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【完結】追放された聖女の明るい復讐譚「声が甲高くなる呪いをかけてやる」  作者: みねバイヤーン(石投げ令嬢ピッコマでタテヨミコミック配信中)


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19/23

19.追って追われて


「私の夫、近衛騎士ですごく美形なんです。ものすごくモテるんです」

「うわぁ、それは大変ですね」


 豪華な衣装に身を包んだ女性が悲嘆にくれている。派手さはないが、素朴な感じの顔だ。


「自分が女性に人気があるって分かっていて、誰にでも甘い言葉をかけるんです」

「ええー」


「毎日誰かしらを口説いていて……」

「そんなぁ」


「何かいい魔法陣ないでしょうか」

「……あのう、なぜ別れないんですか?」


 エイミーは聞いてみる。なぜそんな男と一緒に暮らすのだろう。



「夫の顔が大好きなんです。彼の顔を見るだけで幸せで。彼は貧乏な子爵、私は金だけが取り柄の男爵なんです。頼み込んでお金払って結婚してもらったの」


「まあ。……えーっと、旦那さんは奥さんのことはなんて?」


「本当に愛してるのはノーラだけだって。妻はノーラなんだから、気にしなくていいって。あれは社交辞令だからって」

「はあ……」


 夫婦ってよく分からない、そう思いながらも、エイミーは魔法陣を探す。


「やって意味があるか分からないけど、これ試してみます?」


『突然相手の名前を度忘れする』



◆◆◆



「キャッ、アレックス様、おはようございま〜す。今日も素敵です」

「やあ、おはよう。朝から……君に出会えるなんて、私は幸運だな」


「はぁ〜アレックス様。これ、受け取ってください」

「ああ、ハンカチに刺繍してくれたの? ありがとう。……かわいい人」



「あの、アレックス様。今度の夜会で踊っていただけますか?」

「もちろんだよ……妖精のような乙女と踊れるなんて、光栄だな」



◆◆◆



「……というわけで、まったく効果がありませんでした」

「ううっ、そんな恋愛達人者に、わたしみたいな素人が対応できる気がしない……」


 エイミーは机に突っ伏した。


「母の髪をもらってきました。お金ならいくらでも払います。もう一度試させてください」

「……お母さんはなんて言ってるんですか?」


 ノーラは髪の束と金貨の山を積み上げる。



「母は、結婚するときから反対していたの。あんな美しい人はノーラの手には負えないって。分不相応だって。でも、夫の実家が借金に困っていたから、ついいけると思ってしまって……」


「はあ」


「最初は無理でも、徐々に私のこと好きになってもらえたらいいなって。でも、精霊王とただのイモムシでは、釣り合うわけがなかったんだわ」


 ノーラはさめざめと泣いた。エイミーはオズオズと魔法陣を差し出す。


「これ、どうでしょうね……」


『カッコつけたい時に、強制オネエ言葉になる呪い』



◆◆◆



「組になって、手合わせ、始め!」


「行くぞ、アレックス」

「あはっ、いつでもかかって来なさいデスワ」


「おりゃー」

「キャウーン」


「いい戦いだった。アレックス、また腕を上げたな」

「うふ、毎日訓練してるから、当然ではナクッテ。ほほほ」


「キャーーーー、素敵〜アレックスさまーーーー」




◆◆◆



「……というわけで、夫の美貌が強すぎて、効き目がありませんでした」

「ううっ、完敗……。なにその魔王感。わたしみたいな、こわっぱ魔女では太刀打ちできない……」


 エイミーは壁に頭を打ちつける。マヤがそっと止めた。


「父の髪をもらってきました。お金なら惜しみません。あと一回、最後に一回だけお願いします。もう絶対にこれで終わりにします。ダメだったら……考えます」


「……お父さんはなんて言ってるんですか?」

「父は気のすむまでやれって。金ならあるって」


「うううう、これでダメならもう無理ー」

 

 エイミーは泣きながら魔法陣を見せた。



『人の頭部がカボチャに見える呪い』


 ノーラが魔法陣を見て固まった。しばらく無言で魔法陣を凝視すると目をつぶった。


 ノーラは目を開けると、静かに言う。


「エイミーさん。この呪い、私にかけてください」



◆◆◆



「ただいま、……大事な奥さま。遅くなってごめんナサイネ」

「あら、いいのよアレックス。忙しいのだもの、気にしなくていいわ。」


「どうしたのヨ、……愛しいあなた。今日は様子がいつもと違うじゃないの」

「まあ、そうですか? 私、少し疲れたのでもう寝ますわ。あ、今日から寝室は別にしましょう」

「…………」


「おはよう……太陽に輝く我が妻。よく眠れたカシラ?」

「ええ、よく眠れたわ。朝までぐっすりだったわ」


「あらやだ、私の女神は、今まで夜中に何度も起きてしまっていたじゃない」

「ひとりで寝るのが体にあってたみたいだわ。さあ、早くお仕事に行ってくださいな」


「……今日は早く帰るからネ」

「あら、気にしなくていいですわ。今日は夜会でしょう? 私は気が乗らないので、どなたか別の女性と行ってくださいな」


「私は君と行きたいんだよ、ノーラ」

「えっ、今ノーラって……呪いは……」


「愛の前には呪いなんて無意味さ。ノーラ、ノーラ、ああ我が愛しの妻。君のその虫ケラを見るような目、ゾクゾクする。さあ、私を踏みつけてくれ」

「えええっ」



◆◆◆



「……というわけで、ラブラブです」


「げえっ」


「エイミーさん、父がね、喜んで理髪店をたくさん開いたの。これから髪には困らないから、定期的にこの呪いかけてくれない? お金も髪もあるから」


「げえぇっ」




呪い案をありがとうございました!


はりんとんとんさま「突然相手の名前を度忘れする」

シルキーさま「カッコつけたい時に、強制オネエ言葉になる呪い」

シルキーさま「人の頭部がカボチャに見える呪い」

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― 新着の感想 ―
[一言] これは凄い! 展開とオチにやられました。そりゃそうなるよなー!! うまいー!!
[一言] ケチな旦那さんに、必要なのにお金ケチると髪の毛が一本(何度でも)抜けて禿げてく呪い。
[良い点] 3番目の呪いの有効(?)活用術www [一言] 〉父の髪www 多分三人目の髪が「祖母の髪」ならそこまで深く考えなかったんだ。 でも男の髪って哀愁と執着と青春が籠もってる気がして。 結果的…
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