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【完結】追放された聖女の明るい復讐譚「声が甲高くなる呪いをかけてやる」  作者: みねバイヤーン(石投げ令嬢ピッコマでタテヨミコミック配信中)


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15/23

15.元気になあれ

「エイミー、あなたはよくやってくれています。感謝します。なにか望みはあるかしら。直答を許します」


 女神に話しかけられました。


「え……」

 

「誠実な殿方を紹介してもいい」


「いえ、その、自然に出会いたいので……」


「離宮は男子禁制。自然に任せては出会えないわね」


「あ……」


 女神の目を見てしまいました。目がー目がー。



「動物を飼うことも許します」


「猫は魔法陣で爪研ぐのでちょっと……。犬も散歩が大変なので……」


「そう。なにか思いついたらマヤに言いなさい」


「は、はい」


「マヤ、例のモノを」


 マヤが一枚の魔法陣をエイミーに渡す。



「これは……」


「それを肌着の胸に当たる部分に刺繍すればいいわ。成長を促す魔法陣です」


「!!」


 女神はほんの少し口角を上げると、出て行った。



***



 エイミーを励まし隊が結成された。


「侍女長のケイトです。エイミーさんのおかげで夫婦仲がよくなりました。ありがとうございます」


「クチャクチャがましになったんですよ。ク……ぐらいでわたしと目があって、慌てて口しめるの。おかげでごはんがおいしくって」


「無事に子どもが生まれました。夫はすっかり便秘になってしまって……。ふふふ、愛人に捨てられて家でしょぼくれてます。ふふふ」


「今までは夫に遠慮があって、屋敷内の仕事を頼んでいなかったんです。でも、思い切って、あれとこれお願いしますって言ってみたんです。そしたらあっさりやってくれるようになって。いざとなったら魔法陣があるって思えると、強くなれました」




 エイミーは照れた。やっぱり褒められると嬉しいではないか。がんばってよかったな。胸も少しだけ大きくなった気がするし。



 エイミーの肌着には全て、魔法陣が刺繍されている。髪の毛ではなく、肌触りのいい極上の糸だ。侍女たちがお礼にと、こぞって刺繍してくれたのだ。



「わたし、ここに来てよかった」


 マヤが嬉しそうにエイミーの頭をなでる。


「エイミーが来てくれてよかった。私だけでなく、たくさんの女性がそう言ってる」


「えへへへ」



「今日は夫婦仲がうまくいってる女性に来てもらった」

「え、そんな人いるんだ!」


 エイミーは大声を出した。ほとんどの夫婦は問題を抱えているのかと思っていた。



「それはいるよ。うまくいってる人はわざわざ言わないからね。でもいっぱいいる」

「そっか!」


 エイミーの失われた希望が、ほんの少しよみがえった。




「私、両親を早くに亡くして、親戚の家で下働きしていたんです」

「まあ」


「街に買い出しに出かけたときに、ひったくりにあって、倒れてしまったの」

「ええっ」


「そのとき、見回りしていた騎士団に助けてもらって。それが今の夫なの」

「わー」


 女性は面はゆそうに肩をすくめる。



「私には過ぎた人で、すごく優しくて、大事にしてくれるの」

「はわー」


「屋敷でのんびりしてても怒られないし。刺繍したハンカチあげたら、毎日使ってくれるし。一緒にいるだけで幸せなの」

「ほえー」


「夫がいなかったら、私はずっと親戚の厄介者として肩身の狭い思いをしていたわ。夫と出会えてホントによかった」

「なんていい話……」


 エイミーは涙ぐんだ。砂漠に雨が降ったように、心にしみわたる。



「それでね、夫に何かできることがないかなって。刺繍とかお菓子焼いたりとかはできるんだけど。もっと何かないかなって」

「はあ」


「いい魔法陣ないかしら?」

「ええっ、だってわたしの魔法陣、嫌がらせばっかり」

「使い方次第ではないかしら。もしよければ見せていただけません?」


 女性は山と積まれた魔法陣をじっくり見て、ひとつを選んだ。



「これにします。きっと喜ぶと思うの」


 女性は髪の毛と、刺繍入り肌着と銀貨を置いて、にこやかに帰っていった。



◆◆◆


「おーい、エディ。見回りに行くぞ」

「おお、もうそんな時間か」


「それで、結婚生活はどうなんだよ」

「幸せだ」


「おうおう、堂々とノロケやがって。よかったな、いいカミさんもらえて」

「ああ、毎日家に帰るのが楽しみだ」


「カーッ、言うねー。いいよなー俺も早く結婚してえ。困ってるかわいこちゃんがいたら、俺が助けるからな」

「おう」


「なんだ、今日はやけに猫が寄ってくるな」

「…………」


「お前、ズボンの裾が毛まみれだけど大丈夫か?」

「…………」


「おい、エディ。おーい」

「あ、なんだ?」


「ボーッとしてどうした?」

「俺、猫が好きなんだ」


「へーそうなん」

「でも猫をなでるとクシャミが止まらないから触れない」

「ほーん」


「猫にスリスリされるなんて……神よ、感謝します」

「そんなにー?」




呪い案をありがとうございました!


和さま「外出すると、ズボンが猫の毛まみれになる呪い(人によってはご褒美?)」

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― 新着の感想 ―
[一言] これはいいことをした…! 人によっては猫に嫌われるってのもいますからね…!大抵声がけ大きいか動きが大雑把なのかのどちらかなんですが。 猫が寄ってきて足をすりすりしてくれるなんてなんというご褒…
[一言] こんな呪いもホッとして良いですね!
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