4 二人との再会
「さて、そろそろ公平にして狩りをしましょうか」
翌朝、私は公平狩りの提案をした。今まではティティアのレベルが低すぎるため、経験値の分配をしていなかった。そのため、ティティアだけレベルがもりもり上がっている状態だったのだ。
「わたしのレベルは、28になりました」
「わたしは32ですにゃ」
「おおぅ、タルトに離されてる……私は30」
「私は変わっていないので、47ですね」
タルトはピンチのときに〈ポーション投げ〉をしていたので、ちょっとずつ経験値が入ってレベルが上がっていたようだ。私はまったくだったのに、くそう、うらやましい。
パーティ内でレベル差が±15だと、経験値が公平に分配される。そのため私たちは〈冒険者ギルド〉でパーティ登録を行い、狩りに行くことにした。
「よーし、タルトの〈ポーション投げ〉でガンガンレベルを上げるよ!」
「はいっ!」
「にゃっ!」
「頑張りましょう」
私たちがギルドでの用事――パーティ登録やぼろ布などのアイテムの買い取りを済ませて建物を出ると、目の前にケントとココアがいた。
「「シャロン!」」
「え、二人ともなんでここにいるの!?」
「久しぶりですにゃ!」
ティティアとリロイと関りスノウティアに来た私は、ケントたちとパーティを組めずにいた。大聖堂関連に巻き込みたくないということと、二人の拠点がツィレだったから、というのが大きな理由だ。
私がなぜスノウティアに!? と思っていると、ケントが笑いながら理由を教えてくれた。
「俺とココア、レベルが33になったんだ。拠点を変える……とまではいかないけど、ほかの街も見てみようって話してスノウティアに来たんだ。ここなら、運がよければシャロンとタルトに会えるかもしれないと思ってさ」
「そうだったんだ……。びっくりしたけど、二人に会えて嬉しい!」
私が素直に告げると、ケントとココアも嬉しそうに笑った。すると、くいくいと裾を引っ張られた。ティティアだ。
「ああ、そういえば紹介してなかったね。この子はティティア様。それと保護者のリロイ様。今、ちょっと事情があってパーティを一緒に組んでるんだ」
簡単に説明すると、ティティアとリロイが軽く頭を下げた。
「初めまして。ティティアです」
「リロイと申します」
「俺はケント。〈剣士〉です」
「私はココア。〈魔法使い〉です。二人でパーティを組んでるんだけど、ときどきシャロンとも一緒に組んでます」
二人の説明を聞き、私はうんうんと頷く。ほんのちょっと見なかっただけなのに、なんだか逞しくなった気がするよ。
しかもよくよく見ると、装備も新しいものになっている! この前ツィレで話をしたとき、確か二人はスノウティアに行くにはまだレベルや装備が不安だと言っていた。そこをちゃんとクリアしてから来ているところが偉すぎる。
そして私は思う。そろそろ、二次職になるため気合を入れてもいいんじゃない? ――と。
二次職になるための条件はレベル40になること。ただし、各職業にあった転職場所に行かなければならないが。
……私はツィレの大聖堂で転職できるから、楽なんだよね。
タルトは特殊職業なので、二次職はない。ティティアもユニーク職業なので、転職するまでもなく最強だ。リロイはすでに二次職なので、次に何かあるならばレベル100になった際の覚醒職への転職だろうか。
なんて私が考えていたら、リロイが私に耳打ちをしてきた。
「シャロンのご友人は〈剣士〉らしいですが、パーティを組むのにどうでしょう? この年齢でレベル33は、頑張っていると思います」
「あー……」
確かにケントとココアはとても真面目な二人だ。レベルはすごく高い訳ではないけれど、無茶もせずに堅実で、安定感がある。
「……シャロンが二人を巻き込みたくないと考えているのは、とてもよくわかります。私とて、無関係の方を巻き込みたいわけではないですから。ただ――こちらも、あまり余裕はないのです」
「…………」
リロイの言い分もよくわかる。今このときも、刻一刻と大聖堂はロドニーの支配が広がっているだろう。早く戦力を整え、ロドニーを討ちたいというリロイの気持ちはよくわかる。
……それに、リロイも口にはしないけれど……懸念事項はほかにもある。
もし私の考えている懸念事項が現実のものになった場合、ケントとココアも無関係ではなくなってしまうのだ。
「あーもー、どうしたらいいのか……」
がしがし頭をかくと、「シャロン!」とケントに名前を呼ばれた。その横では、ココアも私のことを見ている。
「? どうしたの、二人とも」
「何か困ってるんじゃないか? 一時的とはいえ、俺たちはパーティを組んだ仲間だ。困ってるなら、力を貸すぞ!」
「そうだよ、シャロン。私たちだって冒険者なんだから、ちょっとやそっと、いや、どんな無茶な冒険だってどんとこいだよ!」
なんて嬉しいことを言ってくれるのか、この二人は!
「……でも、めちゃくちゃ危険な目にあわせちゃうかもしれないよ?」
「おう。どんとこいだ」
「……そのかわり、めちゃくちゃレベル上げしちゃうよ?」
「おう。どんと――えぇっ!? いや、〈オーク〉狩りを提案してくるのがシャロンだ。どんな狩りを言われたって、もう驚かねえよ」
ケントは鼻の下を擦って、「へへっ」と笑う。それにつられたのか、ココアもクスクス笑いながら「驚かないよ」と言っている。
あ~~もう、二人とも本当にたくましくなったよ!!
「なら……一緒にパーティを組もう。って、その前にティティア様とタルトの意見も聞かないとだね」
先ほどの様子からして、リロイは問題ないだろう。私がティティアとタルトを見ると、目をキラキラさせている。
「また一緒にパーティを組めて嬉しいですにゃ! よろしくですにゃ!」
「まだまだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします」
「俺たちだって、まだまだなんだ。でも、見た感じ俺たちがいればパーティバランスはよくなりそうだな!」
「一緒に頑張りましょう!」
四人はあっという間に意気投合したようで、嬉しそうに話をしている。うんうん、仲が良いのはよきことだね。パーティのチームワークも上がって、大変よきでしょう。
「いろいろ説明もしたいけど、まずはパーティ登録だね」
「おう」
まずはリロイを除く全員でパーティ登録をして、レベル上げをする。リロイと余裕を持って公平を組めるようになったら、晴れて六人パーティとなる。
「んじゃ、せっかく前衛もいることだし――〈深き渓谷〉に行ってみようか」
私が提案すると、全員が口を閉ざした。タルトとティティアは仲良く首を傾げていて大変可愛い。リロイは頬が引きつっている。そしてケントとココアは顔を真っ青にして、悲鳴のような声をあげた。
「「絶対無理!!」」
ついさっき驚かないって言ったばっかりなのに、もう~!
コミカライズの3話が更新されましたので、ぜひ漫画も楽しんでください!
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書籍の購入報告や感想ありがとうございます!嬉しいです…!
書籍版は地図が載っているのですが、シャロンが行ったところしか埋まっていないので、もっと地図を埋めたいなという野望があります。(笑)
エレンツィは全部地図を作っていて、他の国もまあまあ作ってあるので……。使いたい……!
リロイに関しての感想があったので少し。
「……もちろん、悪意を持って提案したのであれば話は別ですが」と言ったのは、むしろシャロンたちを信頼してるからこそ口にできた言葉です。
疑っている相手には、そんなこと言いません。そうだった場合、何も言わずに仲間のふりをして見限って始末します。(たぶん)
ちなみにリロイはティティアを守らなければいけないので、人を疑わないティティアの代わりに、人を疑うことも仕事の一つです。