1 スキルの確認をしよう
ドゴオオオォォンと、爆発音が周囲に響く。かなり大きい音だけれど、私はすっかり慣れてしまった。すぐそこでは、爆風で〈オーク〉が打ち上げられ、光の粒子になって消える。残るのはドロップアイテムだけだ。
ここは〈木漏れ日の森〉。
〈オーク〉〈スネイクル〉〈スパイル〉が生息している、平和な割に結構精神的にきつい森だ。蛇と蜘蛛っていうだけで、嫌う人は多そうだからね……。
といいつつも、私たちはかなり順調に狩りを進めている。
「倒しました!」
「〈オークのぼろ布〉ゲットですにゃ!」
私の横ではしゃぐ幼女二人――タルトとティティアは、もうすっかり狩りになれてしまったようだ。〈火炎瓶〉狩りに一番慣れていなかったリロイも、余裕の表情で壁をこなすようになった。なんでも、ティティアのためなら爆風の中ですら立っていられるらしい。
「そろそろ夕方ですし、今日は戻りましょうか」
「そうですね」
リロイの提案に頷いて、私たちは拠点にしている〈雪の街スノウティア〉へ戻った。
食事と温泉を終えた私たちは自由時間だ。とはいっても、大聖堂が敵に回っているリロイとティティアは宿から出ることはほとんどない。何か必要なものは狩りの帰りに買っているし、よほどのときは私かタルトがお使いに出ている。
私たち四人は、大部屋だ。リロイが男性なので別の方が……という話はしたのだけれど、上記の理由から一緒のままにしている。とりあえず今のところは平和そのものなので、問題はない。
全員が部屋の中でくつろぐ中、私は机に向かって今後のことを考えていた。
……リロイはいいとして、ティティアのスキルはどんな感じなんだろう?
リロイの職業は〈ヒーラー〉なので、私もゲームではプレイしていた二次職だ。基本的にスキルは把握しているし、リロイの戦闘の様子を見る限り、なんとなくの取得スキルはわかっているつもりだ。
問題はティティア。〈教皇〉はユニーク職業なので、この世界でもたった一人しかなることができないのだ。もちろん、ゲームのときもそうだった。そのため、わたしは〈教皇〉のスキルがさっぱりわからないのだ。
……スキルについて聞いてもいいかな? でも、さすがに踏み込みすぎかな?
パーティを組んでいる仲間だということを考えれば聞いても問題はないが、いかんせん現時点では臨時でパーティを組んでいる、という感じだ。お互い、どこまで自分の手の内をさらすのか判断が難しい。
「そんなに唸ってどうしたんですか」
「……ハッ!」
どうやら私は声に出して唸っていたらしい。後ろを向くと、苦笑したリロイが立っていた。
「いえ、なんと言いますか……」
「はい?」
「リロイ様とティティア様のスキルはどんな感じなんだろうかと、知りたかったんですよ……」
「ああ、そういえばお互いにスキル構成の話はしていませんでしたね」
リロイがなるほどと頷いた。すると、自分のスキルを口にし始めた。
「私のスキルは、〈鉄槌〉に――」
「ちょちょ、ちょっと待って下さい! 私に教えてしまっていいんですか?」
「構いません。私はシャロンを信頼していますから」
私の疑問に、リロイが間髪入れずに返事をしてきた。確かに依頼を受けたり助けたりといろいろしたけれど、そんなに信頼されていたとは……。
「わたしのスキルもお教えします。知っていた方が戦闘で有利になるかもしれなかったのに……気づかずすみません」
「ティティア様まで……。ありがとうございます、二人とも」
〈教皇〉のスキルなんて、ゲーム時代なら情報だけでめちゃくちゃお金になりそうだというのに……! あ、もちろん売ったりはしませんよ。
私は自分のスキルも教えることにして、二人のスキルを聞いた。
まずはリロイ。
職業は二次職の〈ヒーラー〉で、レベルは47。
〈祝福の光〉
〈身体強化〉レベル10
〈リジェネレーション〉レベル5
〈ヒール〉レベル10
〈鉄槌〉レベル5
〈女神の守護〉レベル5
〈聖属性強化〉レベル5
〈天上の宴〉レベル2
ということなんだけど、さすが自動取得の世界だね――!! とは思いつつも、そんなに悪くないスキル構成に感心してしまう。
〈身体強化〉と〈ヒール〉があればとりあえず最低限の支援はできるし、〈女神の守護〉で守りながら〈鉄槌〉で攻撃することもできる。悪く言えば中途半端ではあるけれど、ティティアの側近として側にいるなら、これくらいいろいろできてもいいのかもしれない。もちろん、修正の余地はあるが。
次はティティア。
職業はユニーク職の〈教皇〉で、レベルは〈オーク〉を倒し続けた結果28まで上がった。
〈魂の祈り〉
〈女神の聖域〉レベル5
〈神の寵愛〉レベル5
〈慈愛〉レベル10
〈最後の審判〉
〈奇跡の祈り〉レベル2
なるほどなるほど、私がわからないスキルばっかりだね。なので、ティティアにスキルの説明をお願いした。
結果、さすがはユニーク職業だという言葉しか出てこない。
〈魂の祈り〉は、〈教皇の御心〉を作る職業の固有スキル。
〈女神の聖域〉は周囲を浄化して結界を張るスキル。
〈神の寵愛〉は自身のステータスを上げるパッシブスキル。
〈慈愛〉はティティアの周囲の人たちを敵味方関係なく回復するスキル。
〈最後の審判〉確率50%で即死させ、50%で全回復させるスキル。
〈奇跡の祈り〉ランダムで神の奇跡が起きるスキル。
これはなかなかに検証が必要そうなスキルだね……! 特にやばいのは、〈最後の審判〉だよね。50%で即死って、やばい。モンスターとのレベル差とか関係あるかわからないけど、がんがん使って経験値の美味しいモンスターを倒していきたいところ。
……使用マナはどれくらいかな?
まあ、ポーションを用意すればマナなんて気にしなくていいんだけどね。
「ティティア様、〈最後の審判〉使って狩りしましょう!」
「――! そ、そうですよね。少し怖いスキルだと思っていたのですが、強くなるためには使わなければいけませんよね」
「あ……っ」
……私の心が汚れ切っていたよ……。
そうだよね、そんな恐ろしいスキルは使いたくないよね。私はティティアの言葉に反省したけれど、でも〈火炎瓶〉投げてるね? と、我に返った。
やっと更新できました~!
そして明日、書籍2巻が発売です。タルトとティティアがとっても可愛いので、ぜひにやにやしていただければと思います!
加筆修正、書き下ろしなどありますので、書籍版をどうぞよろしくお願いいたします~~!(3巻出したいぞ~~!)
特典などもあるので、のちほど活動報告を書いておきます!
『回復職の悪役令嬢』
エピソード2 錬金術師のプレイヤー的育成方法
レーベル:MFブックス(KADOKAWA)
イラスト:緋原ヨウ先生
★地図
★職業一覧
プロローグ(タルト視点)
ケットシーの島に到着!
マナ喰い
初めての〈製薬〉
可愛い弟子
二人で旅立ち
タルトの〈冒険の腕輪〉
パーティ結成
〈オーク〉討伐依頼
〈防護マスク〉を手に入れたい
僕の青年
至福の温泉宿
進み始めた〈聖女〉クエスト
エピローグ(ティティア視点)
番外編/大聖堂でのできごと(リロイ視点)
番外編/娘からの手紙(アンジェラ・ココリアラ視点)