉しい」


「うん。楽しみにしてるね」



呪い案をありがとうございました!


シルキーさま「どんなに気をつけても食事中に必ず一度喉に詰まらせる呪い」

和さま「朝起きると、枕が抜け毛まみれになってる呪い」

satomiさま「寝返りを打つと必ず寝違える」



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