第三十五話 猫貴族、講師をする
いつもありがとうございます。
これまで魔法の属性の一つを【大地属性】と表記していましたが、今話より【地属性】へと変更します。
語呂的に他の七属性が漢字一文字なのでそれに合わせこちらも一文字へ変更いたしました。
今後ともよろしくお願いしますm(__)m
「じゃあルークの前に地属性の二人頼むな!」
「「わかりました」」
クルト先生の掛け声でルドルフとレーナが一歩前に出た。
この二人は得意魔法ではなく、僕の魔法のデモンストレーションに付き合うために標的となる的を作成することになっている。
『『大いなる大地よ!我は求める、堅固な壁を!地魔壁』』
「よーし二人とも十分だ。他の奴らも確認してみろ」
「流石地魔法だね」
「堅さでは地属性が一番だね」
皆はペタペタと地魔壁を触ったり叩いたりして堅さを確認している。
「じゃあルークには噂の付与でこの壁を叩き切ってもらおうか?」
え、これ本当に切れるの?
ルドルフなんて辺境伯の長男だし、レーナも平民にも関わらずSクラスに入学出来るなんてかなり魔力強いと思うんだけど…
これで切れなかったらめちゃくちゃダサくない?
「行きます!『付与・闇』」
切れなかったら本当赤っ恥なのでいつもより少し多いめに魔力を注ぎ、用意してくれた地魔壁に向かっていく。
「ハァー!!」
スパッ!
え?スパッ?魔力を込め過ぎたのか思った以上に簡単に切れてしまった。
「うぉ!あっさり!!」
「僕の地魔壁がこんなに簡単に…」
「これが付与!」
「お披露目会の噂は聞いてたが、噂以上だなこれは!おいルーク、これから実技の授業は俺と一緒に講師役をやれ!俺に教えられることはなさそうだし、誰かに教える立場に立つ方がお前の役に立つだろう」
「「お願いします!ルーク先生!」」
これじゃ断れないじゃないか…。
ま、先生の言うことも一理あるしやってみるか。
「わかったよ。じゃあまず何を教えたらいいかな?流石に付与は難しいから無理だよ?」
「うむ。まずは詠唱破棄のコツが知りたいな。魔術師団長には魔法発動時のイメージが重要だと聞いてはいるんだがなかなか難しくてね」
「詠唱破棄か。先生やティアがどうやっているか知らないけど、僕なりの考えを言うね?もちろんイメージは大事だけど、それは二段階目に必要なことで第一段階を飛ばしちゃってるんじゃないかな?」
「ほう…イメージの他に必要な要素があるのか。俺も興味あるな」
クルト先生はイメージのみで詠唱破棄に成功したらしく、一般的には熟練度が上がれば詠唱破棄が出来るようになるという認識みたいだ。
「第一段階では魔力循環が重要だと思う」
「魔力循環?それならやってんで~」
ケイトの答えにみんなも同じようにうんうんと頷いている。
「詠唱破棄で魔法を使う時は魔法のイメージに気を取られがちで、魔力循環が疎かになるから魔法の発動に失敗してると思うんだ。だから、魔法をイメージしながらでもしっかりと魔力循環が出来ていれば魔法の発動も出来るようになると僕は思ってる」
「なるほど。言われてみればその通りかもしれませんわね。でもどの程度出来たらいいのでしょう?」
「意識せずとも身体中を魔力が循環するようになるまで、かな?」
僕は小さい頃からクロエや母さんに言われて魔力循環を徹底的に練習してきた。
だからこそ魔法の発動がスムーズだし、無詠唱だって出来る。
おそらく他の家では威力の強い魔法等が優先され、ここまで魔力循環を鍛えるという発想がなかったのだろう。
「そういうことね!ちなみにティアちゃんも同じやり方してるの?」
レーナがふとティアに質問すると皆の視線がティアに集中する。
「私の場合はルーク君に負けないように、5歳の頃に見たルーク君の魔法をイメージしながら練習を続けてると出来るようになったかな」
あまりにも健気で思わずニヤけそうになるが、おそらく精霊であるマリーの影響もあるのだろう。
精霊の存在は公にすることは出来ないが、精霊は魔法の発動を補助してくれるはずだ。
「あー婚約者がコレだと確かにそうなっちゃうかもね」
ルドルフの言葉に皆が妙に納得してしまい、質問タイムはそこで終了となった。
「じゃあ残りの時間は魔力循環の練習しよっか」
こうして僕は授業が終わるまで皆が必死に魔力循環を練習するのを眺めるのであった。




