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【完結】追放された聖女の明るい復讐譚「声が甲高くなる呪いをかけてやる」  作者: みねバイヤーン(石投げ令嬢ピッコマでタテヨミコミック配信中)


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10/23

10.恋バナは突然に

 とんでもねえ美人がきたぞ。エイミーはおののいた。

 

 これは妖精ではなかろうか。瞬きも忘れて見つめてしまう。


 まつ毛がすんごい長いんですけどー。まつ毛に針が何本のりそうか計ってみる。二本、いや、三本はいけるんじゃね。



「…………というわけなんですの」


 妖精がエイミーを潤んだ瞳でじっと見る。


「分かります。かわいいって罪ですよね」


 妖精はキョトンとして首をかしげる。




「エイミー、落ち着きなさい。聞いていましたか?」


 マヤがため息まじりに聞く。


「いえ、聞いていませんでした! まつ毛に針が三本のりそうだなと考えていました!」


「まあっ ホホホホホホ」



 ほほう、これがコロコロと笑うってアレですね。かわいい人は笑い声までかわいいんですね。なんかいい匂いがする〜。エイミーにはもはやまともな思考力は残っていなかった。



 マヤが後ろからエイミーの肩をギュッと押さえる。


「エイミー、復唱しなさい。このお方はエイデン第二王子殿下の婚約者、ファルエル・アリントン公爵令嬢です」


「エイデン殿下の婚約者のファルエル様。まあ……」


 マヤが、よしっと肩を叩く。


「ファルエル様は、エイデン殿下を愛しておられる。しかし、エイデン殿下が聖女カーラ様と婚約するのではないかというウワサが出てきた」


「聖女カーラ様がエイデン殿下を奪おうと!? なんですと!」


(こんな愛らしい人を泣かせるようなヤツは地獄に落ちればいい)



「エイミー、心の声が全部漏れてる。落ち着きなさい」

「はっ、しまった」


 エイミーは落ち着くために、紅茶を一気飲みする。


「分かりました。エイデン殿下と聖女カーラ様に最恐の呪いをかければいいんですね。やはり下ネタ系がいいでしょうか。下の毛が全部抜けてしまうなども可能です」


「いや、違うから」


 マヤがまたエイミーの肩に手を置いた。


「アリントン公爵家に対抗する勢力が聖女カーラ様を焚きつけているのです。ロードメイン公爵が筆頭で動いております」


「なるほど」


 エイミーはよく分からなかったけど、とりあえず頷いておく。かわいい女性には全力で同意したくなるではないか。



「ロードメイン公爵家は元々、ライアン第一王子殿下の派閥です。ですが、ライアン殿下の王位継承が危うくなってきたとたん、エイデン殿下の派閥を乗っ取ろうと画策し始めました」


「ははあ」


 色んな名前が出てきて、エイミーはもうよく分からなくなっている。でも真面目な顔をして聞く。だってファルエル様に、この子バカなんじゃ、なんて思われたくないでしょー。



「聖女カーラ様は、ロードメイン公爵がどこからか見つけてこられた女性です。聖女カーラ様が、エイデン殿下と結婚されれば、ロードメイン公爵は大きな力を得ます」


「えーっと、アレですね。ロードメイン公爵と聖女カーラ様になにか呪いをかければいいってこと……?」


「正解。やるじゃないかエイミー」


 マヤに褒められてエイミーはニコニコする。ヤマカンが当たった。



 エイミーは張り切った。必死で色んな魔法陣の案を出す。既存の魔法陣は使いたくない。こんな完璧な美人の髪を切るのは、人間界への冒涜ではないか。



 今までばっさり髪を切ってきた女性が聞いたら泣きそうなことを、エイミーは考えている。



 エイミーはがむしゃらに取り組み、四つの魔法陣を最短記録で仕上げた。


 エイミーの目は血走り、マヤはやや引いている。



◆◆◆



「陛下、わたくしに発言の機会をいただけますでしょうか」

「うむ」


「アリントン公爵の案である、治水事業は資金がかかりすぎます。民の税金はもっと有効に使うべきです。長年、オーベル川にはなんの問題もなかった。なぜ、今、莫大な資金を投入しなければならないのでしょう」


