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漆黒の猫貴族  作者: オヤジ
第一章 幼少期編
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第四十八話 猫貴族、勲章を貰う


オーク騒ぎの10日後、地方の貴族たちが集まってきた頃を見計らい、王宮でSクラスの表彰の儀が行われることとなった。


ウチも辺境伯領から父さんが一人でやってきた。

今回はイレギュラーな召集であったため、母さんはついてこなかったらしい。

というか兄さん一人で残すのは不安なため領地に残ったというのが真相らしい。


父さんには僕が知っていることを全て報告した。

するとなにやら考え込み、そろそろ親父たちに帰ってきてもらった方がいいかもしれんなと言いはじめた。

父方の祖父と祖母は、僕が生まれる前に辺境伯の当主の座を父さんに譲るとすぐさま二人で放浪の旅へ出かけたというかなりぶっ飛んだ人たちらしい。

だが戦力としては王国でもかなう人がいないと言われた程の人で、領地にいてくれるだけで父さんが自由に王都と行き来が出来るようになるので、不測の事態に対応するために戻ってきてもらうらしい。





「緊張するッス」


「本当に私たちも貰っていいのかな?」


「僕たちはルドルフ君の指示に従ってただけだしね」


「そんなことありませんわ。皆の協力があったからこそあの混乱をおさめられたのですわ」


「そうだよ。あの時は珍しくジョセフも大声を張り上げて手伝ってくれてたしね」


「流石に僕もあんな時は働くよ」


「おや、ジョセフにも普段はダラダラしてる自覚があったんだね」


「フフ」

「あはは」


クリスがジョセフを揶揄うことで緊張していた皆の顔が笑顔になった。

今はSクラスの皆で制服に身を包み、王宮の控室で呼び出されるのを待っている。


コンコンコン


「皆様、玉座の間の準備が整いましたので、ご移動願います」


「いよいよ私たちの出番が来たようだ。いつも通りで大丈夫さ。何があっても私がフォローするよ」


クリスを先頭に爵位の高いティア、アンナ、ルドルフと続いていく。

そして大きな扉に辿り着き、その前で待機する。


「クリストファー殿下並びにSクラスの方々のご入場です」


扉の内側からの掛け声を基に、扉が開かれる

左右に大勢の貴族が並び、こちらを注視している


「うぅ」


後ろからなにやら小さな呻き声が聞こえたが、クリスはどんどん前へ進んでいく。

玉座の前につくと、クリスが最前列に、二列目は貴族子弟の6人、三列目は平民の三人で並び膝をついた。


「面をあげよ」


「よい。面をあげよ」


「「はっ」」


陛下の横で控える宰相の掛け声で一斉に顔を上げる。


「もう皆が知っていると思うが、此度王都近隣の森にて原因不明のオークが100匹以上が発生するという大事件が発生した。たまたまその日に野営実習をしていた学園の生徒たちがおり、あわや大惨事となるところじゃったが、ここにいる者たちの活躍により、誰一人の犠牲を出すことなく、事件を解決へ導いた。クリストファー・ビアンコ、ティア・ネーロ、アンナ・シルベストル、ルドルフ・ブローニュ、ルーク・ロッソ、ジョセフ・ブルノン、カイト・マーベル、レーナ、ケイト、アダン、以上の10名は此度の功績につき、【白竜勲章】を授ける」


玉座の間は大喝采に包まれた。

左右に並ぶ貴族の中には今回の演習に参加していた学生の親も多く、無事に帰ってくることが出来たのはSクラスの生徒のお陰だとかなり好印象を持ってくれているらしい。


「じゃがこれだけでは十分にその功に報いたとは言えぬ者もおる。まずは三人じゃ。一人目はアンナ・シルベストル。」


「はい」


「そなたは避難拠点にて傷ついた生徒たちに対し、魔力の続く限り回復魔法を掛け続けたと聞いておる。今回犠牲者が出なかったのはそなたの迅速な対応があったからこそじゃと儂は考えておる」


「ありがたき幸せにございますわ」


アンナがカーテシーで優雅に対応する


「二人目はルドルフ・ブローニュ。皆が混乱する中、落ち着いて避難拠点を立ち上げ他の生徒たちをまとめ上げた手腕は称賛に値する。多くの生徒たちがパニックを起こさずに済んだのはそなたの力あってこそじゃ」


「ありがたき幸せ」


「三人目はティア・ネーロ。我が孫であるクリストファーと共に、一人オークの群れに立ち向かっておったルークを支えるとともに、そなた自身も数多くのオークを屠ったと聞いておる」


「ありがたき幸せでございます」


ティアも流石は公爵令嬢といった感じで見事なカーテシーを決めた。


「以上の三人は、名誉準男爵の爵位を与えるものとする」


「8歳で爵位!?」

「なんと!」

「しかし功績を聞くと納得ですな」


参列していた貴族たちからは拍手と共に戸惑った声も多く聞かれ、陛下の発表に戸惑いを隠せないようだ。


「静まれ。本来ならばクリストファーも同じようにしたかったのじゃが、いかんせん王族に爵位を与えるという訳にもいかんのでのう。許せよ、クリストファー」


「いえ、わかっております」


「うむ。ではいよいよ最後の者じゃのう。ルーク・ロッソよ前に出よ」


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