「アリントン公爵、そなたの意見はどうだ」


「はい、陛下。長年、問題がなかったからこそ、今のうちに堤防整備をするべきです。こちらの資料にまとめました通り、数百年に一度の割合で大洪水が発生しております。ひとたびオーベル川が氾濫すれば、数万人単位の民が亡くなり、農耕地は使い物にならなくなるでしょう」


「なるほど、一理あるのではないか。ロードメイン公爵、どうだ」


「そんなしゅ、資料、まったくもってしゅん、信憑性がありませんな。アリントン公爵はご自分のしょ、領地に利益をよー、誘導したいだけでげす」


「……ロードメイン公爵、どうしたのだ。疲れているのか? ……なぜ鼻をほじっている。不敬であろう。ワシに対してなにか思うところがあるようだな」


「いえ、みゃみゃみゃ、滅相もごじゃいません」


「もうよい、しばらく会議には出なくてよい」


「へへへへへ、陛下ー」



◆◆◆



「エイデン殿下、一緒に庭を散歩いたしましょう」

「カーラ、何度も言ったが、私はファルエルとの婚約を解消する気はない」


「まあ、そんな。エイデン殿下はまだ世間をご存知ないですもの。騙されていらっしゃるのですわ」

「少なくとも、ファルエルはそなたの悪口を言ったことはない」


「あら、いやですわ。それが手ではございませんか。ああいう、いい子ぶった女性がよくやることですわよ。性格が汚れてますのよ」


「私は幼い頃からファルエルを知っている。ファルエルは清らかな女性だ。そなたも少しは見習え」


「はあっ?」


「ファルエルはいつも良い匂いがする。私は密かにファルエルは花の妖精ではないかと疑っている。それに引き替えそなた……口を磨け。ドブ水のような匂いがするぞ」


「なななな、なんですってー」



◆◆◆



「殿下、先ほどのこと、本気でいらっしゃいますの?」

「ファルエル、聞いていたのか。ああ、私はそなたとの婚約を解消する気はない」


「殿下……」

「泣くな、ファルエル。すまなかった、不安にさせたのだな」


「いいえ、いいえ。わたくし、殿下を信じておりました」

「エル、私の妖精。私の愛しい人」


「殿下……」

「エル、昔のように、ディーンと呼んでくれないか」


「ディーン……お慕いしております。ずっと……」

「ああ、エル、私もだ。ずっとエルだけを見ていた」



◆◆◆



「グスッ ズビズビッ ううう、ファルエルざまあ、よがっだー」

「そうだな、よくやった。エイミー」



 マヤは『重要な発言をすると必ず途中で噛んでしまう』『偉い人が話し始めると鼻の穴のきわが妙に痒くなる』『肉や野菜を食べると奥歯に挟まる』『歯磨き粉を絞ると必ず暴発する』の魔法陣を金庫にしまった。





呪い案をありがとうございました!


塩豆大福さま「偉い人が話し始めると鼻の穴のきわが妙に痒くなる」

ヤングヤクソハンさま「重要な発言をすると必ず途中で噛んでしまう」

如月冬美さま「肝心な時(大事な時)ほど噛みまくる」

黒飴味白小豆さま「肉や野菜を食べると奥歯に挟まる」

黒飴味白小豆さま「歯磨き粉を絞ると必ず暴発する」


ファルエルはエル・ファニング、エイデンはトム・ホランドのイメージです。

外見の描写まったくしてませんけど……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第二王子もしかして聖女に迫られるのでは…??とうっすら思ってたのですが、今のところ未然に防がれて良かったですね…!!
[良い点] 日常生活でふと気付くと地味な呪いに落とし込むことを考えてしまうこと。 [一言] 朝起きると、枕が抜け毛まみれになってる呪い とか 外出すると、ズボンが猫の毛まみれになる呪い(人によってはご…
[一言] 人に隠れて奥さんや子供に手を出すやつに、暴力をふるおうとすると、必ず騎士団が来る(もしくは王様が来てしまう)呪い
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